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第16話 「って、今さら言っても手遅れだぜ──っ!」

 誓矢(せいや)たちは避難民団に合流するために自衛隊から提供された装甲車(そうこうしゃ)で現場へと向かった。

 その車中で短く打ち合わせを行い、今回は絹柳(きぬやな)をリーダーとして行動することに決める。


「作戦と言っても、とにかく向こうと合流して、あとは警護しながら青楓に向かうだけだけどね」


 そう言って笑う絹柳に、誓矢を含む他の五人がそれぞれ了解の意を示す。

 続けて護衛隊形の打ち合わせに話が及ぼうとしたときだった。

 操縦席の自衛隊員が不安げに声をかけてくる。


青楓学院(せいふうがくいん)指揮所から通信が……対象の避難民団からの連絡が途絶えたとのことです。至急現場へ急行せよとのことですが、どうしますか?」


 問いかけに顔を見合わせる六人。

 絹柳が息を吐き出した。


「現場へ急行するようにとの指示がある以上、向かうしかないわ。ただ、何が起きているかわからないから……みんな準備だけはしておいて」


 そう言うと絹柳は操縦士に予定通り合流地点へと向かうように依頼する。

 続けて、厳原(いずはら)が冷静な口調で補足した。


「周囲の警戒も強めてください。何が起きているかわからない状況です、油断はできない」


 操縦席から緊張しきった声が帰ってくる。

 そして、装甲車は小一時間ほど進んで、合流地点へと辿り着いた。

 そこは高速道路のサービスエリアで、避難民を乗せてきたと思われるバスや、物資を載せたトラックが多数止まっていた──


「ああっ、怪物たちがっ!!」


 高速道路の本線からサービスエリアの駐車場に入った。そのタイミングで操縦士が悲痛な声を上げる。

 装甲車が急停車する。

 光塚(みつづか)が素早く後方の扉を開けて車外へと飛び出すと、厳原も後に続き、絹柳、風澄(ふずみ)森宮(もりみや)、そして誓矢の順に地面へと降り立った。

 絹柳が指示を出す。


「風澄さん、森宮さんは装甲車の上へ──遠距離支援をお願い」

「任せて!」

「わかりました!」


 続けて光塚と厳原には怪物たちへの突撃を指示する。


「二人は直接攻撃で怪物たちをとにかく倒しまくって、私が援護するわ──あと、氷狩(ひかり)くん」

「あ、はいっ!」


 誓矢は反射的に背筋を伸ばしてしまう。


「氷狩くんは装甲車と風澄さんたちを守って! 二人が支援攻撃に集中できるように、頼んだわよ!」


 そう言い残して、絹柳は武器を構えて突っ込む光塚と厳原のあとへと続いた。

 その姿を見送りつつ、誓矢は両手に拳銃──グレイプニルを出現させ、周囲に注意を向ける。

 装甲車の上では、弓を構えた風澄が次々と光の矢を放ち、隣ではどこから調達したのか、ファンタジー風の両手杖を構えた森宮が先端の部分から直線的な光線を撃ち出し、二人の攻撃で次々と怪物が消滅していく。

 さらには駐車場にに駆け込んだ光塚、厳原、絹柳の三人──手から生み出される投げナイフで怪物たちを怯ませる絹柳を挟んで、棒を縦横無尽に振るう光塚と、刀で容赦なく切り刻んでいく厳原。

 さすがはエース級のガーディアンと言われるだけのことはある。そんな彼らが連携を組んだのだ、まさに快進撃といったところか。

 誓矢は手を出すタイミングを見つけられずに、銃を構えたまま戦闘の推移を見守るだけ──。


「おいっ、ボーッとすんな! 周りを眷属(けんぞく)に囲まれてっぞ!」

「警告が遅れてしもた、堪忍(かんにん)や!」


 突然、頭の中にヤクモとスズネの声が響き渡り、誓矢は思わず声を上げてしまった。


「眷属……怪物たちに囲まれてるって!?」


 その声を聞きとがめた森宮が急いで周囲を見渡す。


「周りに怪物たちが……っ!?」

「あっちからも来てる、しかもたくさんっ!」


 森宮に続いて風澄も周囲の森の中でうごめく大量の怪物の姿を見つけて悲鳴に近い声を上げた。


「このままじゃ危ない、絹柳さんっ! いったんこっちへ戻って──って、ちょっと!?」


 それは突然のことだった。

 装甲車が急速後退したのだ。


「「きゃあああああっ!」」

「って、うああああっ!」


 車上に立っていた風澄と森宮がバランスを崩して落ちてくるのを、身を挺して庇う誓矢。


「イタタタタ……」

「氷狩君、大丈夫?」

「って、ちょっと待ちなさいよアンタたち──っ!?」


 下敷きになった誓矢を助け起こしつつ、装甲車へ声を荒げる二人だったが、その視線の先で、飛び出してきた大量の怪物たちが車へと襲いかかる。

 パニックに陥ってしまい、車体に怪物たちをしがみつかせたまま走り去る装甲車だったが、操作を誤ったのか路肩の柵を突き破って斜面を転がり落ちていく。


「これはちょっとシャレにならないな」


 厳原が二体の怪物を切り払いつつ、誓矢たちを庇うように戻ってきた。

 後に続いて、光塚と絹柳もじりじりと後退してくる。


「どうやら、避難民のみんなは全滅したらしいな」


 怪物の一匹を吹き飛ばした棒で駐車場の方を指し示す光塚。その先に止まっているバスやトラック、さらにはサービスエリアの施設の中から、次々と怪物があふれ出してくる。

 絹柳がナイフを次々と投げながら、さすがに冷静さを欠いた口調で呟く。


「くっ……せめて、包囲される前に気づくことができれば」

「って、今さら言っても手遅れだぜ──っ!」


 また飛びかかってきた怪物たちをまとめてなぎ払う光塚。

 だが、怪物たちの包囲網はジワリジワリと狭まりつつあり、対峙する光塚たちは死──怪物化が頭をよぎった。

 厳原が覚悟を決めた様子で他の生徒たちに声をかける。


「俺たちが道を切り開く、光塚、いいな!?」

「おう、そうこなくっちゃな──氷狩、絹柳たちを任せたぞ」

「え、ちょっと、それって──!?」


 困惑する誓矢の声を女子生徒たちの抗議の声がかき消す。


「ちょっと──あんたたち、なにカッコつけようとしてんのよ!?」

「そうよ、退却するなら皆でいっしょに……きゃぁっ!?」


 女子生徒たちの遠距離攻撃を掻い潜った怪物たちが襲いかかろうと飛びかかってくる。

 間一髪で厳原の刀が怪物の腕を切り飛ばした。

 その光景を目の当たりにした誓矢は、決断を迫られ、そして意を決した。


「……みんな、少しだけ──時間を稼いで」


 そう言って目を閉じる誓矢。

 集中を研ぎ澄まして、あたりの怪物たちの気配を探っていく。

 確かにこのサービスエリアには、対応不能な数の怪物が集まっている。


「でも、僕の力なら──」

「氷狩君、なにをするつもり──!?」


 そして、次の瞬間、誓矢の両手の銃から無数の光条が放たれた。


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