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Scavenger Princess ~すべてを失った王女の死体漁り生活~  作者: 神無月てん
第1章 お店≪マイオソティス≫
13/26

1-2-2 死体漁り屋≪スカベンジャー≫2

今週二本目です。


 アズリーはディー博士の研究所を出て街道に戻ると、北に向かって歩き出した。

 そして夕暮れごろに到着した街道沿いの村の宿で一晩明かした。

 その後も順調に行程通り進み、セレストを出て三日後の昼には北方連合につながる街道と王都につながる街道が交わる町、ススリリについた。

 ここからアズリーは王都へ続く街道を行くのだが、王都に向かう街道は山脈を越えなければいけなかった。

 そして次の村は丸一日かけなければたどり着くことはできないため、予定通りこの町で一泊した。

 そして翌日の早朝、アズリーは西クリズノー山脈を越える街道の峠の頂上付近にある村、フォグノに向けて出発した。

 街道は谷間に作られており、所々細い個所や断崖絶壁の場所もあった。

 だがこの街道は帝国軍も使用するため、しっかりと整備されていて、崩れる様子は全くなかった。

 合間にいくつも設けられたセーフゾーンで休息を挟みつつ、峠道を進む。

 そして夕刻、無事にフォグノに到着した。



 このフォグノは特殊な村だった。

 この街道が開通したときに旅人が夜を明かすための宿場町として作られたこの村だが、それと同時に国防上重要な地点でもあった。

 そのためフォグノの土地は砦の建設地として多くの土地を接収され、砦の南側の外壁に沿って作り直された過去があった。

 そして現在は、帝国軍がこの村に住んでいた住人全員を退去させ、旅人が利用する宿だけは軍が運営していた。

 そのため、夕食や朝食が用意されることはなく、食材がない人は高い値段を払って軍から食料を買うしかなかった。



 アズリーは厳重な警備された門を通過し、馬車を預けると指定された宿に向かった。

 戦争によって多くの行商人が中央に向かうことを止めた現在、宿は閑古鳥が鳴いていた。

 アズリーは割り当てられた部屋に荷物を置くと、軍が用意した場所で手持ちの食材を使い、夕食を作って食べた。

そして少々かび臭いベッドで就寝するのだった。


 次の日、日が昇るころ、アズリーはフォグノを出立していた。

 谷間に沿って作られた街道を今度は下っていく。

 中央部側の街道は、西部側の街道よりも距離は短いが傾斜が急なため、アズリーはより慎重に馬を操って下っていった。

 その道中、一定間隔に帝国軍の関所が設けられており、何度も足止めを食らった。

 だが朝早くに出発した甲斐もあり、昼下がりには中央部側の麓の町、アルテットに到着した。



 アルテットは中央部西の玄関にあたる町だった。

 この町は東西に延びる大きな街道のほかに、中央部北の村々につながる小さな街道と、中央部南の町につながる街道の起点でもあり、交通の要所だった。

 そのため戦前は多くの旅人が訪れた町だった。

 今は帝国軍が物流の拠点として構え、いくつかの空き家を接収して、活動拠点としていた。

 そのため、町には警備隊員のほかに前線勤務の補給部隊員が多く滞在していた。



 アズリーは門を通過すると、この町を訪れる際いつも行くお店に向かった。

 遅い時間にも関わらず、お店には多くの客人がいた。

 どれもこの町に滞在する軍人だった。

 彼らは今日非番なのか、片手にジョッキを持って騒いでいた。

 アズリーは女将さんに料理を注文すると、店内でも一番目立たない席に座った。

 料理が運ばれてくるまでの間、改めて店内を見渡した。

 そして木製のテーブルとイスに目が止まった。

 じっくり見ると、彼らが座っているテーブルやイスにはいくつものシミや硬い物で傷つけられた痕跡が残っていた。

 彼らの座っている席の周りのテーブルやイスにも同様の痕跡が見えた。


「騒がしくて、ごめんなさいね。」


 料理を運んできた女将がアズリーに話しかけた。

 女将が向けた視線の先は、アズリーが見ていた先だった。


「最近あいつらがやってくるようになってね。やってくるたびに酒盛りして騒いで暴れるのよ。そのせいで常連客が減ってしまってね…。戦争のせいで旅人がめっきり来なくなって大変なのに…。」


 そしてはぁ~、とため息をつく。


「食事前にごめんなさいね。ごゆっくりしていってね。」


 女将は少し疲れた足取りで裏に戻っていった。

 アズリーは食事に目を向けた。

 注文した料理はクリズノー王国の家庭料理だ。

 アズリーはスプーンを取り、スープをすくって飲んだ。

 味はまずまずだった。

 以前はもっと美味しかった。

 だがこの店を訪れるたびに具材が少なくなっていき、それと同時に鮮度も落ちていった。

 お店の主人の腕前によって、辛うじておいしさを保っていた。

 アズリーは全て残さず食べきると女将に「ご馳走様。」と言って、値段よりも少し多めに代金を支払った。

 いい仕事をした者にそれ相応の対価を支払うことは、アズリーの一つの主義だった。

 女将もアズリーのことをある程度知っているから、何も言わずに受け取った。

 アズリーはお店を出ると、北側の門からアルテットを後にした。


今週はこれで終わりです。

また来週投稿します。

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