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第漆話 皮被り 人に見られし 喜びは

今日三話目。

前のと比較して大きな変更ポイントがこの話ですね。

「いや~、まいったさね。零門様はとてもお強いさね~!」


 戦闘を終え、気絶状態から何事もなかったかのように立ち上がった老婆の一言目がコレである。()()()()()


「そうですのよ! 零門様はとてもお強いですのよ!」


 老婆の言葉を受け、零門が言葉を返すよりも先にライムが発した一言目がコレである。()()()()()


「なんでアンタ達までここにいるの……?」


 零門が視線を向けたのは、揉み手する老婆の背後で畏まったかのように正座する男三人組。


「さすが零門様だぜェ! ここらでも最強のお方だァ!」

「ヒャッハァー! 零門様サイコー!」

「さすが零門様だぜェ! ここらでも最強のお方だァ!」


 そこにいたのは『剛腕のゴンザレス』『猛毒のジョニー』『業火のオスカー』。定型通りの誉め言葉を零門へと浴びせかける。


 困惑する零門を余所に、老婆は前に進み出て揉み手をしながら媚びへつらった。


「零門様こそこの街の裏社会のトップに相応しいお方さね。このアタシが太鼓判を押しますさね~」


「や、やめて気持ち悪い……さっきまでの調子で話せない……?」


「「「零門様、バンザ~イ! バンザ~イ!」」」


「だからやめて男三人組! 恥ずかしいからっ!」


「零門様、バンザ~イ! ですのよ!」


「ライムも混じらないで!」


 嬉しさどころか恥ずかしさしか感じない称賛の嵐に零門が赤面する中、ライムがフワフワと飛び寄る。その手にはクラッカーのようなものが握られていた。


「ぱんぱかぱーん! クエスト『裏社会を駆け上がれ』クリア! ですのよ!」


ライムはクラッカーを鳴らしつつ賞賛した。それと共に現れたのはクエストリザルトのウィンドウ……


----------

クエスト:裏社会を駆けあがれ

評価:SS


報酬:なし


特典

・裏社会の首領【ネヴァーエンド】

ネヴァーエンドの裏路地で荒くれ者達とのエンカウントがなくなる

ネヴァーエンドの露店のメニューが全て解放される

『裏社会の首領』を取得してない町の裏路地で荒くれ者達とエンカウントしやすくなる

一部特殊イベントの解放

etc……


・リンゲージ成立

兇手ライアイ

剛腕のゴンザレス

猛毒のジョニー

業火のオスカー

----------


「「「「「零門様、バンザ~イ!」」」」」


「だからやめてって!」


~~~


「それじゃ、早速買い物をさせてもらうね」


「どうぞどうぞ~! どんな商品でも好きにお選びくださいさね」


 何せ、零門はこのためにわざわざ町中の裏路地を駆け回り走り回り暴れ回る羽目になったのだ。


「とりあえず、偽装外皮(読み:フェイクスキン)を買わせてちょうだい」


「偽装外皮のみならず、零門様のお眼鏡に叶う物はたくさん用意してますさね。例えばこの衣装なんかどうさね? 鎧の上からでも纏える優れもの! 今なら熊皮から蝙蝠皮まで取り揃えてるさね!」


 そう言いながら老婆改めライアイはカーペットから外套やマント等々を取り出し始める。どうやらどれもこの装備の上から纏えるタイプのアクセサリーのようだ。


「いいじゃんいいじゃん! 全部買わせてもらうから!」


~~~~~~~~~~


「おお、凄い! ちゃんと人の姿に見える! 見えてるよね?」


「見えてますのよ! 零門様!」


 零門が立つのはログインしたばかりの彼女を地獄に叩き落とした姿見の前。偽造外皮【(ヒューマン)】を装備し、『熊羆の衣装(ゆうひのいしょう)』(雄々しい名前に反して熊耳付きのかわいいポンチョ)を羽織った状態の零門は、見た感じちゃんとした「人」だ。半魔特有の青い肌も、全身に刻まれたタトゥーも、頭に生えた不揃いの角も、際どい装備類も見事に隠されている。


「よし、これでやっていける! やるぞー!」


「オーですのよ!」


(再開当初はどうなるかってやきもきしたけど、時間内にどうにかなってよかったぁ……!)


 大通りのど真ん中で空を仰ぎ感慨に耽る。


「ほんと、一時間超の間に色々あったなぁ……」


「色々ありましたのよ……」


 まるでRPGのエンディングに到達したかのような達成感。久しぶりにログインしたら黒歴史の塊を突き付けられ、街を歩けば謂れのない罵倒の数々。裏路地を駆け回ってならず者達を打倒し、挙句の果てに店主さえもその手に掛けるとは……


 零門の脳裏に浮かぶのは、次々と襲い掛かる様々な苦難やそれに立ち向かう己の姿。


―――いいね。それじゃ火力勝負といこう!


……


―――さあ、今度はこっちのターン! 散々振り回されたんだから暴れさせてもらうよ!


…………


―――う・し・ろ

―――そっちが商人なら私はアサシンなの

―――火傷にお気を付けを!


―――チェックメイト(ドヤ顔)


―――残念~。盗賊出のアサシンなもので!

―――言ったでしょ? チェックメイトってさあ!


―――少々荒いのはご愛敬ってことで♡



―――死んだ程度で解ける呪いだったらどれほどよかったことか



………………


「あ~……あ……ぁ…………ごめん、ちょっと一旦席外す(ログアウト)ね」


「零門様?」


「大丈夫……すぐ戻ってくる。すぐ戻ってくるからぁ……」


~~~~~~~~~~


「くぁ……かふっ……っ! た、耐えろ……耐えなきゃダメ……! うっんん……!」


 柚葉は洗面所前でうずくまっている。お腹の底から湧いてくる己自身への羞恥の波に、耳まで真っ赤にしながら必死に耐えていた。


「いや、ほんと……ほんとマジでないからぁ……もう大学生だよ……大学生なんだよ私ぃ……はぁぁぁ……」


~~~~~~~~~~


「ただいま……ライム……」


「零門様? 大丈夫ですのよ?」


「ダイジョウブダイジョウブ……フゥー……さあて、気を取り直して……」


 深呼吸でどうにか心を落ち着かせる。何はともあれ、ここから再び零門の冒険が始まるのだ!


「さあ、行くよ! ライム!」


「はい! ですのよ!」


待ち合わせの時間まであと3分、場所は『立志の噴水広場』。


そこを目指して零門は駆けだした。

・青肌というアイデンティティを捨てるのか?

 偽装外皮は耐久力が低いのでストッキングみたいにすぐ破れます。

 すぐ破れます。


・露出を捨てるのか?

 今の零門はいわば下着の上から服を着ずに直にコートを着たりマントを羽織ったりしたような状態です。

 現実でやったら普通に変態ですね。

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[一言] 恥は投げ捨てる物(TRPGプレイヤー並感)
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