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第捌話 始まりの 街にて友と 合流す

第一章開幕


ここからは登場人物の一人称視点も入ってきます。

 お婆ちゃんは冒険家だった。

 お婆ちゃんが若かった頃、世界が行き詰まる前、海外旅行が今よりずっと楽に行けた時代。お婆ちゃんは世界のあちこちを飛び回って、様々な文化に触れたり、色んな人たちと交流したりしたんだって。


 そんなお婆ちゃんから、世界各地で撮った写真やビデオを見せてもらうのが、小さな頃の私の楽しみだった。お婆ちゃんはたくさんのことを私に教えてくれた。世界の広さを。世界の多彩さを。時には厳しく辛い話もあって、だけどそれ以上に世界は素晴らしくって。そんな世界の話に私は虜にされた。


 私もいつかこんな冒険が出来たらいいなぁって思ってた。そんなことは叶わない時代だって知ったのはおばあちゃんが死んで少し経った後の話。


 そんな時だった。私があの動画に出会ったのは……


==========


 戦士に武闘家、騎士と傭兵、魔法使いに僧侶、音楽家や詩人もあれば、盗賊に道化師等々、様々な冒険者を模った彫像達が、円陣を組むように背中を合わせそれぞれ得物の先から水を噴射する。

 そんな冒険者達に守られるかのように真ん中で祈りを捧げているのは、このゲームのキーパーソン「呼び声の巫女 イア」を模った彫像。


 この場所は始まりの街(サーガワン)有数の名所の一つ「立志の噴水広場」

 ここで私とライムは合流予定の親友を待っていた。


「零門様、ご友人はどのようなお方ですのよ?」


「え? ……んーと……どう言ったらいいかな……?」


 突然の質問に対して言葉に詰まる。


「一言で言ったら……お天気台風?」


「お天気台風……?」


「本人は凄く明るくて楽しい子でさ、そばにいてくれるだけでこっちも元気になれるっていうか……でも、いつも物事の渦中にいてトラブル続きなのがすごく心配でぇ……って何言ってるんだろ私……」


「なるほどですのよ。零門様のご友人なら素敵なお方ですのよ!」


「いや、人の話聞いてた? ……まあ、ライムは気に入ってくれると思うよ」


 もうすぐ約束の18時、そろそろ合流できてもおかしくない時間帯だけど……


「もしかしてここでも迷子になってるんじゃ……」


 苺花は方向音痴だからなぁ~……それも重度の……


「零門様、ライムがご友人をお探しいたしますのよ」


「え? そんなこともできるの!?」


「もちろんですのよ! ご友人のお名前さえ分かればこの街のマップと照合して検索可能ですのよ!」


「それじゃ、お願い。あの子の名前は……」


「わはああぁぁぁ!」


 突然響いた奇声。他の人はともかく、私はこの声をよく知っている。本当によぉ~~~く知っている。


 奇声のした方向を見ると、魔法使い用の青いローブに身を包んだピンク色の少女が、興奮しながら噴水広場の像にスクショを連発していた。


「もしかしてあの方が零門様のご友人ですのよ?」


「……一応検索してくれる? 名前は『アマオー』で」


「了解ですのよ! ローディンローディン……出ましたのよ!」


 私の前に表示されるマップのウィンドウ。私を示す青い大きな丸印の近くには、他のプレイヤーを示す赤い丸印は一つしかない。赤丸をタッチすると「アマオー」というプレイヤー名が表示される。ビンゴ。


 私はアマオーの元へツカツカと歩み寄り、未だにこちらに気づく様子のない彼女の目を背後から塞いだ。


「ここは公共の場所ですよー。他のお客様もいますのでお静かにお願いしまーす」


「んあっ! ご、ごめんなさい……というかその声柚葉だよね? いつもより少し高めだけど柚葉だよね!」


「コラ。現実(リアル)の名前はここじゃ出さないのがマナーでしょうが。幸い他の人は見当たらないけどさ……」


「あはは……そうでしたぁ。現実の友達とオンラインゲームなんて初めてだからつい……」


 私の手を振り解き、振り向きざまに手を合わせながら舌をペロリ。慣れ親しんでいて、なおかつナメ腐ってるともとられかねない謝意の示し方。間違いなくあの子が私にやることだ。

 

「はぁ……昼ぶりだね。改めてよろしく。アマオー」


「こちらこそよろしく! ……えーと……『ぜろもん』……?」


「……『れもん』って読むの」


 サーガワン全域に18時を告げる鐘の音が鳴り響いた。

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