1-1-2 お店の日常2
アズリーは酒場に行く準備をしていると、玄関の扉の鐘が響いた。
「お嬢、いるか?」
「あ、ルルちゃん、おはよう。」
「おはようございます。主様を呼んできましょうか?」
「アズリーちゃんも忙しいわよね、まだここにいるならここで待たせてもらってもいいかしら?」
「分かりました。」
下の階から騒がしい声が聞こえた。
アズリーは残りの準備を終えると、下の階に降りた。
アズリーが下に降りると、やってきた男女二人組が椅子を引っ張り出して、談笑していた。
男性の名はダイダ。
長身で引き締まった筋肉と日焼けした肌が印象的な強面な男性だった。
彼はスラム街で大きな影響力を持つ、セレスト周辺の大地主だった。
女性の名はレイヤ。
常に少し濃い化粧し、上級の絹を使った服を身にまとっている女性だった。
彼女もスラム街で大きな影響力を持つ、洗濯業をはじめとしたいくつかの工場のオーナーだった。
テーブルにはルルの姿はなく、聞こえてくる音からキッチンで何か作業している様子だった。
「お待たせしました。ダイダ、レイヤおはようございます。」
「おぅ、お嬢。おはよう。」
「おはようございます、アズリーさん。元気そうでよかったわ。」
私は自分の席についた。
そのタイミングでルルが紅茶を入れてきた。
「嬢ちゃん、ありがと。」
「ルルちゃん、いつもありがとね。」
「ありがとう。ルルもこっちおいで。」
アズリーが呼ぶと、自分の椅子を引っ張って、アズリーの隣に座った。
少しの間、世間話に花を咲かせていた。
「ダイダさん、今日の午後も時間空いていますか?」
話していた話題が途切れたのを見計らって、アズリーがダイダに訊ねた。
「おう、今日はすべて部下に任せてきたから大丈夫だ。それこそ今からでもいいが?」
「今から一度酒場に行く予定でして…。」
「ならお嬢が戻ってきたらでいいか?」
「はい、ありがとうございます。」
「ちょっといいかしら?彼の後、私アズリーちゃんに相談したいことがあるのだけど、かまわないかしら。」
レイヤが会話に飛び込んできた。
「もちろん問題ないですよ。何かありましたか?」
「ちょっといろいろとね。」
アズリーが見る限り、レイヤの表情を見る限り深刻そうな様子ではなかった。
「分かりました。少し待たせてしまうかもしれませんが大丈夫ですか?」
「ええ、私も今日は時間が余っていますわ。」
アズリーは紅茶を飲み干すと、鞄を手に取った。
「では、私は一度席を外させていただきます。
ルル、店番お願いね。」
「分かりました。
行ってらっしゃいませ。」
「行ってきます。」
アズリーは玄関を開けた。
「おう、いってら。」
「急がなくてもいいからね。」
彼らの声を背中に受けつつ、アズリーは外に踏み出した。
次は来週投稿する予定です。