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Scavenger Princess ~すべてを失った王女の死体漁り生活~  作者: 神無月てん
第1章 お店≪マイオソティス≫
11/26

1-2-0 泡沫の想い出『魔獣について②』

予定通りに投稿できなくてすみません…


 少女の影が本を開く。

 本のページがめくるたびに近くのろうそくの灯がふわふわと揺れる。

 それに合わせて二人の影もゆらゆらと揺れた。



 少女が開いた場所は、グール種について書かれたページだった。

 最初のページにはグールの絵が描かれていた。


 一切毛がない頭。

 (うろ)のような眼孔。

 とってつけたような耳鼻。

 大きく裂けた口。

 獰猛で不釣合いな牙。

 血の代わりに魔素が循環した灰色の体。

 異常に発達した腕足。

 鋭く尖った爪。

 そして所々赤黒く不気味に彩る傷跡。

 どれをとっても醜く、絵ですら不快感を催す怪物。

 これがグールだった。



 少女がページをめくるとグールの生態や研究が書かれていた。



  グールは 多くの生態が 未だに分かっていない

  どこに住み どのように繁殖するのか 不明である

  唯一分かっていることは 死んだ生物を 食べるということだけだ

  奴らは死体がある場所に どこからともなく現れる

  死体を食べることにより 不活性化した魔素を 体内へ取り込み 自らのエネルギーにする

  ただそれだけのみ わかっている


        ~中略~


  グールの起源は 多くの研究者が 様々な説を 唱えている

  死んだ人間を 生き返らようと 試みた結果 生まれたという説

  古代の人間が 神を模した生物を 創造した結果

  逆に人類の 敵として 神が創造した 人間と同等の生物

  この世界に 魔素が生まれた時から 存在する生物

  だがどの説も 根拠も 証拠も 論拠も 存在しない

  

        ~以下略~



 少女の影が一通り読み終え、本から視線を外す。

 手持無沙汰に机に腰掛けていた、女性の影が口を開く。


「奴らの対処法は、一番は攻撃しないことだ。奴らは死骸にしか興味を示さない。普段はこちらから攻撃しなければ、奴らも攻撃してくることはまずないだろう。だが、死骸が付近に存在する場合、このことは当てはまらない。自身の獲物を手に入れるべく、襲い掛かってくるだろう。

 奴らの攻撃手段は、異常発達した鉤爪だ。グールの魔獣特性である硬化で相手の攻撃を防ぎ、鋭い鉤爪で戦う。

 そんなグールだが、奴らには知能がない。一体だけなら、多少武芸を齧った村人ですら倒すことができるだろう。

 しかし、奴らの危険な点は攻撃手段ではない。

 奴らは多くの場合、群れで現れる。いや、群れという表現は正しくないな。死骸に集まる習性により、ほとんどの事象において、一斉に現れるという表現が正しい。そして時間が経てば経つほど、そして死体の数が多ければ多いほど、集まる数は増していく。

 もし多数のグールに包囲されてしまえば、熟練の狩人でも討伐には困難を極める。

 その状況下に陥らないためにも、第一に死骸のそばに近づかない。第二に死骸を素早く処置する必要がある。」

「死体にはよっぽどのことがなければ、近づくなということですか。」

「そうだ。このことはこの他の魔獣の対策にもつながる行動だ。何れか解体術を教えるが、素早い解体術は身を守るためでもあるのだ。

 そろそろ時間だな。明日は今日取り上げなかった一般的な魔獣について行う。今日教えたことは忘れないように。」

「はい師匠。」



 少女の影は大きな本を閉じ、元の場所に戻すために本をもって席を立つ。

 その小さな後ろ姿を、女性は優しい眼差しで見守っていた。

 



今週あと一話投稿するかもしれません

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