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第20話 「こんな状況、早く終わらせないと──」

 青楓学院(せいふうがくいん)を追放された誓矢(せいや)たちは、学院を頼ったものの拒否されてしまい、結果として同じように追放された形となった避難民たちを守りつつ、最寄りの避難所へと向かっていた。

 避難民たちは疲労困憊(ひろうこんぱい)といった様子で、移動にかかる時間も無視できない。

 一番懸念されるのは怪物たちの襲撃である。


「本当は我々が警護すべきなのだが──」


 青楓学院に派遣されていた自衛隊の士官(しかん)の悔しそうな表情を、誓矢たちは思い返していた。

 自衛隊員たちは青楓学院の生徒たち──ガーディアンズに守られている学校を少しの間留守にしたとしても、避難民たちを護衛しようと動き出そうとしてくれていたのだ。

 だが、それを霧郷(きりさと)は許さなかった。

 ふがいない自分たち自衛隊を責めるような口調で誓矢たちに詫びる士官だった。


「本当にすまない。こうなった以上、君たちを頼りにするしかない。避難先の部隊から救援を寄こすように手配した。できるだけ早く合流できるように計らってくれているので、なんとかそこまで乗り切ってくれ」

「わかりました、ありがとうございます。僕たちにできる範囲で全力を尽くします」


 そう言って笑ってみせる誓矢。

 その後ろで、ユーリが面白くなさそうにふてくされているのを、沙樹(さき)にたしなめられていた。


「なにか言いたそうだよね、ユーリ」


 避難民たちとともに、学院の南にある避難所に設定されている大型商業施設をめざして人気のない国道を進む途中、誓矢がユーリの背中を小突いた。


「いやさ、セイヤの力があれば自衛隊の護衛なんて、ぶっちゃけ要らないだろ」


 ユーリは誓矢が怪物に対して無敵ともいえる攻撃能力を持っているのに、自衛隊に際して低姿勢で交渉していたことを気にしていたのだ。

 そのことに気づいた誓矢は、ぷっと笑いを漏らしてしまう。


「確かにあの力は強力だけど、僕一人だけだと守り切れないことも出てくると思う。そのためにも協力してくれるという人は大事にしたいんだ」

「そうだぞ! オレたちにも感謝しやがれよ!」


 誓矢、ユーリ、沙樹三人の頭の中に少年の声が響き渡る。

 狐神(きつねがみ)ヤクモ──相方のスズネとともに誓矢たちについてくることになったのだ。今は、姿を隠しつつ、周囲の気配に気を配ってくれている。

 ユーリが憎まれ口を叩いた。


「お、レーダーがなんか言ってる」

「おいコラ、尊い存在の神様を捕まえて道具扱いかコラ、あいかわらず身の程を知らないヤツだな」


 「まあまあ」となだめようとする誓矢に続いて、沙樹が首をかしげながら狐神たちに問いかける。


「二人とも商店街の神社を離れちゃっても大丈夫なの?」

「そこんとこは大丈夫や」


 そう反応したのはスズネだった。


「確かに神社は(えにし)を結ぶ拠点として重要なんやけど、今は、誓矢はんたち三人に縁を結んでるさかい」

「っていうことは、今は僕たちが御神体(ごしんたい)ってこと?」

「せやな、いまや誓矢はんたちは動く神社って言っても間違いやおまへん」

「……動く神社」


 誓矢が苦笑すると、つられて、ユーリと沙樹も笑ってしまう。

 ヤクモの怒鳴り声が響く。


「そこ、笑うとこじゃねー!」

「ゴメンゴメン、本当にありがとう、心強いよ」


 その誓矢の言葉は本心から出た言葉だった。

 突如現れた怪物たちの襲撃という、人知を超えた大災害の中、同じく人知を超えた神だというヤクモとスズネの存在は暗闇に輝く星の光のひとつだった。


 その後、誓矢たち一行は、国道沿いにある大型スーパーで一夜を明かすことにした。

 正面入口にカギはかかっておらず、電気がついていない店内は、商品の数は激減しているものの荒らされているという雰囲気ではなかった。

 今回の怪物たちの襲来災害により避難する際、特に食料品や衣料品を扱う店は、あえて店員だけを退避させ、貴重品以外の商品は残していったのだ。


「本当にお人好しばっかだよね、この国の人たちは」


 そうため息をついてみせるユーリだが、避難民の代表から預かった財布から現金を取り出して、レジに置かれた箱へ放り入れる。

 箱の中には、すでにけっこうな額のお金が貯まっているようだった。


「もらった商品の正確な金額はわからないけど、このくらいかなってことで」

「値札とか全部確認して計算してたら時間かかっちゃうんで、許してください」


 そう言い残して、ふたりは買い物カゴに入れた缶詰などの食料品を持って、広めのエントランスで休んでいる避難民たちのもとへと向かった。

 この、怪物襲撃災害にあった人たちを救うための善意から始まった流れであったが、こういった商店の開放は全国で行われているという。それに対して金銭を支払う行為も同じように広がっているということだ。もちろん、長く続けば店に置きっぱなしのお金を狙う人もでてきて、実際に、奪われたりしているところもあるらしいけど、それでも、こういった人々の営みに接するとホッとする──そう、誓矢は思う。


「こんな状況、早く終わらせないと──」


 自分には他人よりも大きな力があるらしい。でも、その力の使い方──いや、使い途がわからない。

 誓矢のもどかしい思いは日に日に強まっていく一方だった。


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