第九十六話:台風対策
先日、感想を頂いた時に96話から手を加えてみると言いましたが
申し訳ありません。私の実力不足のようです。
視認性の悪さの解消を試しましたが、余計に酷い内容になってしまいました。
人気のなろう小説を読んで来年の春頃には多少はお褒め頂けるよう
努力する所存です。ご不満ででしょうがご容赦ください。
アインス工業地帯が始動して三週間
ガイア大陸でも米を主力に穀物の種まきを終えて平和な日々だ。
「ライナの三割程度しか作物を植える事が出来ませんでした。それ以外の
地域でも良くて二割程度です」
「ニコ、戦後一ヶ月でそれだけ出来れば上出来だろう」
「もう明後日には五月ですよ。せめてトウモロコシだけは上手く
育って欲しいものです」
今年は本国のトウモロコシ畑が減る順番だ。休耕地を作らなくても
レイン弾を使えば理論的には五年は大丈夫なんだが、そこは不安があるので
米専業農家以外は定期的に畑を作り直している状態だ。
「まだ本国は大豆の種まきの最中だが
ガイアは既に種まきが終わったのか?」
「ガイア中部から南は平均気温が十度以上は高いですからね。七月は
麦の収穫とトウモロコシの収穫が重なる事になります。まさに地獄ですね」
「ニコもけろっとした顔で恐ろしい事を言うようになったな」
「既に重械用の海底トンネルも来月の中旬には完成する見込みです。六月には
コンバイン軍団をガイア大陸に運び込みます」
「それだと本国の分が足りなくなるぞ」
「本国の分はある程度は残してありますし、最新型の農耕機械軍団の
筆頭株の九式コンバインは価格を抑えた上で燃費も良いと
人気も上々です。裕福な農家は新型に買い換えるでしょう」
アデルの所は六月には収穫だから大変そうだな。ガイア大陸のロアン地方も
来年は六月下旬に収穫か、農家は休む暇もないな。
アデルの所の早期米は真夏に収穫だ。それに比べれば楽か。
「ノア様、アレシアグループの事後処理が完了しました」
結局、三ヶ月もかかったか。
大規模商会の倒産処理と考えれば早く片づいたと思って良いだろう。
「銀行はおとなしくなったか?」
「はい、裏で統合案が出ているようですが表向きは安定しています
それと商会の株式化の第十二番目の改定案を出して来ております」
「アレス銀行に保証金で海金貨千枚以上を納められない商会の株式化は
阻止しなければならない。これを許せば銀行の好き勝手にされるぞ」
「ヒルダも同様の意見ですが、海金貨を八百枚に抑えても良いとも言ってますね」
「自衛部門を持たない大商会の株式化は無理だな」
「しかし、かなりの税収になりますが」
「フレッド、ジュノー大陸の半分とは未だに戦争中だぞ。ここで内部に
火種を抱える余裕はないな」
投資に専念するには戦争をなくしてからにして欲しいものだ。北のノルトに
南の大半を占拠しているバルバロッサ帝国がどうにかならないと
株価が暴落したらどれだけの衝撃が経済に影響を与えるか考えたくもない。
今日は久々に魔法研究所の魔道部門の見学だ。
「見せたいという自信作はこれか?」
「はい、九式ハリケーン減退機です。本国とライナ地方はハリケーンの
コース圏外ですがロアン地方を手に入れた以上はハリケーン対策は必須です」
「それでどうするんだ?」
「トルネード弾の投入も考えましたが、このアイスストーム弾を大規模に
海面に撃ち込んで海面温度を二十六度以下に急激に下げる事で威力を
削ぐことが理論的に可能となりました」
「これを何台使うんだ?」
「このアイスストーム弾は八型戦闘機に四発積めて、攻撃機には九発積めます
ハリケーンは通常はガイア大陸南部を荒らし回って一度東部海上に
抜けてからロアンに再上陸して北西に抜けて勢力を弱めますが
七百発を一気に海上に抜けたハリケーンの通り道に撃ち込み海面温度を
急激に下げます」
「七百発か……爆撃機ではダメなのか?」
「風の強い中で目標地点に正確に撃ち込む必要があるのでロケット弾が
有効です。投下では三倍以上の弾頭が必要になると思われます」
「まあ、仕方ないか」
「ロアンまでやってくるハリケーンは毎年二個程度です
徹底的にやってやりますよ」
八型は使いたくないし、今年の九月は三型の最後の晴れ舞台としてやるか。
五月十日には第一トンネルが、そして五月二十日には第二トンネルが完成
これでガイア大陸とは橋を合わせて四本の移動ルートが確保出来た。
「去年から工事を進めておいた甲斐がありました。これで橋は一般に開放して
第一トンネルを鉄道と軍隊用に第二トンネルを
主に重機などの重量のある車両を優先して使用させます」
「ミラン大陸とガイア大陸を繋ぐトンネルの完成は?」
「九月頃には完成するという見込みです」
「随分と曖昧だな」
「ガイアでの都市建設の作業と収穫作業にどの程度の人間を必要とするか
分からないのが現状です。遅くとも十月下旬には完成するでしょう」
ミカエル王国は収穫期に入るからもっと大変か。
「今年は雨が多いわね」
「南の方は大雨らしいよ」
「雨が続くと輸送船の建造計画が遅れますね」
「雨は適度に降ってくれるのが有り難いな」
今日はサーシャちゃんの仕事の見学という名の休養だ。
「サーシャちゃん、もっと食べなよ」
「そうよ、八才ならあと十センチは身長が欲しいわね」
「お母さんも背が低いですし諦めました」
「諦めちゃうの?」
「飛行士や整備士は体が小さい方が有利だと聞いていますよ」
「確かに小さい方が有利だな
空軍を目指すなら視力だけは落とさないようにしないといけないぞ」
やはり人気は技術職か。
「大丈夫です。視力はクラスでも上から二番目ですから」
「そうか、サーシャちゃんも今年で学院の三年生か?」
「祝日学院の方ですよ。でも既に単位の取得は終わってます」
「今の言葉をどこかの五男坊に聞かせてやりたいよ」
「ほんとね、どこかの弟は出来が悪かったわね」
「俺はコンラートとは僅差だったんだぞ」
「ヤン、僕を巻き込まないでよ」
「サーシャちゃん、まだ学院ポイントってあるの?」
「ありますよ、家のお手伝いを四時間以上を十日で十ポイントです」
「形は変わったがまだあるんだな」
「大学院へは進むのかしら?」
「お母さんが賛成でお父さんが反対だって」
「金ならサキに出させろよ」
「そうだぞ。あれでも長官だからな」
「お父さんは結婚して幸せになれって言うの」
ジュノー大陸は元々、女性の出産を国を挙げて奨励してきたが
俺の国は平和な事もあって妊婦の低年齢化に拍車がかかっているからな。
「これはノア兄のせいね」
「兄貴、罪な男ですぜ」
「若様の政策の効果がこんな小さな子に伸びているとは」
「子供の将来に国は責任を持てないんだ
両親のいる子供の将来は家族間で決めて貰うしかないぞ」
「サキも長官になって三年目だろう。もう仕事にも慣れただろうし
学院見学でもさせて勉強をする所でも見せてやったらどうだ?」
「そうよね、女性を出産の道具と考える時代は古いのよ」
「サキお兄ちゃんに言ってみる」
そして七月。
ガイアでの麦の収穫報告が来た。
「ノア様、まだ収穫中ですが、小麦百万トンに大麦が二百万トン程度に
トウモロコシが五千万トン以上ですね」
「作付面積を考えればトウモロコシは上々だけど麦は酷いね
三億人居たら一ヶ月で無くなるね」
「これでも雨の多かったバルバロッサ帝国に比べればマシな方かと存じます」
最後の皇帝陛下様はどんな心境なんだろう。
その翌日にバルバロッサ軍が動いたと報告が来た。
「バルバロッサが遂に動いたか?」
「はい、今年の麦の収穫高が低かったのが原因のようです」
「若様、空軍の偵察では南に四十万で我々に五十万の兵が向かっている模様です」
「我々に高い評価をして頂いてありがたいが、……敵の航空戦力は?」
「飛行艇が六百程度に三型と同等レベルの航空機が八百以上という事です」
帝国の国力を注ぎ込めば一年もしない間に飛行艇を六百以上を
作れるという事か。これが戦闘機だったら一万機を超えていたな。
「高評価の原因を聞いても良いかな?」
「粗大ごみの首一つに小麦二十万トンをポンと差し出した
支援物資の一件が原因のようです」
「亡き皇帝様の首を粗大ゴミ扱いとは酷いな」
「敵はそうは思わなかったようですね。航空戦力は北の方が多いですよ」
「揃えてきましたね、全軍で北進されてたらやばかったな」
「敵はどうして二正面作戦を採ったのかしら?」
「バルバロッサは大量の奴隷を使って帝都バベルを完成させましたが
内情は火の車です。今年中に北と南を抑えつけないと皇帝の権威の失墜と
不穏分子による大規模の反乱を恐れた結果と思われます」
「帝国も大変なのね」
「帝国の食糧難はそれほど深刻だと言う事ですよ」
「まずは飛行艇を叩かないと不味いな」
「ヨハン、うちの戦闘機の数は?」
「三型戦闘機が千機に七型五十機に八型が千六百機あります」
「戦闘大隊で十三か、八型千二百機で敵の航空機を狙って
残りで硬い大型飛行艇部隊を撃ち落としに掛かるか」
「それで手配致しましょう」
こちらには権威なんて物はない。兵力を分散してくれたのなら徹底的に
叩くだけだ。
同時侵攻だからアデルに援軍を出してやれないのが悔やまれるな。
翌日の八時には既に準備を終えていた空軍と海軍が待っていた。
「第一、第二、第三戦闘大隊発進」
「偵察部隊六十四機発進せよ」
今年は内政に専念出来ると思っていたが敵の食料がないんじゃ仕方ない
これなら五月にこっちから攻め込めば良かったな。
敵には八型を正確に見た人間はいなかったようで八型と三型の対決は
当然の結果だが八型の圧勝に終わった。
七型を中心にした偵察部隊もしっかりと飛行艇部隊を発見してくれたので
飛行艇以外の航空機は最初の三日間でその九割を壊滅させる事が出来た。
しかし、一度見つけた飛行艇部隊も二日後の夜に見失ってしまった。どこに
行ったんだ、敵の大型飛行艇部隊は?
お読み頂きありがとうございます。
小説をキンダルで読もうと思っておりましたら、なんと電子書籍化サイトに
アクセス出来ない事態になっておりました。
このサイトが再開しないとなると、なろうを愛するキンダルユーザー辛い年明けに
なりそうで非常に寂しいです。