「どうしてそんなところにいるの?」と言ったら3人の野良猫女子高生が雨の中座っていた件〜3人の美女が地味な俺と別れてくれない!〜
「雄馬、もう行くの?」
「あぁ」
「絶対いつか帰ってきて来なさいよ!」
「もちろん」
「ゆんまがいなくなるなんて寂しいよ」
「泣くな、未幸。またな」
俺はこうして三人と別れた。
あれは確か一年前のことだった。
雨が降っていた。
傘もささずに三人の女の子がくっつきながら座っていた。
まるで野良猫のようだった。
俺はそれをスルー出来なかった。
「どうしてそんなところにいるの?」
「……」
彼女たちは何も言わなかった。
それは、約一分程の沈黙だった。
最初に口を開いたのは彼女たちからだった。
「……捨てられたの」
それだけを言った。
俺は特に深追いはしなかった。
捨てられた理由なんて今はどうでもよかったのかも知れない。
あまりにも可愛そうだったので、三人を家まで連れて行った。
今日はちょうど親は仕事でいなかった。
初めは三人とも口を開かず、どう接していいのか分からなかった。
それでも、俺の苦労もあってか徐々に心を開いてくれるようになった。
それでも出会いには別れも付き添う。
俺は親の仕事の手伝いをするため、この家にはいられなくなった。
三人は寂しそうにしていた。
俺も寂しかった。
それでも、別れなければいけなかった。
高校二年生である俺は地味な性格と髪型のせいで周りからは隠キャと呼ばれている。
別にいじめられているわけじゃないから特に気にしてはいない。
この前は何と言っても女子に告白されたのだ。
しかも、かなり評判のいい美女にだ。
「ずっと前から雄馬くんが好きでした。付き合ってください!」
「……こちらこそよろしくお願いします」
俺はもちろんオッケーした。
「ぷっ、あははあはは。嘘だよ、嘘。誰がお前なんかに告るんだよ。変な期待してんじゃねーよ!」
その告白は嘘だった。
きっと罰ゲームとかだったんだろう。
だから別に決していじめられているわけではない。
それにしても今日はやたら学校の外が騒がしい。
俺は外に出てみる。
「何だよ、あの美女たちは!?」
「あんな子、この学校にいたか?」
男子生徒が会話をしていた。
皆が注目をしていたがどちらにしろ俺には関係のないことだ。
隠キャな俺があんな美女たちと関わることなんてないからだ。
「おーい、皆坂雄馬って奴はいるかー?」
一人のガタイのいい男子生徒が大声で呼んだ。
周りはそんな奴知らないよみたいな反応をしている。
俺も知らない。
まぁ、そもそも友達もいないんだ。
学校でいちいち生徒の名前を覚える必要もない。
でも、その名前どっかで聞いたような……。
「あ、ゆんま!」
一人の美女が俺を指差す。
皆坂雄馬って俺じゃねーか!
しかも、その呼び方……もしかして未幸!?
周りの視線が一瞬で俺に当たる。
「帰って来るって言ったじゃない!」
そういえば言ってたな、そんなこと。
「雄馬ー、会いたかったよー!」
やめろ。目立つだろ。
この状況を順を追って説明しよう。
俺は昔、親の仕事の手伝いとして動物の保護をしていた。
悲しいことに近年では捨てられる動物が多いのだ。
そこで偶然、この三人を発見した。
人間が捨てられているなんて初めて見た。
親父にも説明した。
そしたらなんて言ったと思う?
「あー、お前の家どうせ彼女も誰もいないだろ? どうせなら面倒みてやれよ。よかったなー、女の子三人と同棲できて、羨ましいぜ!」
いや、適当ー!?
それで俺は面倒を見ることにした。
それでも俺は他の仕事もあったので多忙であり、学校には行けなかった。
そこで親父に相談した。
仕事を辞めたいと。
親父は少し悲しそうな顔をしていたが認めてくれた。
なんだかんだでいい親父だ。
三人には仕事で出ていくと嘘をついた。
家まで引っ越した。
俺の役目は三人を自立させること。
あんまり過保護になっても仕方がない。
こうして俺は普通の高校生となった。
そんな三人がどうしてここにいるのかが謎だった。
最初に声をかけたのは未幸だった。
花園未幸。明るい性格で俺のことを何故かゆんまと呼ぶ。
次に声をかけたのは夏美だった。
水瀬夏美。ツンとした性格だが、俺やあとの二人には甘えてくる。
最後に声をかけたのが花香。
四季花香。大人っぽい性格でお姉さん的な存在である。
「どうしてお前らがいんだよ!?」
『それは』
三人は声を合わせるように言う。
『好きだから!』
「はぁ!?」
『雄馬のことを愛してます!』
これは告白なのか?
だとしてもだ。
「俺はお前らとはもう関われねぇ」
「どうして?」
花香が言う。
「俺は平凡な生活を送りたいんだ。お前らといたら目立っちまう」
「ゆんまは私たちのことが嫌いなの?」
未幸が言う。
「そうじゃねぇけど……。とにかく、お前らとは一緒に生活できねぇ!」
「あの言葉は嘘だったの?」
夏美が言う。
「だから、違う!」
「だったら一緒に暮らそ?」
「無理だって」
「……仕事でも?」
それとこれとでは話が違う。
仕事となれば報酬がもらえる。
これは俺にとってもメリットがある。
「報酬は?」
「ゆんまを守る」
未幸があまりに抽象的なことを言ってきた。
「守るって?」
「ねぇ、この前ゆんまに告白した人って誰?」
「……私ですけど」
その女子は手を上げた。
「ゆんまに手を出したら私が許さないからな?」
未幸は冷酷な目でその女子を見る。
周りも凍りついてしまうようだった。
「……は、はい」
その女子は怯えていた。
未幸はすぐに笑顔になり俺を見る。
「こんな感じ」
「……なんで告られたこと知ってんだよ」
「女の勘! ゆんまモテそうだから」
未幸の勘はちょっと怖かった。
「これで一緒に暮らしてくれるよね?」
未幸が言った。
「あの時の約束は守ってもらうからね!」
夏美も言った。
「雄馬、また一緒に暮らせるね」
花香も優しく笑いながら言った。
こうして俺は三人と同棲することになった。
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