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第63話 「ワケがわからないけど、勝てるんならそれでいいよ!」

『我が名は天使カマエル──フェンリルよ、一騎打ちで決着をつけようぞ! この()に及んでよもや逃げようとはすまいな』


 その天使の声に、誓矢(せいや)は一瞬怯んでしまう。

 そもそも誓矢のフェンリルの力は銃──遠距離攻撃を主体とするものだ。接近戦での一騎打ちなんてしたこともない。

 ただ、ここで退いたら、せっかく高まった全軍の士気が下がってしまう──やはり、それは避けたい。


「やっぱり行くしかないか──」


 そう呟いて仲間のみんなへと振り返ろうとする誓矢だったが、その肩を光塚(みつづか)が軽くつかんだ。


「ここは俺が行く」

「はぁ!?」


 さすがに見過ごせないと、誓矢が珍しく光塚に反論しようとする。

 それを森宮(もりみや)の冷静な指摘が後押しした。


「天使カマエル──確か、天使の階級の中では下の方だけど、それでも下級天使や大天使を率いる指揮官クラスよ。神様たちに匹敵する力があってもおかしくない存在だわ」

「だよね、だったら、やっぱり僕がいかないと!」


 (かたくな)なに光塚を振り払って前に進もうとする誓矢だったが、光塚はその肩を離そうとはしなかった。


「冷静になれ。俺たちはここに来たばかりで、この場所がどういう世界なのか、それに相手の強さもわからない状態なんだ。そこで、もし、オマエを真っ先に失ったりでもしたら、それこそ完全に詰んでしまう」


 だから、最初は俺が行く──と、光塚が笑う。

 そして、他のメンバーもそれを止めようとはしなかった。


「俺がまず一騎打ちに応じて時間を稼ぐ。その間に、氷狩(ひかり)たちは少しでも有利に戦闘できるように動いてくれ。俺のことは気にするな──()()()()()、この戦いに勝つことだけを考えるんだぞ」


 言外に自分を犠牲にして勝ちを取りに行けという思いを伝えて、光塚はひとりカマエルの元へと向かっていった。


「ちょっと、まだいいって言ってな──」


 そう言って光塚を追いかけようとする誓矢を厳原(いずはら)絹柳(きぬやな)が後ろから引き留める。

 カマエルの声が、全員の脳内に響いた。


『フェンリルは()()ついたのか。まさか、下等な一兵卒(へいそつ)ごとき虫けらを差し出してくるとは。我も(あなど)られたものだ』


 長剣(ちょうけん)を引き抜いて、正面に立つ光塚へと構えてみせる。


『我らが慈悲をもって一撃で滅してやろう。わざわざ神の御遣(みつか)いたる我が相手をしてやるのだ、感謝するがよい』


 そのカマエルにたいし、無言で光のバットを振りかぶる光塚。

 一瞬の空白。

 そして、同時に動く二人。


 ──キィィンッ!!


 音高く飛んだのはカマエルの神剣(しんけん)だった。


『「「え──!?」」』


 カマエルと誓矢たちの戸惑いの声が重なる。

 そして、光塚は容赦なく、渾身の力を込めてバットをカマエルの脇腹へと叩きつける。


『──ふがあぁっ!?』


 身体をくの字に折り曲げる格好で、激しい勢いで吹き飛ぶカマエル。

 そして、地面へと叩きつけられた瞬間、カマエルの身体は大量の光の粒子となって宙に掻き消えた。


『あかん……天使様、消滅してもうた……』

『ゴクリ──なあ、これって、もしかして誓矢の仲間たちも神クラスの力ゲットしてるんじゃね?』


 誓矢の脳内でスズネとヤクモが、予想外の事態が起きたとばかりにひそひそ話をしている。


『言われてみれば、異能者の方々もたくさんの眷属(けんぞく)──怪物を倒してきたっちゅうことや』

『怪物を倒せばその力を吸収することができる──そういえば、そうだったよな』

『ということは、異能者の面々も神様クラスの力を得ていてもおかしくないんちゃう?』

『それもそうだけど、もともと神の力をゲットしていて、それでいて数え切れない程の怪物を倒してきたセイヤはどうなってるんだ?』


 その内容を周りの仲間たちに告げる誓矢。

 すると、一斉に異能者たちは色めき立った。

 スズネとヤクモのひそひそ話には根拠がない。

 だが、今の光塚とカマエルの一騎打ちの顛末をみると、自分たちの力が神々に匹敵していると信じても良いような気がする。

 その場にいた全員が、周りのみんなに対し頷き、誓矢に決断を迫る。

 それを受けた誓矢も思考を切り替えた。


「こうなったら、全員突撃! 光塚君と合流して、そのまま全力で敵にぶつかる!!」

「「「おおーーっっ!!」」


 誓矢の掛け声とともに、異能者(いのうしゃ)たちは一斉に突撃を開始した。


「いっけぇぇぇーーーーっ!!」


 両手に構えた銃から青銀色(せいぎんいろ)の無数の光が放たれ、神々の軍へと降り注ぐ。

 指揮官クラスも含めた神々の兵士たちが、一気にまとめて消滅していく。

 その陣形が崩れたところへ、力押しで突っ込んでいく異能者たち。


「うおおーーーっっ!」


 異能者たちの攻撃の前に、無敵のはずの神々の軍が脆く崩れていく。

 そして、そんな神々に放たれる誓矢の第二射。


「「「──!?」」」


 声を立てるまもなく、フェンリルの光を受けて消滅していく神々。

 上空からみると、異能者たちの軍団を、神界(しんかい)天界(てんかい)魔界(まかい)三軍(さんぐん)が完全に包囲している状況になっている。

 だが、戦況自体は圧倒的に誓矢たち異能者側が押していた。


「うおおおっ、神様とか言ってもたいしたことないじゃねーか!」

「ええ、これなら勝てる!」

「というか、神様ってこんなに弱い存在だったのか!?」

「というか、どっちかというと、私たちが強くなりすぎてたのかも!」

「なら、容赦はいらないわね。だって、今まで神様たちに好き放題やられてたんだから!」


 光塚、絹柳、厳原、森宮、風澄が異能者たちを率いて突撃を繰り返す。

 それに合わせて誓矢が全方向からの攻撃を降らせて援護する。


「ああ、もう! ワケがわからないけど、勝てるんならそれでいいよ、もう!」

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