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第九十五話:セーラの旅立ち


 二月二十八日にトレミー帝国が降伏したが、すぐに電撃作戦で三月三日には

我らがトレミーからキグナス帝国軍を追いだして、現在ロアンに

向けて侵攻中だ。


「なんで陸軍が百万以上も上陸したんだ?」

「サンドリア湖からの難民の一件で良識のある人間の受け入れを決定したのを

覚えていらっしゃいますか?」

  

「そんな事を言った気もするな」

「それで給料以外にボーナスが黒金貨一枚で食費は陸軍持ちという事で、

応募が殺到してサンドリアから輸送船でガイア大陸へ殺到した次第です」


 ボーナス怖いわ、難民にとっては衣食住完備で

安定した給料は魅力的だったか。


「現在の状況は?」

「既に八型はほとんどが帰還しており

五十機の七型と残存する三型が有終の美を飾るべく

ロアンを果敢に攻め立てています。ロアンの王都も

あと三日持てば良い方かと思われます」


 この戦いで三型も現役からは姿を消すのか。

 トレミーもロアンも弱ったところを我々が襲撃しているので

住民に対しては非常に心苦しいが仕方ないだろう。

  


「ミカエル王国の反応は?」

「北部と南部は領土の大きさではほぼ同じなので中央の砂漠もアレスの

管轄下でいいので南部の支配権は頂きたいと申しております」

         

「管理するのも面倒だ。砂漠の中間地点を国境線としよう」


「わかりました。それでは輸送船にトラクターを積み込んで畑作業に入ります

ガイアの民は食糧を分けてくれるなら死に物狂いで働くと申しております」


「そんなにキツかったのか?」

「はい、長い戦争でしたからね。明日食べる食糧にも困る有様です」

「レイン弾を使って一気に開発をしよう。輸送船も倍増するぞ」

 

 世界線が変わってもガイア大陸は大変だったんだな。


 

 

 三月十日にはロアンを実質的に支配していたキグナス帝国も降伏して

皇帝陛下の希望で小麦二十万トンをつけてバベルに送った。


 バルバロッサ王国はバルバロッサ帝国と名前を変えて

懲りずにラインの南に都市バベルを作っていた。


 この皇帝は奴隷を手に入れた段階でバベル遷都は決定事項だったらしい

この辺りは神様でも修正出来ない問題なんだろう。


 出来ればレールの幅はアルタイル仕様にしておいて欲しいものだ。


「皇帝がジュノー大陸で死にたいと言うとは思っていませんでした」

「わたしはアルタイルで死にたいとは思わないだろうけどな」


 

「ノア様、臨時で二兆アルも出す方が大変です。アレシアグループが

倒産してから一ヶ月しか経ってないんですよ」

             

「ヒルダ、悪いが何とか工面してくれ」

「ヒルダ、がんばれ」

「ヒルダなら出来るわ」


「まあ、ノア様がアレス銀行に融資した分を回しましょう

その代わり陸軍には治安警備を徹底して頂きます」


「若様、アレス航空とシリウス航空が新規路線に意欲を見せております」

「なんで空軍にその話が行くんだ」

「国土交通省は未だにアレシアグループ傘下のバスと海運関連で

手が一杯のようですね」        


 ジュノー大陸より先にガイア大陸を横断する航空網か。

 

「内務にもアレス鉄道とシリウス鉄道の路線案が来ていますが

既にガイア大陸の南西部まで路線が描かれている状態ですよ」

  

「リキには国内の処理を任せて空軍と内務で話を詰めて良いぞ」

  

こうなると海運業も乗り出すか?

 当面はジュノー大陸の西側の安定次第だが。


 


 そして家に戻ってくればアリスが家族を集めてくれと言ってきた。

 

「お母様、わたしケインと結婚したいの?」


 家ではアリスが遂に結婚話を持ってきた。

 

「ケインさんというと工房責任者のダンさんの息子さんね?」

「そうよ、兄さんと同じ年よ」

  

「アリス、妊娠しているんでしょう?」

「そ、それは……」


「仕方ないわね。ダンさんには迷惑をかけちゃダメよ」

「うん、がんばるわ」


 最後はアリスだったか。これで弟も妹も全て結婚だな。


  

   

今日は会議か、実に面倒だ。


「それでは海軍及び海運省の会議を始めたいと思います」

「今日の議題は?」


「新型船の大型化です。現在の輸送船は積み荷を約五百トンしか積めません

十万トン以上の空母を建造する技術があるのです

巡洋艦並みの輸送船に規格を切り替えるべきだと思います」


「確かに排水量は十万トンを超えるが純トン数はもっと低いぞ」

「エンジンの大きさが影響するわね」

「それに穀物は艦載機みたいに飛行甲板に積めないわよ」


「我々は現在の米五十キロの袋を十万個輸送出来る船を

建造したいと思っております」

  

「それなら軽巡程度の船で出来るんじゃない」

    

「ボートや漁船は別ですが、輸送船は同じ大きさにして頂けないと

港が混乱するのは必須です」


「それなら原油を運んでくる四万トン級に統一すればいいんじゃないか?」

  

「主要港なら積み替えが出来るけど小さい港じゃ四万トンは無理ね」

「トム、今の海軍の標準的な大きさは?」


「そうですね、満載排水量で二万トンと一万トンの二タイプが一般的ですね」

 

「一万ね。……そうなると基準排水量で八千トン程度かしら?」

「いつも満載は怖いよな。燃費も悪そうだ」


「そうですね、一概には言えませんがその程度でしょうか」


「それじゃ基準排水量八千トンの輸送船でいいだろう」


 五千トンの米なら積めるだろう。

              

「今ある輸送船はどうするの?」

「必要数を残して売りましょう?」

「そうですね、川や湖では必要ですがそれ以外の分は売れますね」

「帝国は食糧はないけど金は余っているようだしな」


「民間に売りつけてみて残ったのを売ってみよう」


     

 軍用はガスタービンエンジンで民間用は低燃費で安い重油で済む

ディーゼル二サイクルエンジンと決まった。



 二週間後には八割以上が商会に売れてしまったようだ。

    

「三割値引きしましたら凄い売れ行きです。これなら新型への移行の

建造費の心配も問題ありませんね」


「五割引きでも良かったんだぞ」

「そんなに値引きしては何かあると勘ぐられます。『新領土獲得記念』として

三割引き程度が妥当なんですよ。アデルにも千五百隻も売れました」


「金があるんだな」


「金を持って戦場には行けませんからね。金と食糧と工房を手に入れて

ミハイル王国は一人勝ちですよ」

  

「工房があるなら自国生産出来るだろう?」

「何でも本国だけでも人口が十五億以上いるそうで生産が追いつかないそうです」

        

 アデルも十五億を超す国民を抱える大国の王様か? 問題は

国内に入れた貴族だよな。未だに貴族制度を取っているからな。 



 

「ノア様、これが新大陸の移民案です」

  

財務のヒルダが移民案を持ってくるのは不思議だが、問題ないだろう。

 

「ミラン大陸の人間を本国に一千万受け入れて逆にバルバロッサ領から来た

難民をガイアに送るのか?」

「はい、難民は既に一千五百万を超えております。これを新大陸に送り

勤勉なミランの人間を本国に置く方が理にかなっていると思われます」

  

「どうせ本国からもミランからも新領土へ渡る人間は出てくるんだろう?」

「そうですね、ガイアは元々は豊かな土地ですから、土地を

持っていない人間には魅力的でしょう」


     

「まあいい、それとシリウスグループとアレスグループの新領土計画書か?」

「鉄道、航空、海運を軸にこの二社が真っ先に名乗りを上げてきました」


「もうアレシアグループのような不祥事は許されないぞ」

「両者とも保証金を三倍積んできており非常に意欲的です

アレスは長距離路線、シリウスは国内路線を重点的に希望と

棲み分けが出来ているのも嬉しい誤算です」

    

 完全にリキの国土交通の分野だが未だにアレシアグループの処理が

終わっていないし、これも仕方ないか。


「わかった、まずはこの二社にやらせてみよう」

   



 そして四月一日。

 今日はガイア大陸北部のアレス王国への編入式典とアリスと

ダンの息子のケインの披露宴だ。 


 ダンは獣人の実質的なトップで給料も年間で海金貨四十枚で諸経費は

工房費用から出せるという破格待遇だ。ケインも自動車部門の責任者だ。

 この獣人の息子の祝いに参加出来ないと二割以上の住民がアデルの所へ

行ったらしいがそれこそ大歓迎だ。

   


 

「それでは本日よりガイア大陸の北部をアレス王国へ編入をここに認める

諸君、飲んで食べ尽くせ。三日間のパーティの開始だ」

  

「「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉ」」」」」」


 前の世界線では出席者は猫が三匹だけだったからな。それを考えると

かなり華やかな式典だ。

  

 まだ種まきの季節だが収穫後には自分達で

宴会が開けると知ってもらう良い機会でもあるな。


  

「ノア様、旧ライナ王国領は平野部が多く土地も素晴らしい。ここを

手に入れただけでもガイア大陸に進出した

甲斐があるというものです」

 

「兄貴、ライナは国の直轄地にするとして、二割ほど

出て行ったみたいですが、それでもまだ三億以上いるけど、これを

どうします?」

  

「繊細な人口はフレッドに調査して貰うとして、ミランと本国から来た

人間を積極的にライナに配置してそれ以外はヨハン達に任せる」 


「ニコを中心に長官職の間で相談してみましょう」

  


 式典では数千名の人間が動けなくなるまで徹夜で飲み明かしたらしいが

それも平和の証らしく女性陣が積極的に介抱しているようだ。

 これで当分の間は内政に専念出来そうだ。



 そして一週間後にはセーラ達技術班がミラン大陸へ出発だ。

   

『アレス航空百一便アインス行き直行便は二十六番ゲートへどうぞ

ドライ行き直行便は十分後に二十九番ゲートです、お客様はお急ぎ下さい……』


 我が国の伝統の駆け込み乗車は空港においても健在で

発進二分前まで搭乗受付をする強きだ。 


「セーラ、アインス工業地帯はアレス王国第二の工業地帯となるだろう

自動車部門も忙しいだろうが体には気をつけろよ」


「兄さん、分かってますよ。飛行機で半日の距離ですよ心配無用です」

「セーラ、本当に体には気をつけてね」

「怪我なんてしたら承知しないんだから」

  


「お母様もアリスも心配しすぎです。ロバートと家族も一緒ですし

技術者だけで五万人も移民するんですよ。この計画は絶対に成功させます」

       

 ミラン大陸は中央をミランとして、南から時計回りにドイツ語から

名前を取ってアインス、ツヴァイ、ドライ、フィーアだ。

   

 これ以上、豊かな本国を工業地帯に割くのは愚策という意見が

大半を占めた結果、海運を中心に拠点をミラン大陸の

南東部に移転する事になった。


「それじゃ気をつけてね」

「お母様と兄さんとアリスもお元気で」


 

 航空機産業はアレス王国の宝だからアリスは大丈夫として、原油の精製から

造船と自動車産業はアインスに移行する事になるな。


 こうなると北のノルト大陸の価値が無くなってくるな。

お読み頂きありがとうございます。


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