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第九十三話:みんな一月生まれ


 アデルがジュノー大陸の南部を平定中に俺はうちとアデルの所へ向かう

航空機の撃墜と装甲車両の撃破に努めている。


 皇帝陛下はじり貧だと自覚したらしく包囲を辞めて全軍でアレシアに

突撃してアレシアは蟻の巣をつついたような状態だ。


「ルッツ型は喜んでもらえたか?」

「はい、アデルの所は三型が最新なので使い道は有り余るほどあるそうです」


「それは良かった」

「お礼としてブラックペッパーを頂きました」


「うちは二千万人を想定してブラックペッパー作りを始めたから

まだ少々足りないから有り難い」

「それも二年後には自給出来るようになるでしょう」

 

「そうだな」


「アレシアは明日か明後日にも落ちそうです。兵の士気が違いますね」

「精鋭五十万を別大陸に残したまま負けるとは哀れだな」


「その五十万の兵もアルタイル陥落を条件に四割がトレミー帝国の

正規兵に組み込まれるようです」

「残りの六割は?」

「四割の正規兵の編入の見返りに三百隻の輸送船を提供するそうです」

「沈みそうだな」


「色々な意味で沈むでしょう。これならルッツ型でも十分役に立ちますね」

「船を提供した段階でトレミーの役目は終わった事になるのか」


 追っていったキグナス帝国の傘下に入らないだけマシか。


 

 

 そして三日後の夕方にアレシア陥落とアルタイルの全面降伏が

大陸に伝えられた。


 翌日の朝にバルバロッサ帝国の建国がアレシアで行われた

その僅か一時間後にラジオを使ってアデルが南にミハイル王国建国を宣言した」


  

「バル帝国にミハイル王国ですか、遂に長い伝統を誇った

国々は消滅したという事ですね」

       

「アルタイルの王族は全員が公開処刑だ。フランツ王子を初め

残念だがエリザベス元王女も含まれる」


 

 アデル、怯えて暮らさなくて良くなる代償がこれか。

 


「ノア様、我らは南下作戦は採らないんですか?」

「三軍の数を順番に言って見ろ」


「海軍が六十二万に空軍が二十四万と陸軍が……十二万です」

「何故、陸軍は空軍の半分しか居ないんだ。普通は逆だろう」

 

「でも安い、遅い、不味いの三拍子揃ってますからね」

「ヤン、安いは判るが遅いと不味いとは何の意味だ?」


「動くのが遅くて食事が不味いんですよ

海軍も空軍も食糧廃棄率はほとんどゼロに近いですが陸軍は三割近いですよ」


「重装甲車以外は空母より速いぞ」

「海は広いしロマンがあるから問題ないそうです」

「海軍は魚も美味いと言ってますね」

「ロマンを求めるなら空軍ですね。女性も多いですし」


「やっぱり女性の勧誘が遅れた陸軍に未来はないか」

「そうだよな」

    

「まあいい、そういう訳で敵を叩く戦力は何とかなるが

占領する戦力が無いというのが現状だ。南下は出来ないな」

                

「海軍を陸軍に編制し直せば?」

「ロマンがないんだろう。それに海と陸では全然違う」


「バルバロッサとアルタイルの諸侯軍はどうするんでしょうね?」

「どっちに着くか思案中だろうな」

「ガイアの孤島にいるのを除いてもアルタイルでも二十万以上居ますからね」

「俺だったら今更アレシアには行けないだろうな」

「両軍ともに命が掛かっているから判らないぞ」


 日和見していた諸侯軍なんて抱えるところがあるのか?


                     

季節は十二月の末日。


「赤ちゃんは来月みたいだな」

「ええ、お腹を蹴って来るのよ」


 治療施設を改めて病院としたが、そこでは毎日のように赤ちゃん

ラッシュが続き、新生児が量産されているが十二月が誕生日という人間に

会う確率は宝くじで二等を当てるより難しいと言われるほど少ない。


 どこの親も産まれてすぐに一才にされるのが嫌なんだろう。    


「アリスは今日も外泊か?」

「お友達のところみたいよ。性別までは判らないけど」

「アリスも八型を作り終えて燃え尽きたとか言ってたからな」


「ノア、わたし来年はアデル達の顔を見に行ってみて良いかしら?」

「母さんがミハイル王国訪問ですか?」


「そうね、文部長官ともなると訪問となってしまうわね」

「ノーラ姉さんとソフィー姉さんもいますし問題無いでしょう」

       

「コンラートに頼んで空軍機で送って貰えるように頼んでおきますね」

「リリーナ、それは助かるわ」

  

 三型爆撃機で行ってもらって

護衛に戦闘機を一個中隊もつければいいだろう。


 

 そしてアルタイル歴が終わって新しくアレス歴九年の新年だ。

 俺も二十三才だ。

 

帰郷しなかった人間だけを集めての宴会ならぬ新年会だ。


「若様、飲んでますか?」

「ただですからどんどん飲みましょうよ」


「お前達は実家に顔を出さなくて良いのか?」

「俺なんて五男ですからね、どっちでもいいそうです」

「わたしもいい顔されませんね」


 この世界線ではシャルの父親とオーブ家は俺の覚醒前と言う事で

変革前と同様に死亡しているが他の人間の家族は基本的には生きている。


「ヨハンも今日は荒れてるな」

「家族と揉めたみたいですよ」


「そうか、私も天使アヒルでも食べるかな」

「え、天使アヒルがあるんですか?」

「左の奥にあるぞ」

            

「「待ってろ、天使アヒル」」

それほど若い天使アヒルじゃないが酔っ払っていれば問題ないだろう。


 

 変革前なら今年は西に向かって新大陸に渡り

オーガス王国打倒の兵を挙げるところだったんだな。


   

 うちは正月を祝うわけではないが三日間はお休みで四日目に母さんが

ミハイル王国に特使として正式に訪問する事になった。


「おはようございます。新年会ではお見苦しい所を

お見せして申し訳ありません」

「気にするな、何かあったのか?」


「色々ありましたが、あの方達とはここへ出社する前に一個人として内務省に

絶縁届を提出してきました。本日以降は他人という事でお願いします」

      

「わかった」


「東のオーガス王国はサントス王国を完全吸収して軍を南下させており

南大陸のサン王国も来月にはユニコーン王国を吸収して東へ戦力を

移動する見込みです。我らもどちらに味方するか決断する時です」


「ヨハンならどちらに味方する?」

「やはり人口で二倍以上のオーガスでしょうか」


 オーガスは航空機を主力にしているし、自然とそういう結論になるよな。

   

「わかった、ユニコーン王国滅亡の報告が来た時点で南に向かっている

輸送船を引き上げさせよう」

      

「そうですね、今引き上げたら相当な恨みを買いそうです」

 

「西のガイア大陸はどうなってる?」

「既に東部から北部は去年から激戦ですが南部の四カ国も参戦しており

我らも介入する必要があります」


 

 一つ、キグナス帝国が版図を拡大するのを阻止。

 一つ、トレミー帝国のこれ以上の拡大の阻止。

 一つ、民間人の敵意は出来るだけ抑える。


 さてどうするか?

   

「トレミーに部分的な援助が妥当だろうな」

「三型を出す必要がありますね。制空権を奪うだけで良いでしょう」

  

「そうだな、アレス型空母の新型艦が出来るのはいつ頃だ?」

「来月になりますね、それまでは十一空母体制です」


 フリーダム型空母もアレス型に名前を変えている。

 

「それならアレス型の二艦とノア型の一艦を南へ向かわせよう

到着と同時に展開中の空母は帰国させて休暇だな」


「わかりました、ノア型一隻をミランに向かわせて交代も済ませておきます

休暇は二週間程度でいいでしょう」


 そうなると空母が全力で動けるのは二月の中旬になるか。


「こんな所か?」

「忘れておりました、アデルが元バルバロッサ王国の貴族の女性と

結婚したそうです。女性は奴隷落ちしていたそうですよ」

         

「人の恋路に何を言っても始まらないが

政治に口を挟まない女性だといいがな」

 


 そして十日にはリリーナが出産した。


「またまた女の子でした」

「男の子はルーカスとクラウスがいるからな」

   

 一年空いたが、もしかしたら変革を承諾していなければ

ハデス神の依り代となる赤ちゃんが生まれたのかも知れないな。


 俺をどうやって口説いたのか聞いておくべきだったか。


「名前は何がいい?」

「そうですね、マキちゃんの次ですから

Kから始まる名前だと……ケイトちゃんはどうですか?」

   

「ケイトか、悪くない。ケイトにしよう」


 Cで始まったりと色々あるが問題ないだろう。


  

 三日後にリリーナも病院を退院して内務省に登録手続きだ。


「ミーア、旦那様に面会か?」

「違うの、子供の国民登録に来たのよ。この子の誕生日は一月十五日よ」

   

「おいおい、今日は十三日だぞ」

「ミーア、実は十二月の十五日生まれなんでしょう」

  

「ち、違うわよ、一月五日生まれだったのよ。すっかり忘れていたわ」


 こうやって一月生まれが量産されていくのか。


 本来なら職員に頼んでおきたい所だが、国民登録は自分で登録出来ない場合

特に子供は親になる人間の血液が必要なので手間がかかってしまう。


「六時間も待たされたわ」

「私達も五時間以上待たされたぞ」


「二月生まれでも良かったかも知れないわ」

      

 親が海軍などにいると数ヶ月遅れるのは当たり前なので問題はないのだが。


 

 予定だとそろそろ母さんが帰国していいころだな。


お読み頂きありがとうございます。


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