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Scavenger Princess ~すべてを失った王女の死体漁り生活~  作者: 神無月てん
第1章 お店≪マイオソティス≫
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1-1-3 お店の日常3

1週遅れました…

 アズリーはお店をでると、初夏の乾いた日差しに目を細めた。

 今の気温は過ごしやすいが、暑くなりそうだと感じる日差しだった。

 アズリーは酒場のある北通りに向かって歩き始めた。

 お店の前の通りは人影が少なかった。

 時々すれ違うのは主婦や老人、子供が多かった。

 しかし酒場のある北通りに近づくと、途端に人通りは多くなった。

 行商人、傭兵、旅人など、様々な人々が行き交い、幾台の馬車が通り過ぎる。

 北通りに出て町の中心に向かってしばらく歩くと、目的の場所が右手に見えてきた。



 帝国に近いセレストは帝国から様々な分野で多くの影響を受けていた。

 その中の一つが酒場という組織であった。

 酒場は帝国内の町や村に必ず一つあり、そこでは飲食のほかに住民や商人からの依頼も受け付けていた。

 受付が終わった依頼はほとんどが掲示板に張り出される。

 依頼を受注するためには酒場に身分登録が必要だった。

 登録した者は冒険者と呼ばれ、依頼を受けることができる。

 ただし、依頼の中には推定危険度が設定されているものがあり、熟練の冒険者しか受注できないものもあった。

 アズリーも当然登録しており、マイオソティスの依頼の大半が酒場を経由したものだった。



 酒場は周りの建物よりも一回り以上大きい。

 解放された扉から中に入ると、左の壁に大きな掲示板がみえた。

 その掲示板は朝の依頼書の張り出しから時間が経過していて、今は売れ残った依頼しか張られていなかった。

 その奥には、受付のカウンターがある。

 窓口は3つあり、今は一人依頼を持ってきたであろう商人が受付嬢と会話をしていた。

 右手には大小のテーブルがいくつも用意され、遅い朝食をとる集団の姿があった。


「アズリー!こっち。」


 アズリーが周りを見渡していると、不意に遠くから名前を呼ばれた。

 声が聞こえたほうを見ると、二階に続く階段に緋色のショートヘアの小柄の女性が手を振っていた。

 アズリーが探していた人物だった。

 彼女の名はグレイス、元怪物専門の冒険者で、怪我で引退した今は受付嬢兼訓練場の教官をしていた。

 マイオソティスへの依頼も彼女が取り扱っているため、アズリーは彼女を探していたのだった。


「アズリー、おはよう。戻ってたんだ。」


 グレイスは小走りでアズリーの下にやってくる。


「おはようございます。一昨日戻りました。」

「そうなんだ。けがはなかった?」

「今回も何事もありませんでした。」

「本当に~?アズリーはすぐ無茶をするからお姉さん心配だよ。まぁいいわ、すぐ取ってくるから、どこか座っていてよ。」


 グレイスは小走りで受付の奥に向かっていった。

 アズリーは近くの小さいテーブルに腰を掛けた。


「お待たせ~。」


 数分もしないうちにグレイスは紙の束をいくつか抱えて出てきた。


「今週はそんなに届いていないみたい。」


 そう言って依頼書の束を一枚ずつテーブルの上に広げていく。

 アズリーは広げられた紙を一枚ずつ確認する。

 どれも戦死した家族や恋人の遺品の回収を依頼した書類だった。

 アズリーは全て読み終えると鞄の中にしまった。


「ありがとうございます。どれも問題ないです。手元にある分は来週ルルに持っていかせます。それとこれが先週の分です。」


 アズリーは鞄からいくつか黒い箱をテーブルの上に置いた。


「うん、確認するね。」


 グレイスは自分の手元に残っていた紙を広げる。

 その紙には細かな文字がびっしりと書かれていた。

 どれも以前アズリーまたはルルに渡した依頼対象の名前だった。

 グレイスは箱に彫られた名前を確認し、紙の中に名前があるか確認する。

 見つかるとペンで斜線を引いていく。

 数分後、全ての箱の確認を終えたグレイスは立ち上がった。

 そして一つ背伸びをすると箱の山を上手に持ち上げた。


「うんうん、確かに受け取ったわ。じゃあお金のほうを準備してくるね。」


 グレイスは黒い箱とともにまたカウンターの奥に下がった。

 数分後、奥から出てきたグレイスの手には、中身が詰まった袋があった。


「はい、今回の報奨金だよ。」


 アズリーは袋を受け取る。

 袋はずっしりとした硬貨の重みを感じた。


「ありがとうございます。お店に帰って確認します。」


 アズリーは鞄の奥にしまい、鞄の蓋を閉めた。

 そして鞄を手に、立ち上がった。


「マスターはいますか?」

「多分二階にいるんじゃないかな。もう行くの?」

「今日は先約がありまして…、すみません。」

「そっか。それなら今度、いつでもいいからどこか時間ある時、おしゃべりしよ。」

「はい。それでは失礼します。」

「じゃあね〜。」


 グレイスは手を振った。

 アズリーはグレイスに小さく手を振り返して、階段を登った。


明日も投稿します。

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