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第九十一話:外務卿解任


 バルバロッサ王国の進撃は止まらず旧ヘンドラー王国の南の工業都市の

ラインまで攻め取られ、今は旧王都のクラウディアとの間で戦闘を

繰り広げている模様だ。


 アデルが領地替えになって本当に良かった。


「遂に我々が研修旅行で遊びに行ったラインまで取られちゃったわね」

「クラウディアも危ないな」

「西からはアデル君が戦線を維持してるんでしょう」


「そのアデル君も陸上兵力は八千もいないみたいだからね」

「ラインハルトを筆頭にした部隊も二万程度なのよね。ヤバくない?」

       

「アレシアには十万以上の守備兵がいるようだから王都は落ちないだろう」

 

「でも敵の総数は七十万以上でしょう」

「ガイア大陸に五十万も上陸させるから悪いんだよな」

「ボンボンの王子さまとしてはかっこいい追撃戦がしたかったんじゃないの?」

 

「国王陛下が直接指揮をすれば持ち直しそうなんだけどな」

「それって王太子を廃嫡するのと変わらないじゃない」


「でも国が滅んだら王太子とか言ってられないぞ」

「ほんとアレスにスパイ送る余裕があるならバルバロッサに送って欲しいわね」


「ヤン、また四十人ほど捕まえたんだろう」

「半分はフレッドが捕まえたんだけどな」


「漁師を買収して密入国してきますからね、捕まえる方も苦労しますよ」

「サンドリア湖からの物資もアルタイル本国にそのまま流れてるみたいだし

アルタイルへの援助を辞めますか?」


「そうね、住民に届かないなら必要無いわね」

「貴族だけ良い物を食べられると思ってるんじゃないか?」


「ノア様、アデルの所には港がありますし

そこだけに送っては如何でしょう?」

      

 前は帝国がバルバロッサに食われたが歴史は繰り返すという事か。

 ラインを取ったという事はバベルも完成する運命なのか?


「わかった。アデルの所にだけ物資を送ろう。東回りとサンドリア湖経由の

物資は現在積み込んでいる分を最後にしよう」


「アデルには月光便で伝えておきますね」

「いや、伝えれば悩むだけだろう。送ってから考えて貰おう」


「そうね、どうせ本国へは送るんだろうし

余り先に教えると眠れなくなっちゃうわよ」


 まだ八型戦闘機は二百程度だ。ゆっくり事を運ばないと。

双発エンジンなので完成に時間がかかるのが痛い。


「みんな考えていても仕方ないし

新しい小麦で打ったラーメンでも食べに行こうぜ」

   

「冷やしなら悪くないわね」

「夏場はあえて辛味噌がいいんだよ」


  

 結局忙しいニコ達も引き連れて満腹亭の本店にお邪魔した。


「ダブルチャーシューを乗せたざるラーメンの大盛りを二人前と

鰹節ご飯の煮卵入りを一つとトリプルチャーシューの辛味噌全部入り

の大盛りを十五人前とライス十個ね」


「はいよ」


「アイラとコリーンは大盛りで大丈夫なのか?」

「忙しいから大丈夫です」


「マリアさんとマルコとヒルダがいれば長官職全員集合だったな」

「ヒルダはお金の計算で大変みたいだよ」


「マルコまで抜けると軍の責任者が居なくなるわね」

「食い終わったら満腹会議だな」


「満腹会議って、一体何を決める会議よ」

    

「おまちどう、熱いから気をつけな」


「しかし、リリーナは経済的なお嫁さんね」

「大銅貨二枚よ」

「リリーナ、『パンが無ければお菓子を食べなさい』って言ってみて?」

「お断りします」


「延びるぞ」



「ふぅ、食ったな」

     

「大盛り無料というのは悪魔のささやきですね」

「チャーハンは割増しだけどね」

「去年はちゃんと取ってたんだけどな」


「昔は食堂もご飯三杯まではお替わり無料だったしね」

「チャーシュー付きだとライス一杯無料もお得感があるよな」

「大銅貨二枚で売って銅貨二枚分を無料なら店は大儲けね」


「チャーシューの原価っていくらかな?」

「店によって異なりますね。一般の豚で一頭が小金貨二枚程度です」

「それじゃ店は大儲けじゃないか」


「ここのチャーシューは肩ロースの用ですし

一頭から取れる肉は四割を超える程度ですから丸ごと買い取れば利益が出る

程度だと思いますよ」


「家でもチャーシューを作りますが手間を考えると外で食べた方がお得ですね」


「それで満腹会議というのは肉の原価の話なの?」

  

「いやいやいや、満腹になった状態で腹を空かせている人間への物資援助を

考えようっていう会議だよ」

「ヤンも言うようになったわね」


「お腹が減ってると同情してしまいますね」

「それで?」


「俺の考えとしてはアデルに十万トン送ってみてだな

半分以上を本国へ回すようなら次の月は半分に減らすのがいいと思う」

             

「アデルの国への忠誠心と野心を天秤にかけると言う訳ね」

 

「まあそうなるな。兄貴の弟だから見捨てる事は出来ないけど

国の言いなりで一生を棒に振るような器の持ち主なら期待は出来ないな」

      

「辺境伯は元々はルッツ様の爵位だものね」

「功績を挙げて家を継いだだけなんだよな」

「若様が独立してしまったのが大きいですね」

「アレクのせいで取り潰しを回避しただけでも上出来とも言えますよ」


「でもキングダムでの功績はラインハルトより上だろう」

「今回も諸侯がガイアに行く中、八千残したのも大きいよな」

「三型で一番多く敵を倒したのもアデルですね」


 

 アデルが南のエンジェル辺り一帯を取ってくれると最高なんだが

気概があるのか不明なんだよな。

                                      

「今、アデルは最前線で戦っているのに航空機を九割以上王都へ帰せと

命令を受けているそうだ」


「それで?」

「アデルの幕僚は怒りが爆発しているようだ。

しかし、本人は何も言わないらしい」

「アデルって三型を千機も持っているのよね」

 

「返していなければな」

「それに旧型を四百機も持ってるぞ」

  

「アルタイルの保有航空戦力の六割よね」

「三型だけを考えれば七割を超えますね」

  

「輸送船四百隻が進路を変えてアデルさんの所に着くのが三日後ですね」

 

「そうね、それで二万トンね、二千隻に今積み込んでいるから

今月中に十万トンになるわね」


「自分の領内の領民を優先させるか本国を優先させるか微妙ね」

「領民と言っても領地替えしたばかりだから愛着はないでしょう」


「いや、アデルを慕ってヘンドラーからかなり着いていったから分からないぞ」


「クラウディアが戦場だからね、かなり無理しないと

どうせ本国には輸送出来ないけどね」


「我々には八型の絶対数が足りていない。アデルの考えに委ねてみよう」



 アデルか、以前はアレクに簡単に殺されてしまったが。この世界線では

俺達以外も戦闘機を保有しているのが厄介だが、軍の上層部は未だに

飛行艇を最前線に投入してくれているので戦闘機と攻撃機の最新技術に

おいては我がアレス王国が二歩程度優位に立っている。

    


       

       

 アレシアでは『イシュタル辺境伯動かず』と噂になっているようで

アデル自身もクラウディアから逃げてきた住民を護衛しながら

西へ移動してしまったらしい。


 

「ハインツ様がフランツ王子に外務卿を解任されたようです」

「イシュタル家の当主が兵力を温存しているからな」


「どちらかと言うとノア様の援助中止に対して怒っているようですよ」

「わたしが本命か、困った物だ」


「アルタイルで数個師団を指揮出来るのは

ランスター将軍くらいしかいませんからね」

「ランスター伯爵か、軍務卿だったよな?」

     

「そうですね。輸送船をガイアに回せと我々に命令してきてますよ」

「ガイアの連中は何やってるんだ?」

     

「港で待機ですね」

 

「正規兵を五十万も遊ばせているのか!!」

「食糧がないそうですよ」


「普通は奪いに行くだろう」

「燃料がない、そして銃弾も僅かだそうです」

「転移魔法と攻撃魔法があるだろう」


「この状況で進んで最前線に行こうという人間はいないみたいです」


 アレクが居なくてもアルタイルは終わる運命なのか?      

いっそ、俺が引導を渡してやるか。それだと前と同じ展開になりそうだな。


「考えていても仕方ない。俺もトウモロコシの収穫でも手伝って

頭をリフレッシュしてくるよ」

「お気をつけて」



 またトラクターで運搬か。

「あんちゃん、一杯になったぞ」

「りょうかいだよ。工房に下ろしに行ってくるよ」


     

「兄貴も四回目の運搬ですか?」

「もう収穫時期も終わりだって言うのによくあるもんだ」

  

「一週間ずつ間隔を空けて種を蒔いているようですね」

 

「二人ともここでしたか?」

「コンラートは麦の種まきの監督だろう」

「空軍の指揮と言って下さいよ」

   

「ルッツ型の調子が悪くて三型を引っ張って来たんですよ」

「ルッツ型もそろそろ引退だな」


「八型の数が揃うまでは頑張って貰わないと」


「お前達、喋ってないで働け!」


 

 それから五往復させられたが、なんとか収穫作業は終わった。


    

「兄貴、腰痛ですよ」

「治癒魔法で治せよ」

   

「体が痛いときに治癒魔法を使うと体力が落ちるんですよ

知らないんですか?」

 

「知ってるよ」


 ヤンに突っ込まれるとは俺も落ちたな。


「兄貴、満腹亭に行く力が湧いてきません……ご武運を」

「今日は自宅で食べるか」


 アデルはどうしてるかな?



お読み頂きありがとうございます。


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