1-1-0 泡沫の想い出『魔獣について①』
幕間の話です。
主に幕の初めに入れる予定です。
次から本編です。
王城の図書室。
王城の中でも有数の広大な空間に背の高い本棚がたくさん立ち並んでいた。
いくつかの本棚には高いところの本を取るための脚立が立てかけられていた。
本は十分に手入れが行き届いていないのか、所々埃がたまっていた。
部屋の中央には大きなテーブルが鎮座し、大小さまざまな椅子が用意されていた。
そんな図書室だがいくつかある窓はカーテンが引かれ、テーブルの上にいくつか準備されている燭台がテーブル周辺を温かく照らしていた。
照らされている本棚に、二つの影が映る。
「本を持ってきたか?」
「はい、師匠。」
「まずは復習からだ。魔獣の特徴を答えろ。」
「普通の生き物の心臓にあたる部分に魔石があり、これが魔獣の心臓にあたります。」
「あとは?」
「えっと、魔素をエネルギーとして生きています。ただ、魔素を自然からとることができないので、他の生き物の肉を食べて生きています。」
「まあ、これくらいでいいだろう。魔獣と生物の違いは一つ、魔石の有無だ。魔獣は心臓の代わりに魔石があり、これが魔獣の動力となっている。そして動力の源は魔素だ。魔素を消費して、強靭な肉体を維持している。ただ、自然界に漂う魔素を体内に取り込むのは少々非効率だ。そのため、奴らは生き物を食らう。
さてここからだ。魔獣は種族によって魔石の大きさが大きく異なる。例えばグール種は胡桃ほどの大きさしかないが、鋼熊種は水晶玉ほどもある。大きさが大きいほど、エネルギーに変換する性能は高いが、体内で消費する量も大きい。そのため、魔石が大きい個体ほど体内に多くの魔素が残っている、新鮮な肉を求める。すなわち、自らの糧にするために生き物を襲うのだ。
さて、魔石の大きさだが種族ごとに違うといったが、体格でどれくらいの大きさなのか判別できる。グール種を除き、魔獣は魔石の大きさに比例して体格も大きくなる。魔獣を、特に大きな魔獣を見つけたら、必ず逃げるようにしろ。たとえ友人がやられていようともな。今のお前では、食料になるのがおちだ。」
「…わかりました、師匠。」
「また、魔獣には種類ごとに特有の力がある。どの力も人間にとって脅威となる力だ。魔獣を覚える上で必要な情報でもある。これは魔獣ごとに説明していく。」
「はい、わかりました。」
「さて、基本的なことはこれくらいで構わないだろう。続いて魔獣の中で、一般にも知れ渡っている、かつ特殊なグール種について説明しよう。グール種の項目を開け。」
椅子に座った少女の影は分厚い本を開くのだった。
次は明日投稿します。
*2/26改稿