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第八十八話:悪の参謀


 俺も遂に二十二歳になった。飽食に慣れきってしまったのか

小麦の値段は上がり小売りでも五キロで銀貨五枚する始末だ。


「ほんとに困りましたね。米を食べろって言いたいですよ」

   

「あの親父の経営する満腹亭でもラーメンの値段が六割増しだ。人と

いうのは一度覚えた快感はそうそう変えられない物なんだろう」

  

「倉庫の在庫を放出しますか?」

「三月の中旬以降だな」


「ノア様、フリーダムパンの製造を一旦中止したいと思います」

「アイラがそう決めたなら構わないけど職員が混乱しないか?」


「食肉加工の方は順調です。今年から新種の米の加工に入っておりますし

職員の仕事の確保は目処が立っています」


「それなら問題無いよ」


       

「ノア様、別件ですがユニコーン王国の混乱はかなり悪い方向へ進んでおり

国内で親サン王国派が誕生して内と外から攻撃を受けている状態です

もう半年も持たないと思われます」


「ノア型空母二隻を南に展開しよう。南方の中継拠点を我らが占拠しよう」

「わかりました」


 公式発表だけでも人口九億か

そんなにいたら労働力には不足は無いだろうな。


 

 

「若様、バベル米を使ったおしるこは如何ですか?」

「美味そうだな、頂こう」


「甘くて美味しいわよ」


 新種の米というのは餅米の事だったのか。


「ノア兄、映画でも見に行きましょう。『アレシア物語』が上映しているはずよ」

「この忙しい時期に遊んでて良いのか?」


「そこが問題よ。オーガスには三十億以上の人間がいるんでしょう

攻め込めば半分以上を殺す事になるかも知れないのよ

私達にも心の休養が必要よ」


「それもそうだな。行ってみるか」


 戦時においての心の休養とは殺す覚悟と死ぬ覚悟だ。

 勝負の時に躊躇しない為にも今年は心を鍛えるか?


 

「感動したわ」

「最後が良かったですね」

「そうだな」


 アレシア物語ではアデルが生きていて、キングダムとの戦いでの戦功で

うちのお隣さんとして大領土を治めているという架空戦記だった。

 最後に女騎士が死にかける所で国王のアデルが命を賭けて守って

死んでいく所が印象的だった。


 こんな未来も悪くなかったかも知れないな。


  

「あなた、今日はアレス教の神殿で目覚めの儀をして頂けませんか?」

「神殿でやるのか?」

      

「はい、夢に出てきたんです。神殿に行くと良いことがあるそうです」

「まあ、構わないが」


 来年は大陸間の全面戦争だ。

 何億死ぬか判らない戦争だ。たまには神様に祈るのもいいだろう。


              

「アリアとクラウスがどんな加護を持っているか楽しみです」

「そうだな」


     

「女神ヘカテーよ、この者の道を示し給え。血の道を示せ」


     

――――――――――

    

 名前:アリア・フリーダム

 年齢:三歳

 種族性別:人族:女

 所属:フリーダム王国

賞罰:無し


 加護:ヘカテーの加護(伝説級)


――――――――――


 かなりいいじゃないか。アリアも当たりか。

うちの次男はどうかな?

 

「次はクラウスの番よ」

「大丈夫だろう」


  


「女神ヘカテーよ、この者の道を示し給え。血の道を示せ」


     

――――――――――

    

 名前:クラウス・フリーダム

 年齢:三歳

 種族性別:人族:男

 所属:アレス王国

賞罰:無し


 加護:ヘカテーの加護(伝説級)

  :クロノスの加護(神話級)(創造級)

:イシュタルの加護(伝説級)


――――――――――

 

 なんで所属がアレス王国なんだ?



『遂に介入出来たぞ』


 意識が途絶える。



 

 ここはどこだ? 腕輪を渡されたときと同じ感じだが。


 

『よく参った。参謀殿。いや今はただの人間だったな』

「ここはどこだ? わたしに何の用だ?」


『君は我らを拒み続けた結果、今年の春には妻と子供を事故で失い

その悲しみを忘れるためにこの世界の四十億以上の人間を殺戮

その後にハデスの参謀となってアレス神の体を乗っ取り天界で我らと

五百年の争いを繰り広げる。それを止める機会は今回だけだ』

     

「リリーナと子供達が死ぬ? 俺が天界に戦争を仕掛けるだと!」


 こいつ頭がおかしいんじゃないか? 俺が神になるだと。



『君が拒絶するなら同じ未来がやってくるのを私は止められないが

今、君が私の提案に賛同してくれるなら預かっている魂を上手く循環させて

時間の管理者としてより住みやすい世界を再構築する事が可能だよ』


       

「時間の管理者としての発言のようだが

私を抹殺すれば済む事じゃないのか?」


  

「神話級の加護を持つ者の未来を変えると私にも未来が予測できなくなる

それに君は創造級の加護まで持っている。我々の予想では五千年後も戦いは

終わらない。君の支配領域は大きく減ってしまうけど同意してくれないかな?」


 

 オーガスと大陸間戦争を一年後に控えた今になって歴史改変か?

あの金のかからないリリーナと子供が死んだら

俺が狂気に駆られて人を殺しまくるという説明にも納得は出来るな。


 また剣と魔法の世界に逆戻りは辛いが仕方ないか。

 

「よし、その提案を受けよう」


『今から三つの飛ばされる場所での選択肢で

全て『わかった』と応えてくれればいい。あとね、今回は我らの都合だから

今度君がやり直したくなった時に都合をつけてあげるよ』   

    


 まずはアデルか。


「ノア兄さん、もう限界だよ。僕もアレス領に連れて行ってくれない?」

「わかった。共に頑張ろう」

「ありがとう」


 これだけですぐに転送か。



「……それならば星金貨五万枚でどうだ?」

「わかった」

「これでサントスを滅ぼせるな」


 ここはセシリー女王との会見だな。あれ、これだとラインハルトを

俺が殺す事になるのか?



 そして転送か、次はどこだ?


「補給に関して多めに謝礼を支払います。それに当国は金や銀も多く取れます」

「金や銀は我が国でも余っておる状態じゃ」

     

「それならば……星金貨二千万枚お支払い致しましょう」

「何でも言っておろう……」


「わかった。それで手を打とう」

「ノア、お前……」


 サン王国の特使が最後だったか。



『よく決断してくれたよ。可能な範囲で君に気に入って貰える形に

改変出来たと自負しているよ。四月四日は君の家族を外に出してはダメだよ

おまけだよ、君たちの好きな海金貨を千億枚プレゼントしよう 

それじゃ君の未来と我々の未来に幸あらんことを。大事な事を

言い忘れたよ。出来れば三年でケリをつけてね、これは忠告だよ』

      

 これで歴史改変作業は終わりか。

 三年か、僕が二十六歳になると問題があるんだろうか?


 金をこんなに貰っても、神に金銭感覚はないだろうが、こんなに

貰ったら労働意欲を失うぞ。

 


 

「ご主人様大丈夫ですか?」

    

「リリーナか、ここは家の居間か?」

「そうですよ、クラウスの目覚めの儀の後に倒れたんですよ」


 時間軸は同じなのか。


「オーガスとの戦争はどうなった?」

「サン王国とオーガス王国との戦争なら開戦三年目じゃないですか

アレス家は大儲けですよ」


「今はフリーダム歴の何年だ?」

「フリーダム歴って何ですか? 今は新アルタイル歴の二十六年ですよ」


「リリーナ、俺は多分クロノスの神によって違う世界線を見てきた

それだとフリーダムという国を立ち上げてお前は王妃で俺が王様で

一年後には世界の覇権を賭けてオーガスと全面戦争する所まで来ていた」

          

「あの大国と全面戦争ですか!?」

 


リリーナは信じてくれたようで色々と現状を話してくれた。


 まず俺の領土はルミエールから東のイースタンまでで、それに加えて

ミラン大陸も領土という事だ。お隣さんはブルームハルト辺境伯家で

アデルは旧ヘンドラー王国領を任せられているらしい。


 身近な人間で死んだのはルッツ父さんとアレクのみで

あの狸陛下もピンピンしているが息子のフランツに政務は譲ったらしい。


 クロノスもルッツ父さんとアレクの存在だけは消滅させないと

歴史を修正出来なかったようだな。

 アデルのお嫁さんは四歳年上のエリザベス王女になっている。


 

       

 相違点が多すぎて仕事にならないな。

  

「ノア様、またヒンメルで反乱が発生しました。今度は領主の

ロードスター侯爵が主犯で反乱軍は五万以上との事です。シュナイダー内務卿

より援軍要請が来ております」

  

「うちの戦闘機は何型だったかな?」

「勿論、去年開発されたアレス七型ですよ」

  

「それじゃ七型五百に攻撃機をつけて参戦要請に応じてくれ」

「ノア様、七型は最新鋭機で五十機しかありませんよ」

「そうか、それなら予備に旧式の航空機を増援につけてくれ」

   

 

「わかりました、七型五十機に三型攻撃機四百をつけておきます」


 神様も気を遣ってくれたのか、俺はアレス王国の王様で

アルタイル王国とも親密な状態で現在の敵は南部のキグナス帝国のみで

バルバロッサ王国とも貿易をしておりガイア大陸も南北で戦争中のようだ。


「どうするかな?」

  

「兄貴、お昼ご飯を決めかねてるんなら満腹亭で食べましょうよ」

「ヤンか、元気か?」

「昨日会ったばかりじゃないですか?」

   

「よし、コンラートを誘って満腹亭に行くか?」

「お供します」


俺が数十億の人間を根絶やしにするとはな。


 

 

「親父さん、トリプルチャーシューの全部入り辛味噌ラーメンを三人前ね」

「はいよ」


チャーシュー増しのラーメンで大銅貨六枚か、適正価格だな。


「ハインツ様のバルバロッサ訪問でも良い結果を得られなかったようですね」

「アルタイルとバルバロッサ王国で戦争かな?」

「こうなってくるとバルバロッサ王国に農作物を売れなくなるな」


「開戦したら考えよう」


「はいよ、三人前だよ」

「待ってました」


 味はあいかわらずだな。

違和感があるのは俺だけか。



 四月四日だけは気をつけておかないとな。


お読み頂きありがとうございます。


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