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Scavenger Princess ~すべてを失った王女の死体漁り生活~  作者: 神無月てん
第1章 お店≪マイオソティス≫
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1-1-1 お店の日常1

第1章第1幕開始です。

 アズリーの一日は、紅茶を入れるところから始まる。

 王女時代から続けている数少ない習慣だった。

 やかんに水を入れ、コンロに火をつけてお湯を沸かす。

 しばらくするとやかんがシューシューと音を立て、水が沸騰したことを告げる。

 事前に準備していた真っ白な陶磁器でできた2つのカップとポットにお湯を入れて、温める。

 カップとポットが温まったら、茶葉を取り出し、ティースプーン二杯を入れる。

 そしてやかんを温めていた火を止め、ポットにお湯を注ぐ。

 数分蒸らしていると、徐々にあたりに紅茶の香りが漂い始めた。

 その時、チリンチリンと玄関が開く音が鳴った。


「ただいま戻りました。」


 玄関から声が聞こえる。

 その足でキッチンに入ってきたのは、この家のもう一人の住人、ルルだった。


「ルル、おはよう。」

「おはようございます。」


 ルルの手には朝市で買った野菜の詰まった袋が握られていた。

 ルルは袋を床に置くと、今日の朝使用する分の野菜を取り出し、朝食の準備を始めた。

 アズリーはポットの中の紅茶を一つかき混ぜ、2つのカップに注ぐ。

 注がれた2つのカップから漂う紅茶の匂いが、ふんわりと部屋を包み込む。

 アズリーはカップを砂糖とミルクと一緒にお盆に乗せてテーブルまで運んだ。


「ルル、紅茶できたわよ。」


 朝食の準備をしているルルに声をかけた。


「ありがとうございます。」


 ルルは手を止めるとテーブルまで来ると、自分の椅子に座り自分のカップを手に取った。

 お盆の上に用意された砂糖とミルクを入れて、一口飲んだ。


「今日もおいしいです。…どうすればこのようなおいしい紅茶を入れることができますか?」


 ルルは匂いも楽しみつつ、訊ねた。


「そうね、あとは経験ね。今でも十分茶葉のおいしさを出しているわ。あとは自信をもって入れればいいわ。」


 アズリーは紅茶を一口飲んで答える。

 昨日の紅茶はお世辞を抜きにしても十分においしかった。

 貴族のお茶会で用意される紅茶と遜色がなかった。


「それでは私は引き続き、朝食の準備をさせていただきます。」


 紅茶を飲み終えたルルは席を立ち、キッチンに向かっていった。




 トトトトと野菜を切る音が聞こえる。

 ジュージューといい匂いとともにウインナーの焼ける音が聞こえる。

 朝食の準備の音を楽しみつつ、アズリーは静かに紅茶を飲んでいた。




 アズリーが時間をかけて紅茶を飲み終えたころ、ルルが朝食を持ってきた。

 今日の朝食はパンとウインナーとサラダだった。

 アズリーは小皿に用意されたドレッシングをかけて、サラダを口にする。

 朝とれた野菜はみずみずしく、ドレッシングが素材の味を見事に引き立てていた。


「ルル、とてもおいしいわ。」


 アズリーはルルに声をかける。


「ありがとうございます。」


 ルルは嬉しそうに答えた。

 その後も二人はゆっくり朝の食事を楽しんだ。




「今日は午前中、酒場に行くわ。」


 朝食後、二人は食後の紅茶を飲んで今日の予定の確認を取る。

「分かりました。それと主様、今日はあのお二方がお見えになるかもしれません。」

「そう、ならできる限り早めに帰ってくるわ。」

「分かりました。」


 ルルは少し不安げに返事を返した。

 アズリーは小さく俯くルルの頭を撫でながら言った。


「まだ二人が苦手なのね。もし本当に辛かったら席を外しても構わないわ。二人もわかってくれると思うわ。」


 ルルは小さくうなずくのを確認すると、アズリーは出かける準備を始める。

 ルルも朝食の片付けるためにキッチンに向かった。


次は明日投稿します。

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