10 日常
これまでのあらすじ。俺は高校2年生の幕開け前日に告白宣言をしては、失敗。生徒会に入るための生徒会演説でも、美崎に論破され失敗。そして、とうとう文化祭では、目標であった一番にさせることに成功した。見ての通り大変な生活だ。今日こそは休めると思ったのだが……
「もー翔希!朝から屋久さんを泣かせては抱きつかれたとか、ずるいよ」
「本当ですよ。弱みに付け込む男性は最悪ですよ」
泣かせたことに怒られてるよな?とにかくこれは誤解なのだが、誰も信じてはくれない。
「いや、あれはですね。事情がありましてー決して、弱みに付け込んで、彼女にしてやろうとか考えていませんから」
「ほんとかな?じゃあ明日、私達とデートしてくれたらいいよ」
「は⁉」
「いい案ですね雫。そうしましょう」
彼女達の考えは分からない。こんな美女とデートとは俺からしたらご褒美でしかなく、メリットでしかない。それに彼女達は俺を好きでもない。姉ちゃんになんかを言われたからって、ここまで変わるとは思えない。
「それじゃ、午前10時に集合ね」
「はいよ」
こうして俺のご褒美タイムの始まり。
次の日。俺は盛大に遅刻をかます。
まずい、やらかした。これは地獄行きだ……目的地に近づくにつれて、ただたらぬ殺気を感じる。こんなにも、遅刻をして怖い思いをしたことがない。
「すいま……」
その後の言葉をいうことができなかった。パンパンに腫れた頬に涙が止まらない。
「ありえなさすぎでしょ!このクズ男」
「ほんとそうです。初めてのデートで遅刻するなんて人間じゃありません」
何も言い返せない。遅刻をした俺が100悪いので、ただ心に傷を受けながら聞くことしかできない。遅刻の悪さをこんなにも体と心で実感するなんて。
「ほら、私達怒っているよ!なんて言うの?」
「ごめんなさい。もうしません」
「それでいいです。次はないですからね」
なんとか一区切りついたのだが、もうデートする気力もない。
情けないのは自分がよくわかっている。
それでも初めてのデートは緊張と準備で疲れるのだ。
「ご飯にしませんか?」
「そうですね。少し疲れましたから行くとしましょう」
ついた先は、高級レストランだった。俺はついつい自分の財布とメニュー表を何度も見返してしまう。こいつらがお嬢様でもあったことを忘れてたーー。
「あの、僕お金ないんですけど」
「知ってるよ、お姉さんからお金ないのは聞いてるから。だからここは私達の奢り」
申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
いつも女性に支えられている自分を殴りたい。
今からは俺がエスコートしよ!
「なんかやる気の目に変わったね君」
「楽しませてくれるのかな?」
「やってやるよ!でも今は腹ごしらいだ」
たらふく食べまくる。
雫達も引いた目で見ていたのだがお構いなしに。
お会計の時は、金額を見たくないがために、トイレに行く。
「君、ダメダメ彼氏の典型的な例するね」
「いやーありがとうございます。」
よし。これでダメダメ感出したぞ!(たまたまだけど……)
今から再び、最大の逆転劇見せてやる。
意気込みだけは褒めてやりたかった。
俺はあらゆる場所に連れて行ったのだが、ことごとく行ったことある場所で楽しませることができなかった。
そして気づいた時には、夜だった。
終わった。
俺の顔はもう妖怪状態。(ほんとにダメダメ彼氏だ)
よくこれで彼女欲しいとか言えたな。もう彼女欲しいとか言うのやめよ。
「今日はすいません」
とりあえず最後までついてきてくれた二人に感謝を伝える。
「ホントだよ!君みたいな男、マンガにしかいないと思ってた」
ぐうの音もでない。やっぱり、所詮痛いモブキャラか。
後で姉ちゃんに慰めてもらお。
「私くしは楽しかったですよ。あなたの頑張りは伝わりましたし、3人で遊べたので」
「美崎ずるい!それ私が言おうとしてたのに、これじゃただ嫌な奴になるじゃん」
楽しんでくれてたのかと思うと、ほっとした気持ちと本当かと疑いたくもなる。なんにせよ俺が、顔色伺ったときは、笑顔以前に表情筋すら動いてなかったぞ。
「君!さっきのことはホントのことだけど、楽しかった。昔、君のお姉さんに遊びに連れて来てもらった時もこんな感じで懐かしい気持ちになれた!ありがとう」
「こちらこそ、その優しさに救われました。ありがとうございます竹浦姉妹様!」
だいぶ精神的に追い詰められていたがさっきの言葉で救われた。
今日は散々なデートにしてしまったことを家で反省しよ。
そして次は最高のおもてなしをしよう、そう心の中で宣言した。




