僕なりと君なり。
人は人なり人を演じているだけ。
「はい、じゃあ麻酔しますね」
「うっ…」
「力入れると痛いですよ」
「わかり…ました」
「はい、次に髄液取ります。1・2・3」
「うおぉぉお!…」
「はい、終わりました、お疲れ様です」
「ありがとうございます」
「あと30分ぐらいは俯いた姿勢のままでお願いしますね」
「わかりました。」
これで全ての診察が終わった。
あとは結果を待つだけ。
病室で行われた拷問に耐えて、俯せの状態のまま力を抜く。
凄く怖かったし、痛かった。
背中にあんなに太い針を刺すなんて、もう二度としたくない。
そう思えば、もう一度全身から力が抜けている。
ガラッ。
「あははは!うっ!…うおっおお!…」
「なんだよ、バカにしにきたのか?君もやられてみろよ」
「面白すぎるよ松坂くん」
はしゃぎながら僕の病室に入ってきた新島さんは、瀕死の僕を見て心配なんてしていない様子だ。
「新島さんは良いよね、楽そうで」
「いやいや、私も大変だから!お互い様でしょ」
「そんなに元気なら大丈夫でしょ」
この人は今さっき友達になったばかりの人だ、ほぼ強制だったけど。
ていうか、関わりたくない。これはちゃんと言わないと。しかしこの人は、僕の気も知らないでよくもそんなにはしゃげるものだ。
心の中で文句を言う。
「ねぇ、まだ自己紹介とかあんまりしてないからしよーよ」
「この状態でさせる?」
「面白いからそれで良いよ」
本当に、僕と立場が逆になれば良いのに。
そんな事を思った。けれどこの後、新島さんから告げられた告白に僕は後悔する。
「じゃあ、僕からするよ」
「わかった、どうぞ!」
ニヤニヤしながら待っている姿は小学生ぐらいの子にしか見えない。
「んーと、高校2年の松坂良、好きな事は家でゴロゴロする事で嫌いな事は騒がしい事、あとはー、えっとー」
何を言えば良いんだろう。
自己紹介なんて、まともに経験してこなかった。好きな食べ物なんてベタな事は言えないし。
「なんでも良いよ?」
また僕の気も知らない新島さんは急かしてくる。
「病名は突発性減少性紫斑病、難病指定だよ」
「え、何それ。名前長くない?よく覚えたね」
いや、そんなのはどうでも良いだろ。もっと違う心配とかなかったのか。また一つ君に文句を思う。
「はい、私ね!」
「どーぞ」
別に興味もないけれど、一応聞いておくことにしよう。そうしないと竹田さんに怒られそうだ。一瞬だけ竹田さんの方を見ると、竹田さんは僕を睨みつけている。
すぐに目を逸らして新島さんの話を聞くことに集中する。
「私は新島花香、年は16歳で、多分高校一年ぐらいかな?それと好きな事は友達と話すこととか、楽しいことすることかな?遊べないときは本読んでることが多いね」
「なんか色々ツッコミどころあるけど良い?」
話を途中で挟むと、新島さんは少し不機嫌そうに頬を膨らませた。
「まだ喋ってるから!」
仕方なく、黙る。
「それで私の病名はね…」
「花ちゃん!」
横から竹田さんが病室に響く声で呼んだ。
新島さんは振り返り、竹田さんに笑顔を見せていた。
この時の一瞬、僕は嫌な予感に気持ち悪くなった。そんな間も無くに、新島さんが口にした言葉に対して、僕はどう接したら良いかわからなくなった。
「私の病名は白血病です」
「えっ、はっけつ?びょう?」
「え?知らないの?」
「え、っと。その」
病名を知らないわけない。
簡単に言えば血液の癌だ。死ぬ可能性が高い病気だ。本当に、なんて答えれば良いのかわからない。僕の頭は今まで以上に混乱していた。
「か、関わりたくないよ君とは」
「なんでぇっ!?」
そしめ、僕からの突然な裏切りに新島さんも混乱していた。
よろしくお願いします!




