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Scavenger Princess ~すべてを失った王女の死体漁り生活~  作者: 神無月てん
第1章 お店≪マイオソティス≫
15/26

1-2-4 死体漁り屋≪スカベンジャー≫4

今回は少し短いです

 母家に戻ったアズリーは階段を登り、二階の自室に入った。

 綺麗に片付けられた部屋には、机と椅子とベッドのほかに様々な文献が並んだ本棚があった。

 アズリーは腰につけたポーチを外し机に置くと、椅子に腰掛けた。

 そしてポーチから先ほど調合小屋から持ってきたポーションを取り出すと、一息に飲み干した。

 するとアズリーは身体の芯から燃え上がるような感覚に襲われた。

 血流が激しく身体を巡り、指先一つ動かすこともままならない。

 机に倒れ伏し、この激流が収まるのを歯を食いしばって我慢した。


 数分後、アズリーはようやく身体を動かすことができるようになった。

 まだ身体は熱を発していたが、体全体が燃えるような感じではなくなっていた。

 アズリーはゆっくりと身体を起こすと、体調を確かめるように身体を動かし、そして近くの姿見で自身の姿を確認した。

 そこに映っていたのは、髪の色が大きく異なった姿だった。

 先ほどまでは艶のある黒色の髪だったが、今は仄かに煌めく白銀色に代わっていた。



 アズリーは先天性の魔素過敏症という体質だった。

 魔素過敏症と呼ばれるこの体質は体内の魔素が活発になると、体の一部、多くの人は髪の毛の色や目の色が変化する症状を起こすものである。

 この体質は体内に保有する魔素量が多い人間に現れやすく、歴史を遡ると一つの魔術の体系を生み出した魔術師や神の癒し手と呼ばれた教会の聖女など、魔法や魔術の才に秀でた偉人も多い。

 その体質に目を付けたのが、アズリーの師匠だった。

 体内の魔素の活動を抑えた場合、変色が起きる部位が魔素の色である黒色になることを発見した師匠は、アズリーと別れる際に魔素の活動を抑える薬と、活性化させる薬の二つの調合法を書き記したレシピを渡していた。

 アズリーは二つの薬を作り置きし、町に出るときは魔素の活動を抑える薬を飲んで黒髪の女剣士となり、人目につかない場所では魔素の活動を活性化させる薬を飲んで本来の姿に戻っていた。

 幸いなことに国民が知っていた王女(アズリー)の情報は、大まかな容姿と魔法に長けているということだった。

 そのため、魔素の活動を抑えた時の副作用である魔法が使えなくなることもカモフラージュとして役に立っていた。




 アズリーは体内の魔素を活性化させたことによる、身体の火照りが冷め終わるのを待ってから、荷物の片付けを再開した。

 先にキリアが片付けを始めており、アズリーとキリアは終始無言でテキパキと片付ける。

 日が完全に暮れ、家の中の照明に灯りを灯してからも作業を続け、ようやく玄関の前に下ろした全ての木箱を片付け終えた。

 木箱から荷物を出す作業が残っているが、すぐにしないといけないわけでもないため、明日することにして、夕食にすることにした。


 アズリーとキリアがダイニングに行くと机には手の込んだ料理が並べられていた。

 クレアはアズリーとキリアが片付けをしている最中、馬のお世話をした後、一度服を着替えてから夕食を作っていた。

 一流といってもいい腕前を持つクレアが作る料理は、色とりどりで食欲をそそられる匂いを漂わせていた。

 全員が席に着くと食前の祈りを捧げてから、食事を始める。

 食事中、クレアはアズリーがおいしそうに料理を口にするたびに、すごくうれしそうな表情を浮かべ、キリアはそのいつもの様子にうんざりとした表情で食事をするのだった。



「私がいない間、何かありましたか?」


 食後の紅茶タイム。

 アズリーは二人に訊ねた。


「特に何もなかったわ。」


 と、キリアが答えると、


「お姉ちゃんが調合部屋にずっと籠っていたくらいです。」


 と、クレアは口を尖らす。


「ずっとではないでしょ。書類も片付けていたでしょ。」

「他にもやることあるでしょ。部屋の片づけとか、畑の手入れとか。」

「はいはい、そこまでにして。キリア、ポーションづくりも大事だけど、この家の管理もしっかりしてね。」


 姉妹喧嘩を始める二人をアズリーは制し、キリアには一言伝える。


「それではこの後の計画を決めようか。」

 といい、アズリーはキリアと計画を立てていく。

 白熱する二人を尻目に、クレアは紅茶のお代わりを用意したり、お皿を洗ったりと家事を黙々とこなしていたのだった。

 二人の会議は夜更けまで続くのだった。

数日以内に1-1-0を改稿する予定です。

次回は2週間以内に投稿する予定です。

予定ですので期待はしないでください。

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