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第玖話 まず決めろ 一に挨拶 二に予定

「この方が零門様のご友人ですのよ?」


 ライムがアマオーの周囲を注意深く観察するように飛び回る。


「そうだよ。この子がゆz……コホンッ! 零門の……え~と、ガイド妖精?」


 アマオーがライムをジーっと見つめる。


「初対面なのに顔が近いですのよ!」


「あ、ごめんね。私はアマオーって言うの。」


「ライムは嘘夢(ライム)と申しますのよ。零門様のMENUですのよ」


「そうだそうだ! MENUって言うんだったよね。メニューと掛けてるっていうかそのまんまだね。よろしく!」


 アマオーが右手をライムに差し出した。いつもの癖だ。


「何……ですのよ……?」


「握手!」


「やってあげて、ライム」


「……はいですのよ」


 ライムがアマオーの右手人差し指を握った。


「よろしくね! ライムちゃん!」


「よ、よろしくですのよ。ア、アマオー様……」


 ライムがあからさまに動揺している様が見て取れる。こういうフレンドリーな所が好きなんだけど初対面は面食らっちゃうよね……


「そうだ! 私のMENUも紹介しなきゃだよね! 出てきて! 『ショート』!」


「何の用だぜ?」


 アマオーの頭上に魔法陣が出現し、中から緑色の髪をした妖精の男の子が顔を出す。


「この子が私のMENU! 『ショート』っていうの!ショートケーキのショート! ほら、二人に挨拶!」


「……こんにちはだぜ」


 そう一言呟くと、ショート君はそそくさと魔法陣へ撤退していった。


「ごめんね。たぶん照れ屋さんなんだよ」


「照れ屋なんかじゃじゃねーんだぜ!」


 魔法陣から顔を出したショート君がアマオーに抗議する。

 そんな様子にクスリとしながら私はショート君に挨拶した。


「よろしくね。私は零門(レモン)


「零門様のMENU、嘘夢(ライム)ですのよ」


「……よろしくだぜ」


「……また隠れちゃった。ほんとごめんね。私もまだ少ししか話せてなくてさ……」


「出会って日の浅いMENUはそういうものですのよ。ましてや今日出会ったばかりならなおさらですのよ」


「へぇ~、そういうものなんだ? ライムもそうだったの?」


「そうですのよ。MENUはパートナーとの絆を深めていくものですのよ」


「いつかショートもライムちゃんみたいになったらいいなぁ~」


 えっへん! といった感じに胸を反らすライム。そんな彼女を見ながら、少しだけ罪悪感が湧くのを感じる。



「それにしても髪をピンクに染めるのは思い切ったわね……」


 胸に湧いた罪悪感を誤魔化すかのように私はアマオーへと話題を振る。


「思い切ってみました~! どう? 似合ってる?」


「うん。似合ってる。見た感じ装備は魔法使いのだけど、耳が尖ってるから種族はエルフ?」


「ハーフエルフだよ。エルフは耳が尖りすぎててちょっとね。これキャラクリの時のスクショなんだけど……」


――――――――――


[種族によってステータスに掛かる補正やNPCからの反応が変わります。]

[※ゲームを進めることで転化(種族の変更)も可能ですが、一定の条件があります。]


[現在選択できる種族は以下の通りとなります。]

 ・ヒューマン

 ・ハーフエルフ

 ・エルフ

 ・ドワーフ

 ・ハーフドワーフ

 ・獣人【犬】

 ・獣人【猫】

 ・獣人【熊】

 ・獣人【兎】


――――――――――


「あれ? 半魔は?」


「はんま?」


「あ、いや、なんでもない。うん……」


 あれ~おかしいな? 私の記憶が正しければ、私がやってた頃は最初の時点で「半魔」を選べてたはずなんだけどなぁ……


「あ、でも私はてっきり獣人選ぶのかと思ってたなあ! アマオーは犬耳とか猫耳好きじゃん」


「それはそうなんだけど、せっかくのファンタジーだから魔法職をやってみたくてさ……零門はヒューマン?」


「あー……うん。ヒューマン。ヒューマンよ私は……」


「零門様……ちょいちょいちょい……ですのよ」


 ライムが私の髪をグイグイ引っ張る。


「嘘を吐くのはよくありませんのよ」


「で、でもさぁ……!」


 私としては真の姿は隠しておきたいの。青肌黒目で頭に不揃いの角が生えてて全身タトゥーだらけの中二病ガールの姿は!


「でも零門もなかなか思い切った姿してるよね~」


「そう? ……そうだよね、これ」


 「偽装外皮」で種族を偽り、「熊羆の衣装」で全身を覆い隠してるとはいえ、全ての要素が隠せるというわけではない。眼帯は外せないし、赤いメッシュの混じった白髪も据え置きだ。これだけでも正直かなり中二病チックではある。


「眼帯なんて着けてたのいつ振りだっけ? 小学生の時に目を怪我してた時以来だよね?」


「あぁ……そんな頃もあったね」


「それとさ~……ぎゅ~!」


「わっ!?」


「零門様!?」


 いきなりアマオーが私に抱き着いて持ち上げてきた。驚く私とライムに対してアマオーは何か楽しそうだ。


「私の方が背が高いってなんか新鮮~!」


「そりゃ私は中学の頃のサイズだしぃ~……っていうか身長盛ったでしょ!?」


「え! バレた!?」


「厳密には5cmくらい!」


「え~凄~い! なんで分かるの~?」


「それくらい分かるからっ! とにかく下ろして!」


「了解~」


 私を地面へトスンと降ろすアマオー。くっ! 悠然と見下ろしちゃって! 身長と共に態度も増長してるのでは!?


「フ、フンッ! せいぜいゲームの中で見下ろしてたらいいわ! リアルではさんざん見下ろしてあげてるし~!」


「あ~! それ言うのは反則でしょ~!」



――――――――――



「で、ひとまず今日の目標を決めておきたいんだけどどうかな?」


「さんせ~!」

「賛成ですのよ!」


 出席者3名、欠席者1名。現在時刻18:15。自己紹介諸々も終えたところで本題!

 ゲームはダラダラ遊ぶだけでも十分楽しいけど、毎日何かしら目標を立ててやるのが一番! というのが私の持論。もちろん目標に捕らわれすぎてゲームを楽しめなくなったら本末転倒だから程々が前提だけど。


「大体の場合、目的地やレベルが目安だけど、アマオーは何かある?」


「う~ん……さっき街の中で『オルタラシア・バザール』っていうのがやってたんだけど、いろいろ屋台や露店が出てて凄く楽しそうだった! そこに行ってみたい!」


「目標……ですのよ?」


「露店……うっ……頭が……」


 『オルタラシア・バザール』について運営のお知らせをチェックする。どうやら月一の頻度でサーガワンにて行われる、露店市のイベントのようだ。世界各地から商人が集まり、始まりの街(サーガワン)では到底目に掛れないような珍品や先の街の品々を手に入れることが可能だという。

 というか……露店かぁ……偽装外皮が見た目以外にもちゃんと機能しているのか確かめるいい機会かもしれない。それに外套やマントの類はもっと種類を確保しておきたいし……


「後、『剣先の断崖』って所に行きたい!」


「剣先の断崖ですのよ?」


「ずいぶんと具体的な地名が……」


 「剣先の断崖」とはこのゲームのランドマークの一つ。第2の街「ファーステップ」のすぐ近くにある絶景スポットだ。ここからそれほど遠くない位置ではあるので行けなくもないが、どうしてこの場所を? そしてなぜアマオーはこの場所のことを知ってる……?


「実はね……」


 アマオーが私に耳打ちする。その驚愕の内容に私は目を見開く。


「そ、それって今も機能するわけ……!?」


「正直、私も遅くなりすぎちゃったと思うよ。でも期限とかは書かれてないからワンチャンスあるかも!」


「な、何ですのよ? ライムにも聞かせてほしいですのよ~!」


 アマオー――苺花がずっとこのゲームに執着してた理由が少しわかった気がする……でもちょっとこれは一ユーザーの、それも初心者の手には余る大ネタでは……!?


――――――――――


 約15分に及ぶ話し合いの結果以下のように予定がコチラ。


18:30~19:00 街の外でモンスターと戦おう!


19:00~19:30 バザールを楽しもう!


19:30~21:30 夕食&お風呂休憩につき一旦ログアウト


21:30~ 再び合流。「剣先の断崖」を目指そう!



 さあ、本日の冒険の始まりだ!

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