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 【1】ゴブリンの長い名前

≈≈≈


 (しゃべ)る生き物(ども)の中で最も弱い生き物すなわち人間たちが、後に『クッコロ洞窟』と呼ぶようになる大きな深い穴の中に『洞窟のゴブリン』たちの集落が存在した。


 彼らはその小さな体躯(たいく)故に、あるいは小さな肉体にそぐわぬ大いなる勇気の持ち主であるが故に、往々(おうおう)にしてその人生は太く短い。事実ほとんどのゴブリンたちは天寿(てんじゅ)を全うすることなく死んでしまう。


 その死亡原因は様々である。

 病気や災害以外でも、別の氏族同士での喧嘩(ケンカ)や、イノシシで移動中の交通事故や、彼らの食料調達方法であり独自の文化でもある『たまご泥棒』の最中にヒクイドリの(くちばし)に目を突かれて死んでしまうという者も多い。


 ここに、一人のゴブリンの勇者がいる。


 自他ともに認める『たまご泥棒名人』を名乗る猛者(もさ)である。生まれてこの方180ヶ月、洞窟の外での『たまご泥棒遠征』でヒクイドリのたまごを奪えなかったことなど一度もないし、また遠征で手傷(てきず)を負ったことさえない。


 生来の身軽さ、ゴブリンとしては珍しい細長い手足を利用した速く走る技術、そして紐付き分銅(ボーラ)や焼け石などの道具を使う知恵。その全てが彼をして仲間のゴブリンたちから『たまご泥棒名人』と呼ばれる由縁(ゆえん)となっている。

 この呼び名は、エルフに例えるならば『導師』、ドワーフに例えるならば『マイスター』、オークに例えるならば『戦士長』、人間に例えるならば『英雄』に等しい呼ばれ方であると考えて良い。


 そのゴブリンは、親からは【寒い時期の3回目の赤い満月の晩に生まれた息子】と呼ばれている。彼の他の兄弟たちも同様に長い呼ばれ方をする。

 なぜこんなにも長い名前が必要になるのかは、ゴブリンたちにしかわかるまい。


 (しゃべ)る生き物(ども)の中で最も弱い生き物すなわち人間たちは、個人に与えられた『長い名前』というものをあまり好まないフシがある。それはまるで『相手の長い名前を呼ぶことで自らの寿命をその分(けず)られるような』、一種病的な彼らの妄想(もうそう)()すところであろう。


 ……ともあれ、種族的な文化の違いに寛容(かんよう)な彼ら【ゴブリン】は、その長過ぎる名前を呼ぶのが(わずら)わしいが故に、時に彼らの『友人』から別の名をもらうことがある。


 【寒い時期の3回目の赤い満月の晩に生まれた息子】、長じてよりは『たまご泥棒名人』を名乗るゴブリンもまた、彼の『友人』からもらった大切な名前がある。


 その名前は……。




To Be Continued.⇒【2】

≈≈≈

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