1-1-5 お店の日常5
「ただいま。」
お店に戻ったのは、正午を告げる教会の鐘が鳴る頃だった。
ルルは忙しそうにお昼の用意をこなしていた。
ダイダとレイヤは楽しそうに会話を続けていた。
「お嬢、お帰り。」
「アズリーちゃん、お帰り。」
「お待たせしてすみません。さっそくですが、ダイダさん、今のうちに打ち合わせしましょうか。」
鞄を自室に片付けてきたアズリーはダイダに声をかけた。
「おう、いいぜ。」
レイヤとの談笑を切り上げ、テーブルの上を片付ける。
アズリーはダイダと向き合う形に椅子をずらし、テーブルの開いたスペースに地図を広げた。
レイヤはスススッとテーブルから離れ、ルルの手伝うため、キッチンに向かった。
アズリーは手に入れた情報をもとに、帝国軍と魔導国軍を模した駒を地図上に配置していく。
ダイダは真剣な眼差しで地図をのぞき、開示された情報を整理する。
だが、並べられた駒の量に鋭く目を細めた。
「お嬢、これは本当か?」
「はい、布陣に関しては私の推測ですが、両軍の規模は恐らくこの通りになると思います。」
ダイダは思わず天井を見上げる。
そして素早く頭を整理し、使える人員の数を計算する。
終わるとアズリーに提案をした。
「これだとお嬢たちが大変だが去年より多く貸そうか?」
毎年王国中央をアズリーたちが、南部をダイダの部下が遺品の回収に奔走していた。
そしてアズリーたちは人手が足りない分、ダイダから数名助っ人を派遣してもらっていた。
「よろしいのですか?なら今年は八人ほどお願いしてもいいでしょうか?」
「わかった。南部は今年も俺が仕切って大丈夫か?」
「はい、問題ありません。回収した遺品も去年と同様、このお店に届けてください。報酬もしっかり用意しておきますね。」
「了解した。」
「後確認しておくべきことは…。」
ルルの料理が運ばれてくるまで、二人は細かな部分の調整を続けた。
次第にキッチンから漂ってくる料理の匂いが濃くなってきた。
「昼食できたわ。」
キッチンから出てきたレイヤの手にはルルが作った料理があった。
アズリーとダイダはテーブルの上に広がっていた地図や駒を片付けた。
きれいになった机の上にレイヤは手際よく料理を運んでくる。
最後にルルがデザートを用意し、全ての料理が並べられた。
色彩豊かな料理でどの料理もいい匂いが三人の食欲を刺激した。
四人は楽しく談笑しながら、食事をとった。
食事が終わり、皿を片付け終わるとアズリーはすぐにレイヤの相談を聞いた。
始めは彼女が運営する事業のことから始まり、商品の相談から部下の育成など、様々なことを相談された。
アズリーはこれまで学んだ知識の海から相談された内容の知識の水をすくい、分かりやすく伝える。
時には家にある小さな書庫から本を取り出し、レイヤに見せながら答える。
レイヤは時にメモを取り、疑問や理解できなかったことはしっかりと訊ね、自身が思ったことは隠さず話した。
ダイダも帰宅せず、部屋の隅で二人の会話に耳を傾けていた。
そうして、午後の時間が過ぎていった。
今週はこれ一話のみです。
来週はもう少し投稿できるように努力します。