第59話 「そろそろ反撃に出たいと。というか、そう思うよね」
「それでは、続いてもう一つの目的──北海道奪還作戦について説明します」
プロジェクタによって映し出された資料を引継ぎ、厳原が今後の作戦行動について説明をはじめる。
「北海道奪還作戦は極めて重要です。各地で孤立した人々を急ぎ救出するという目的の他、我らフェンリル防衛隊の存在を国内に──いえ、全世界に認めさせる実績としても必須条件になります」
厳原の説明に頷く異能者たち。ただ「独立しました、支援を寄こせ!」と叫ぶだけでは、暴力で金品を要求するごろつきと思われかねない。そうならないためにも、しっかりとした実績作りが必要である、と。
そのような話のあと、会場内の全員の同意のもと、厳原は次の段階へと説明を移行する。
「そして、北海道奪還作戦については、もう一つの目的もあります──それはゲート奪取です」
ゲート奪取──その言葉に会場内がざわめいた。
厳原の視線を受けて光海教授が立ち上がった。
「すでに、ここにいる全員には周知の事実だと思うが、怪物たちはゲートと呼ばれるポイントから出現している。今まではホットスポット──寺社、教会、自然公園などのパワースポットからの出現がメインだったが、先日の北海道怪物侵攻以来、その傾向が変わった」
光海教授が説明するには、シベリア南岸部から北海道へ怪物をワープさせたゲート出現と同時に、北海道中央、大雪山系中央部にも巨大なゲートらしき反応が見られたという」
「このゲートがあらわれると同時に、世界各国のゲート活動が弱まったことも確認されている。おそらく、神々はここで一番の目の上のたんこぶであるフェンリル殿を殺してしまうつもりなのだろう」
そう言いながら、誓矢の肩に手を置く光海教授。
会場の異能者たちは静まりかえった。
神々たちも怖れる強力な力──フェンリルを宿した異能者、氷狩 誓矢の存在に恐怖めいた迫力を感じたのである。
だが、そんな空気は一切気にしない光海教授が説明を続けた。
「で、我々は考えた。今まで一方的に殴られるだけだったが、そろそろ反撃に出たいと。というか、そう思うよね」
その光海教授の言い草に、さすがに苦笑めいた表情を浮かべる異能者たち。
そんな彼らを煽るように教授は言葉を続けていった。
「というわけで、異能者の君たちにはゲートを奪取してもらいます。あ、ゲートといっても大雪山系に出現したほうね。シベリア南岸から北海道北岸に出現したゲートは単なる人間界内部を繋ぐトンネルにしかすぎないから、ここ重要ね」
ここで、再び厳原が説明を引き継ぐ。
「話の展開が急すぎて恐縮だけど、目的はこれでいきたいと思ってます」
まずは、北海道奪還──部隊を三つに分けてそれぞれ道央と道東、道北へ進軍させる。
道央の主力を率いるのは厳原と絹柳、一番多くの異能者で部隊を構成し、着実に怪物の戦線を押し返していく。
道東方面部隊は光塚と風澄が指揮を執る。北海道の南側から東部へと進出し、その後は北上する。
そして、道北方面へ向かうのは誓矢とユーリ、森宮の部隊だ。北海道北岸のゲートから出現した、怪物たちを蹴散らしつつ、北海道最北端の稚内方面まで進んだ後、今度はオホーツク海沿岸部を南下するという、一番長い距離を移動することになる。そのため、スピードと破壊力が必要になるため、誓矢がこの部隊に割り当てられたのだ。
「この作戦、勢いが必要なんだ」
最後にマイクを渡された誓矢が立ち上がった。
「僕たちがゲートを狙っていることを神々に気づかれる前に、ゲートへと辿り着いて奪取する」
今までは神々のなすがまま、一方的にやられてきたけど、それをこの作戦で終わりにしたい、と。
そこまで言って、誓矢はすぅっといったん深呼吸する。
そして、会場に集まった全員に向けて、しっかりとした口調で告げた。
「そして、今度はこちらから神々の世界へと攻め込み、この戦いを終わらせる。そのためにもみんなの力を貸してほしい!」
「「「おおおーーーっ」」」
会場内に歓声がとどろき渡った。
○
「セイヤはん、カッコよかったでおますなー」
「ホント、なんか、このオレでもググッときたキターって、カンジ」
作戦会議終了後、誓矢とユーリ、二人きりになったところへマスコットサイズの狐神スズネとヤクモが姿を現した。
誓矢が苦笑しつつ、狐神二人に確認する。
「本当に僕たちもゲート使えるんだよね」
「もちろん、問題ありません。異能者たちは謂わば下級の神々を宿した存在やさかい。普通に問題なく三界へ移動できます」
「しっかし、神々の世界へ逆に攻め込むとか、面白いこと考え出すじゃねーか」
ユーリが皮肉っぽい表情でヤクモの頬を指で突く。
「ていうか、オマエらも一応神様の端くれだろ? オレたちに協力してもいいのか?」
「まぁ、うちらにも考えるところがあるっちゅうことです」
「そうだなー なんか、上級神の考えること、いつもわからないこともあるけど、今回はなおさらなカンジがする──っていうか、縁を結んでしまったからなー、腐れ縁も縁には変わりないし、オレたちもオマエたちに最後までつきあうよ」
そう言って、ぐっと親指を立ててみせるスズネとヤクモ。
誓矢とユーリは、それぞれ拳をコツンとあわせてみせた。
「あらためて、よろしくね。二人とも」




