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Scavenger Princess ~すべてを失った王女の死体漁り生活~  作者: 神無月てん
第1章 お店≪マイオソティス≫
23/26

1-3-2 ノコサレタモノ2

新年最初の投稿です。

 時刻は夕方。

 真っ赤に染まった戦場に、一つの車列が現れる。

 アズリー、キリア、クレアの三人を乗せた馬車に加え、ダイダの部下八人を乗せた馬車二台。

 更にセレストの集いの傭兵と傭兵見習いを乗せた馬車五台に、セシリアの集いの運搬用の馬車二台の計十台の車列であった。



「着きました。」


 アズリーが車列を止めた場所は、戦場近くの廃村だった。

 アズリーは止まった馬車から降りてきた二組のリーダーに話す。


「本日から数日間、ここを拠点にして活動します。」

「大丈夫なのですか?崩れたりしませんか?」


 セシリアの集いのリーダーであるローガンが、村を見渡しながら訊ねる。

 この村は、帝国と魔導国の戦争が始まっ直ぐに放棄されていて、村の中は荒れ果てていた。


「ええ、去年も使っています。家屋に関しては、ある程度の雨風は凌げると思います。ただ、井戸水は枯れていますので、魔法・魔術で生み出すか、持ってきたものを使うしかありません。」


 そう言われて、ローガンは改めて見渡すと、確かにいくつかの家屋で補修された形跡があった。


「私たちは、あの家屋を使わせていただきます。セシリアの集いの方はあちらの家屋を、セレスト商会の方はあちらの家屋を使ってください。」


 アズリーは指で指しながら伝える。


「おう、いつも通りだな。」


 そう言って、ダイダの部下であるセレスト商会のリーダーは馬車で待つ仲間の下に戻る。


「彼らは信用できる方々なのですか。」


 ローガンは去っていく姿を見て、アズリーに訊ねる。


「格好や態度はあの通りですが、心配ないですよ。身を守る術も身に着けています。多少の問題行為は目を瞑っていますが…。」


 アズリーは少し苦笑いを浮かて答える。


「アズリーさんがそうおっしゃるなら…。」

「ただ何か問題がありましたら、私に教えてください。」

「わかりました。」

「ローガンさん、どうなりましたか?」


 ローガンが頷いたとき、後ろから様子を見に来たサブリーダーを名乗っていた魔法師の男性が声をかけた。


「あちらを使っていいそうです。先に荷下ろししていてください。」

「了解です。」


 サブリーダーはアズリーに一礼してから、馬車で待つ皆の下に戻っていく。


「それで、警備のほうはいかがなさいますか?」


 ローガンはもう一つ聞かなければいけないことを質問する。


「日暮れまではお任せしてもよろしいですか?私たちも荷下ろしをしなければいけませんから。夜までには私たちのほうも終わりますから、寝ずの番までには私たちからも一人出します。この村の西側に物見やぐらがありますので、そちらも利用してください。補強もしてありますから、強度は問題ありません。」


 アズリーは指をさしながら、伝える。


「わかりました。すぐに警備の人員を当てます。それでは私も失礼します。」

「お願いします。」


 ローガンは皆の下ではなく、物見やぐらの確認をするために西側に向かって去っていった。

 アズリーは先に荷下ろししている二人の下に向かった。




 次の日、早朝。

 朝日が昇るころ、夜警していたセシリアの集いのメンバー以外が村の入口に集まっていた。


「今日は戦場の北側を捜索します。戦闘から一日しか経過していませんが、死者数も多いため、グールなどのランクの低い魔獣が現れると思います。ですので、広がりすぎず、警戒を怠らないようにしてください。ミイラとりがミイラになるなんてことは、ないようにしてくださいね。何か質問はありますか?」


 アズリーは出発前のミーティングをしていた。

 ただ、昨晩リーダー同士で会議を開き、行動の計画を立てていたため、質問は上がらなかった。


「それでは、出発します。私の馬車に続いてきてください。」


 その声で集まっていた人々は、各々の馬車に乗り込んだ。

 そして、アズリーたちの馬車に続いて、動き出した。



 アズリーが停車させた場所は、帝国軍の左翼。

 朝日が昇り、戦場を照らしていた。

 その中に降車した皆は、収集班と警備班で別れて動き出した。



「皆さんはわかっていると思いますが、確認も兼ねて説明します。我々は腕輪をしている遺体を中心に収集しますので、セレスト商会の方々はその他の遺体を収集してください。収集物はアクセサリーや貴重な物品を集めてください。装備は破損が少ないもの、もしくは魔導具を集めてください。また、貨幣に関してはご自由にしてください。集めた物品は、アクセサリーや貴重な物品は白い木箱に、装備や魔導具類は普通の木箱に入れてください。満杯になった木箱はセシリアの集いの運搬班の馬車に積んでください。それでは解散してください。」


 セレスト商会の人々はアズリーの声に頷き、動き出した。

 アズリーたちも彼らの動きを見ながら、動き出す。

 馬車に積んでいた魔素波を探知する魔導具を取り出し、指し示す遺体を探し始めた。


年末年始の休みで書き溜めができたので数週間連続で投稿できると思います。

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