僕なりに。君なりに。2
辛いなら
※
「おばあちゃん?」
「なぁに?りょうちゃん」
おばあちゃんを呼ぶといつも笑顔でそう答えてくれた。
「癌って治るの?」
「私の場合はね、早く見つけてれば治ったかも知れないけれど、今はもう治すのは難しいかしら」
「え!?死なないでおばあちゃん!」
死の告白を笑顔で言うおばあちゃんは、癌のことを怖がってはいなそうだった。
けれど、悲しい感情な僕は俯いて泣いていた。
それなのに、おばあちゃんは笑って頭を優しく撫でてくれた。
「良は、何がそんなに悲しい?聞かせて欲しいわね」
「会えなくなっちゃう。話せなくなっちゃうもん」
「そーだね。じゃあ今のうちに話したいことぜんぶ話してくれるかい?」
「え?ぜんぶ…?」
その日から、小学校の終わった放課後も、小学校が休みの日も、会える日は毎日おばあちゃんに会いに行って、学校での出来事や、おばあちゃんから聞きたいことを、教えたり聞いたりした。
そうしている日々。
そんな毎日が続くにつれて、僕の悲しさがだんだん薄れていくのを心の底で感じていた。
なのに、そんなある日。
薄れていっていたそんな感情が、突然現れたんだ。
学校終わり、いつもみたいに病室の前まで来ると、おばあちゃんの病室の中が騒がしくなっている。
中をを覗くために、扉を開けようとすると、看護師さんに「ここから先はまだ入っちゃダメだよ」と声をかけられる。
そう言われ、不思議に思いながらも許可が出るまで病室の前の椅子に座って待つことにした。
それから30分が経つ頃だ。
「良!ずっとここにいたの?」
「あ、お母さん」
頭から汗を流して仕事のスーツの姿で病院にやってきた母は何やら凄く顔が青ざめていた。
「お婆ちゃんと会えるまで待ってたくて、あ!今日学校でテスト返しがあって算数100点なんだよ!お婆ちゃんに見せてあげるんだ!」
そういうと、母は何も言わずに涙を目にたまらせていた。
「お母さん?」
ずっと黙ったまま頭を撫でてくれる、あまり気持ちのいいものではなかった。
ガラガラ。
お婆ちゃんのいる病室が開き、僕と母は同時に看護師さんを見た。
「松坂さんいらっしゃいますか?」
そう呼ばれて、母は僕より一足先に病室に入って行ってしまう。
そして看護師さんにまたも病室に入るのを止められた。
「ずるい!僕の方が早く待ってたのに!」
理不尽に僕の我儘が暴れた。
看護師さんの身をかわして病室に駆け込んだ。
「お婆ちゃん!テスト100点だよ!」
※
「あの時見た光景、空気の冷たさ重たさ。
あれがきっと本当のお別れで、自分自身の後悔なのだろうと思う」
「…」
「だから、僕は君と関わりたくないよ」
「え!自分勝手すぎでしょ!」
「いや、どこが?僕の話聞いてた?トラウマなんだって」
「知らないよそんなこと!」
「どっちが自分勝手だよ!」
いつのまにか、僕のベットで寝そべっている君。
「私、友達になれないなら呪うからね」
「うわっ、やめてくれよ」
「じゃあ、友達になって!関わって!」
そう言われても。
関わりたくない、けれど君は。
余計な事を考えたが、その考えをやめて君と関わるメリットを考えた。
けれど、メリットなんて何もなかった。
デメリットしかない、なのに僕は。
学ばない人間だな。
「わかった。どちらにしろ断れるなんて思ってないし」
もう関わってるじゃないか、どうしようもできないじゃないか。
「なんか言い方は酷いけど。ありがとう!正式に、よろしくね!」
嬉しそうに足をバタバタさせている君と、僕を睨みつけている竹田さん。
この病室はなんだか明るい。
よろしくお願いします




