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第八十九話:弟との再会


 歴史改変された世界にも慣れてきた。三月初めに俺達は未発見だった

ノルト大陸と交渉をして若者の受け入れと貿易交渉を開始した。 


 水龍の記憶は書き換えられなかったようで羊を要求されたが仕方ないだろう

ある意味、敵対しなかっただけ良い結果だ。


「ノア様、よく北西の渦の先に大陸があると判りましたね?」

「神様のお告げみたいな物だ」

    

「これで原油の輸送が一層楽になります」

「鉱物資源が山のような国です。精々農作物を高く売りつけましょう」

  

 クロノスは気を利かせたつもりなのかアレス王国の本国の人口は少し減って

七千万人でジュノー大陸全体では大きく増えて四十億人を超える人口だ。


 ミラン大陸には未だに七億四千万いるので移民させろという意味と

戦争が続発しなければこの程度の人口がいたという事を示したいんだろう。 

 知識を持った技術者が減っていない事に関しては

何とお礼を言っていいか分からない程だ。


「バルバロッサ王国とはどうなっている?」

「変わりませんね。あちらもキグナス帝国と停戦協定を結ぶ事は出来ませんし

アルタイルとの二正面作戦も難しいでしょう」


「当分の間はジュノー大陸は四カ国体制のままか」


 あのバベルを作る後の皇帝様とキグナスの皇帝様じゃ手を取り合うのは

難しいと考えて良いか?



 周りは戦争で我が国は平和な状態のままヒンメル地方の反乱も無事鎮圧

侯爵様は何がしたかったのかは不明のままだ。


 神様が俺の政敵を叩いてくれている?


  

「悔しいわ、何であの三型を改良した機体をアレス七型の最新鋭機として

発表しないといけないのかしら?」


「ノア型七型は最新鋭機でしょう。外国人の手前仕方ないわよ」


 アレス王国は多くの外国人の入国を許可しているのでアレス七型は

三型を速度面で少々速くしただけの機体だ。


「悔しいわ、今手がけているノア八型攻撃機も凄いのに発表出来ないなんて」

「アリス、クッキー食べる?」

「頂くわ」

  

「ところで同期にラライラって女性はいるか?」

「いるわよ、年下だけど爆撃機班の副班長よ」

            

 ラライラちゃんもちゃんと存在しているんだな。

セーラは神の計らいか、既にロバート君と結婚していて独立している。


 マルコとは親戚に成れなかったが嫁さんはいるようだし頑張って貰おう。



「若様、トレミー帝国がロアン王国を占領したようです」

「空軍の情報なら確かだろう」


 特攻攻撃がこの世界では無くなったのが救いだな。


「しかし、これで中古兵器の輸出先が無くなりましたね」

「これで無駄に作れなくなるな」

      

「トレミーは暫く休んだらガイア大陸の統一戦を開始するだろう?」

「兄貴の予言ですね」

「確かにその兆しはありますね」

「アルタイルがそれを許すかしら?」


「不味いのか?」

「考えてみなさいよ、今まで放置していたのはアルタイルより小さいからよ

うちみたいな同盟国でも無いのに大きくなられたら大変じゃない」


「面倒ですね、アルタイルがジュノー大陸統一目指すとなれば

今度は我らとも戦争になりますからね」


「理想はアルタイルがキグナス帝国を滅ぼして南下した所で

止まってくれるのが理想だよな」

        

「そう上手くいくと良いんだけどね」


  

   

そして運命の四月四日の前日の午後。


「みんなに伝えておく、明日はわたしは休む。例え帝国いやアルタイルが

攻めて込んできたとしても連絡の必要は無い。各自の判断で行動してくれ」

  

「事故なども同様の扱いで宜しいでしょうか?」

「構わない、その辺はヨハンに一任する」


     

 

今日は爺ちゃんが死んだとしても外へ出ないぞ。


「父さん、友達と遊ぶ約束をしていたのに」

「お父様、私も幼稚園があるの」

「結界を張ってあるから外へは出られないぞ」


「お母様、お菓子を焼いて?」

「いいわ、一日中暇なのも大変よね」

     

『チャンネルアリスです。本日は……「ガチャン」』

 

「今日はニュースを聞くのも禁止だ。音楽でも聴いてなさい」

「「「横暴だ」」」

「「だ――」」

  

  

 午前の間は大丈夫だったか。


「満腹亭には敵わないけれどざるラーメンを作ってみたわ」


 ラーメンを食べれるのは次女のソフィーまでか  

アリアたちには麺が長すぎるようだな。


「アリアとクラウスは菓子パンね」

「「あーい」」

  

「チャーシューが食べられないなんて可愛そうね」

「ソフィー、アリア達はまだ小さいから仕方ないよ」

  

  

 子供達の抵抗は激しかったが何もなく済んで良かった。

 母さんは仕事部屋で缶詰状態だったようだし、アリスは工房に泊まったようだ

リリーナと子供が死ぬ原因というのは何だったんだろうな?



「お父様、外に出られないよ」

 忘れてたな。

    

「今、結界を解こう」

「「行ってきます」」

「いってらっしゃい」


 俺も仕事に行くか。

   


「ノア様、おはようございます。ご無事だったんですね?」

「やはり何かあったのか?」

  

「はい、昨日の朝にキグナス帝国がトレミー帝国に侵攻して

置き土産でしょうか我が国にも工作員によるテロが二十二件発生しました」

  

「死者は?」

「現在も意識不明の者もおりますが三百人以上です」


「礼儀としてお返しを贈らないといけないな」

「アルタイルも同様の仕打ちを受けたようで、本日は上級貴族が

王都アレシアに集まって会議のようです」


 世界線が変わってもキグナスとの戦争は回避出来ないのか?


「仕方ない、ノア型の七型の増産を開始するか?」

「ダンが来月には八型が出来ると言っておりますので

八型が出来るのを待っては如何でしょう?」

        

「それじゃ八型を増産だな」

「わかりました」



 一週間後にはラインハルト君も元気に王国南部から西へ進撃

そして帝都まで航空機だと一時間もかからないアデルも西へ進もうと試みるが

すぐに断念して帝国の北部を叩き始めた。


「ノア様、我が国はトレミーに渡ろうとする戦闘艦を叩いておりますが

キグナスからは毎日百隻以上の輸送船が西へ向かって出ております」


「ガイア大陸に無断で引っ越しでもする気かな?」

「一昨年から麦の出来は悪く、去年は三百万トンも取れなかったようです

本気で引っ越しを考えている可能性はありますね」


 魔王伝説のなくなった今、民間人の大量虐殺はしたくない。

 輸送船にも軍人が乗っているだろうが上陸してから叩くか。


「引き続き戦闘艦と航空機だけ叩いてみてくれ」

「わかりました」


 キグナス帝国も米を作れば一億トン以上作れるはずなんだけどな

イシュタルの加護込みだけど。



 五日後にはアレス王国が輸送船を狙わないというのを理解したのか

軍人も輸送船で逃げ始めた。港には廃棄された戦闘艦が端に避けられている。


 その二日後にアデルがエクレールにやって来た。


「兄上、お久しぶりです」

「久しぶりだな」


 本当に久しぶりだよ。俺としては六年以上会ってないからな。


「南のサウスサンドリアとセリーヌの空港での補給と西部のエクセリオン

の使用許可を受けたくお願いに参りました」

      

 エクセリオンは西のルミエールの更に南の港湾都市だ。


「キグナスを追ってガイア大陸まで遠征するつもりか?」

「陛下の意思でございます」


 きっと『いつまで現役』のシュナイダー内務卿の考えだろう

少々アルタイルがでかくなりすぎるが仕方ないか。

     

「わかった、条件付きでその申し出を受けよう」

「条件とは?」


「アデルの直接指揮下の部隊のみ入国を許そう」

「それでは全軍の二割程度しか補給が出来ません」


「グラン陛下の思惑は判らんが愚かな事をしでかした兵士には厳重な処罰が

必要だ。アデルの直接指揮下以外の部隊にそれを求めるのは無理だろう」


「……そう言われては致し方ありません。イシュタル辺境伯軍の兵のみで

キグナス帝国軍を叩いて見せます」

          

「期待している」


   


 久しぶりに見るアデルは男になったという感じだったな。

       

「宜しかったのですか?

アデルの指揮する航空戦力は僅か四百程度と聞いています」

 

「あのシュナイダーが付いているんだ。戦時特例とか理由をつけて

すぐに増強するだろう」

  

「アデルの持つ航空戦力の増強が狙いですか?」

「アルタイル国内ではアデルの活躍を望まない勢力が多いと聞く

兄としては少しは助け船を出してやらないとな」


「アデルに思いが通じるでしょうか?」

「アデルの器次第だ。お爺さまにはすぐに判るだろう」


 爺ちゃんと婆ちゃんは王都アレシアで今でも外務卿として

現役で働いているようで会議の連続のような日々を送っているそうだ。 


     

 ガイア大陸の最新機種は十四型と同等でキグナス帝国は

ルッツ型に近い性能だ。そしてアルタイルはうちから三型を輸出している

三週間後にはセリーヌとエクセリオンには六百機ずつの三型が集結して

キグナスを徹底的に叩いている状況だ。



「アルタイルの対応が遅かったようですね。既にキグナスの兵士は海を

渡った模様です。一万五千隻の輸送船がガイアの港に浮いております

十往復はしてますから七千五百万以上はガイアへ移った計算です」


「キグナス帝国の人口はどのくらいなんだい?」

「どこの国も正確な数は分からないでしょうが、七億に届かない程度かと」

「十分の一近くも渡ってしまったか。本当にキグナスは国を捨てたんだね」


「東西南北全て敵となっては一番弱そうな所を突破するのは

軍人なら常識ですね」


 それに民間人を混ぜる所があの皇帝の凄いところだ。

    

「こうなると広大な帝国領土の分配で一悶着ありそうだね」

「そうでしょうね」


 バルバロッサ王国は様子見していたようだが

動く機会を逸したといった所か。


 うちもそうだが、ご愁傷様だ。

俺が以前崩壊と言って良いほど蹂躙したガイア大陸へジュノー大陸から

多くの人間が住み移るというのは俺が暴走しないようにという

神の策略だろうか? 

 


お読み頂きありがとうございます。


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