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第九十八話:海を凍らせる


 ヨハンと家臣団は国境線を定めるのに二週間掛かったが、それもヒルダが

参加して三日で終わり、意気揚々と帰国してきた。


「ノア様、かなり譲歩してもらいました。やはりバベルを譲った事で相手の

機嫌も良かったようです」


「一千万都市を譲ったのよ。当たり前ね」

「今頃は王城暮らしだったのに」

「一人で十部屋は貰えましたね」


「それは置いておいて。西はマーチの街と南西部のハーグの街の中間点を

国境線として、中央はラインを結ぶ線で東は大きく相手が譲歩して

キングダムの旧王都まで差し出してきました」


「若様、キングダムの旧王都までだと戦闘機が届きませんね」

「兄貴、面倒なオーガス王国との国境線を任されたんじゃないんですか?」


「北西に王都があると確かに南東部が距離があるわね」

   

「その代わり、獣人を嫌う人間は引き取って頂きました」

          

「若、イシュタル地方には既にトラクターを送ってあります。今月の

下旬から小麦の種まきを開始しましょう」

「クラウディアの周辺は来年ですね」


「西のマーチ周辺も来年に期待といった所ですね」

    

「ノア様、今年の麦の収穫は本国で小麦九千五百万トンと大麦二千万トンです

それに加えて米も本国とガイア大陸の二カ所で収穫出来るので

本国二億人、ミラン七億三千万、ガイアの四億二千万を合わせても

なんとかなります」


「いけないんだ、ヒルダ、ジュノー大陸の新領土が抜けてるわよ」

 

「そうだぞ、病み上がりのレンに任せないで数えようよ」

「嫌な事から目を離したい気持ちは解るわ」


「兄貴、一体何人くらいいるんでしょうね?」

「全盛期で四十億以上だったからな。相当減ってはいるだろう」

「ガイア大陸に八千万も移動しましたしね」


「この二年で三千万程度は死にましたかね」

「ミカエル王国はジュノー大陸で二十億六千万と言っていますね」


「そうすると、五千万死んだとして……新領土は十八億人くらいですか?」

「やっぱり、バベルを譲った影響は大きいわね」


「それと獣人差別の人間も南に行ったからな」

「領土はジュノー大陸の六割程度で人口が二十億程度か……」

      

「妥当な線だけど、本当に随分と死んだものね」

「うちも五千人以上死んだからな」

「ミカエルは二百万以上死んだのよね」


 航空機の威力が戦死者の差のようだな。

 

  

「民間人の死者が多かったな。ほんとに特攻なんて戦法は封印するべきだ」

「ミカエル王国も大型飛行艇はもう作らないと言っていますしね」

「今、飛行艇が現れたら南部はパニックになるからだろう」

   

   

 アルタイルがキングダムを下してからキグナスを西へ追いやって、そこを

バルバロッサが攻め込んでアルタイルを滅ぼして、そこを俺と

アデルが滅ぼした訳か。皇帝様と一緒に地獄巡りツアー確定だな。


 

「ノア様、我らの流通拠点はどこに置きますか?」

「そうだな、クラウディアとサウスベルの中間に盆地があっただろう

あそこに拠点を置くか?」


「湖の左下ですね」

「エクレールからだと六千キロ程度ですね」

「旧キングダムの王都からだと五千キロ程度ですよ」

                   

「ラウス地方からも五千キロ程度ですね」

「アレシアまでは三千キロですか。良いかも知れません」

  

「旧キングダムの王都はアルタイル先王陛下の名前を取って

キングの街としようじゃないか」


「語呂合わせ的には丁度いいですね」

「それで流通拠点の都市名は?」

    

「そうだな、……衛星にちなんでサテライトでいいだろう」

「サテライト行き特急列車は……悪くないですね」


 

「街の規模は将来を見越して大きく作るが豪華な作りにする気は無い

東に向かって川が流れているし流通拠点としてのみ発展してもらおう」

    

「王都には良い場所なんですけどね」

「私は港街で魚を毎日食べたいよ」

「輸送機で運べますよ」

  


「ヤン、ガイア大陸があるんだ。あまり東へは行けないぞ」

「そうよ、それにノルト大陸はただの貿易相手国よ。油断は出来ないわ」


「しかし、こうなるとノルトって邪魔ですね」

「そうですね、ノルトで獲れるカニや昆布は美味いですが

離れていますがミランでも獲れますしね」


「製油施設も八割がミランに移りましたしね」

「ノルト大陸とは時間を掛けて付き合っていこう。ほとんど戻ってきたし

良し、陸海空の三軍は二交代制で今日から一ヶ月は休暇としよう」


「若、わたしも休暇が欲しいです」

「ニコは十一月になったらまとめて消化してくれ」

   


 

 世の中、そう甘くはないようで一週間後にハリケーンがガイア大陸の南側を

散々に荒らし回った後に勢力を保ったまま東海上に抜けた。


「本当にアイスストーム弾を使う羽目になるとはな」

「このまま上陸したら作物の半分はダメになりますよ」

     

「三型戦闘機に二発、三型攻撃機に四発搭載して発進するぞ」

「三型も有終の美を飾れて本望でしょう」


 

 翌日には指定海域へ到着。


「こんな何もない所に撃ち込むんですか?」

「全ての機体の位置情報は記録してある。第一中隊から第四中隊は

目標地点へ集結せよ。発射確認後に第五から第八中隊は続けて発射せよ」


    

 三型戦闘機八百に三型攻撃機四百で三千二百発と膨大だが

フレア弾にしろアイスストーム弾にしろ、爆薬に相当する部分は

魔法師がいて時間さえあれば幾らでも作れる

火薬の方が多く金がかかるくらいだ。


 

 二十分で全機がミサイルを所定の位置に撃ち込んで作戦終了だ。

         

「海が凍っちゃったわね」

「トムが文句を言ってきそうだな」

「いや、最近は海運のミッキーの方がうるさいぞ」


「これで本当に収まるのかしら?」

「技術者のいう事を信じるしかないだろう」

「そうそう、俺達にはこれ以上は何も出来ないし」


「全機、撤収だ。帰った順に休暇の続きだ!」


「「「おおおっぉぉぉ」」」


            

 終わったか、俺も休暇だな。


「兄貴、どこに行きましょうか?」

「夏なのにちょっと冷えるわね」

  

「定番の満腹亭にしますか?」

「今日は穴場のステーキハウスを見つけたんですよ。そこに行きませんか?」

 

「コンラートのお勧めか? 行ってみるか」


 

 いつもの四人組で今日も行く。


「空港まで五キロもないじゃない」

「空軍に人気の店なんですよ。今年入ってきたミランの移民が

開いた店なんですが、開店二週間で既に大評判ですよ」

    

「何に致しますか?」


「牛ヒレステーキの四百グラムとDセットで僕はパンで

三人はやはりご飯ですよね」

   

「「「当たり前」」」


「米の収穫前くらいパンにすればいいじゃないですか?」

「もうガイアの米が出回っているんだよ」

   

「毎日食べても無くならないのよね」

「小麦は満腹亭の為に残しておくぜ」


「冬はピザもいいしな」

「コンラートも米の消費に貢献しろよ」


「サン王国とオーガス王国では二食取るのがやっとだっていうのに    

我々は平和ですね」


「輸送船と輸送列車と輸送車は連日のように大陸中を走り回っているぞ」

「カレーライスには南部米の方が合うんですよね」


「南西部のハーグで積み替えてるから百万トン程度は本国にも来るぞ」

「米を種類ごとに積み替えるとは強欲ですよね」


「牛肉の良いところを食べる方が強欲だろう」

「牛は豚と違って金が掛かるし成長が遅いよな」


「そういえば、最近は馬を見かけないわね」

「ほとんどはミランに行ったな。競走馬を育てるそうだ」

     

「まだ農家では使っている所もありますよ」

「車があるからな、もう馬車には乗れないよな」

      

「フフフ、わたしはシリウスポイントが一万ポイント溜まったわよ」

「畜生、俺はまだ七千ポイントだぞ」

  

「ここはシリウスの系列店ですよ」

「俺が建て替えるよ」

  

「そこは俺がおごると言えないの?」

「シリウスはサテライトに一大拠点を築いたんだろう」

「アレスはクラウディアに拠点を置いたようね」

   

「どっちもどっちだよな」

「ジュノー大陸全体で見るとクラウディアが中心に近いですが

アレス王国で見るとサテライトですからね」


「お話中にご免なさい、四人前おまちどうさま」


「ご飯のセットはスープの代わりに味噌汁とは気が利いてるな」

「サラダに小鉢が三品ついてるのね」

       

「Bセット以降はお替わりし放題ですから」

「この和え物ってタコじゃないか」

「こっちはジャガイモとアスパラの炒め物ね」

「最後は茄子とピーマンの辛味噌炒めだね」


「これでアルタイルパンってあり得ないわね」

 

「そういえば、アルタイルパンの名前の代案募集ってアイラが言ってたな」

「別にアルタイルを滅ぼしたのはバルバロッサ王国だし

このままでもいいんじゃないの」


「うちの幹部はアルタイル出身者が多いから移民からは受けが悪いらしい」

「アルタイル王国で生活をしたことのない人間ね……思いつかないわね」

          

「ダンですらクレア領の途中から居たからな」

「俺達が学院を卒業してから出会った人間ね」


「そう考えると、ほとんどがクレア領か旧エクレールから来た人間ね」

「そう考えると本国の二百人に一人しか昔のエクレールを知らないんだな」


「あの頃は天使アヒル一羽がご馳走だったわね」

「一ヶ月の小遣いが今で言う小金貨五枚程度だったよな」

「ほんとにノアと出会って助かったわ」

 

「本来なら、俺は今頃は学院を退学して地方で行商人をやっていただろうな」

 

「私はヨハンの奥さんだったわよ」

「僕は学院に入学すらしていなかったかな」

          

「まあ、結果良ければ全てよしだ」

 

「「「その通り」」」


 俺はみんなと出会わなければアレクのようになっていたかも知れないな。


お読み頂きありがとうございます。


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