平川綾乃の迷い。
大した決断じゃない・・・・・・。違う違う。もしかしたら、私の人生、変わっちゃうかもしれない。
どうしたの私。なんでこんなに迷ってるの?
ベットの上に寝転がり、意味なくスマホの画面をじっと見る。我が気持ち楽にならず。
こういう時は、真島きららに相談するのがベストかもしれない。
恋バナの相談と言えばきららにと言われているほど女子から信頼の厚い。
話しやすいキャラなのかもしれないけれど、口の堅さと、確かな言葉使いと、あの大きな瞳でじっと見つめられると、つい心を許しちゃうのかも。
それに、誰もがかわいいと認めているのに、浮ついた話は全く聞いたことが無いから、安心して恋バナできるのかもって思う。
「やっぱり、相談にのってもらうか。」
きららのプロフィール画面が、意外にも映画「ミッション・インポッシブル」なのはウケるけど、今はそこじゃない。
「いまなにしてる?」と、入力して、しばらく待つ。1分もたたずに返信が来る。
(ねころんでたw)
(www 実は相談ある)
(綾乃のお願いなら、断れないな)
(ありがとう。圭介先輩のことなんだけど)
(まだ片思いなの)
(まあねぇw)
(で、何が知りたいの)
(圭介先輩の、彼女がいる件)
(ww 相変わらず)
(笑い事じゃないよぉ。(涙) )
(ごめん。いないのは確かだよ)
(ホント(笑) )
(確かな情報だ。なんだ、告白するの)
(う~ん)
(wwwそんなんじゃ、一生片思い)
(それがね、川島君から告白されて悩み中)
(川島君って、川島健吾君!? )
(どう思う? )
そう返信すると、しばらく返信が来なくなった。きらら、考えてくれてるのかな。
携帯を手放して白い天井を見つめる。何か嫌な予感がする。
ピロッ。
着信音が鳴る。携帯を掴んで画面を開く。
(川島君、いい人だよ。私、好きなんだ)
思わず口元を抑える。意外だった。男子からも人気のあるきららが、目だたない地味な川島君の事が好きだなんて。しかも、一番相談してはいけない相手だっただなんて。
悩みが増えただけじゃないか。
私のばか。
ここは、慎重に返事をしなければいけない。川島君の事は濁しておこう。
(圭介先輩に告白してみるよ)
(じゃぁ、川島君のことはどうするの)
うっ。これはヤバい。追跡されている。こんな時どうすればいいの。そうだ。大胆に逃げるしかない。
(わからない)
(わからないってどういうこと)
(わからないからわからない)
(だから、どうするの)
追跡者は、私をターゲットスコープに捉えた。もう、絶体絶命。頭の中では、「ミッション・インポッシブル」のテーマ曲がグルグル回ってる。
そうだ!ひらめいた。もうこれしかない。
(圭介先輩に告白する。きららは川島君に告白する。そうしよう)
ギャンブルだとは思うけど、この場はこれで切り抜けられるかも。ドキドキしながら送信してみる。
すぐに既読が付いたけれど、返事は返ってこない。
きららもビビってる。この一撃は手ごたえありだ。
(わかった。私も決めた。お互いに告白して、結果を報告し合おうよ)
きららの文章は私の逃げ道を完全に消し去ってしまっていた。
そして、どちらにしても、誰かが傷付く事を前提にしか前に進めなくなった。
そういえば、女の友情はサランラップより薄いと誰かが言ってたっけ。
心が痛むけど、誤魔化した所でどうにもならない。
とうぜん、きららもそれをわかっているはず。
最後のジャンプだ。思い切って跳び込め。と、自分を押す。
(わかった。どんな結果になっても恨みっこなしだよ)
(もちろん)
(ありがとう。心強いよ)
(私もだよ)
私達は、励ましのスタンプを送りあった。これでいい。決戦は明日だ。
強く決意した私は、ベッドから勢いよく起き上がってお風呂場へ直行した。