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第八十三話:三型一強の時代も終わったようだ


 やっとアリス達も技術大学院を卒業してセーラはシリウス自動車の

開発部門にアリスは念願の戦闘機工房に就職を果たした。


「アリス達は自宅から出勤か?」

「だって初任給が金貨三枚なのよ」

「私は金貨三枚と小金貨二枚ですよ」

 

 年間で七百二十万アルなら新人なら十分だと思うが

二人はご不満のご様子だ。  


「新人なら仕方ないだろう」


「だから衣食住を安く済ませないと」

「アリス、工房は食事無料だろう」

「食事も効率重視でサンドイッチが主流なのよね

やっぱりちゃんとお弁当が食べたいわ」


「それはそうと六型の噂は聞いているか?」

「私はまだまだ新人よ。最先端工房には入る事も出来ないわよ」


「アリスちゃん、体には気をつけてね」

「リリーナ、ちゃんずけはよして、アリスでいいわよ」


「わかったわ、アリスにセーラね」

         

「そろそろ七時四十分だぞ」

「大変、もう出かけないと」


  

「お父様、お姉ちゃんたちはあわてんぼさんですね」

「ほんとにそうなのです」


「ルーカス、クレア、相手が居ない時に悪口はいけないわよ」

「「悪口じゃないもん」」


「ルーカスは進路はどうするんだ?」

「来年から学院に通いたいです」

「クレアは来年の来年から」

       

「わかった」

 六歳から通うなら問題ないだろう。


 学院を卒業するまではゆっくりさせてやるか。


 

「今日はヤンだけか」

「コンラートは抜けた次官の代わりを探しているそうですよ

ミーアはまた妊娠したそうです」


「トムとサキはどんな感じだ?」

「予算と格闘してますよ。トムは潜水艦の予算の増額をサキは対空砲の

予算増額をヒルダにお願いしてるみたいです」

     

「ヒルダが聞くわけないだろう」

「その辺をまだ分かってないようですね」


「戦争前になれて貰わないとな」


    

「そういえば、お隣さんのガイアですが職員の報告だと

人口は既に五百万以下で力が全ての世界に成り果てているようです

略奪は日常茶飯事で罰する者がいないので好き放題らしいです」


「そこまで人口が減ったか」


 おとぎ話に出てくるアルタイル開拓物語のように

力のあるコミュニティーが細々と生きる世界か


 物語では五十年で勇者が国を興すらしいが今のガイア大陸で現れるかな?


「精鋭の時魔法の使い手を厳選して送っているんで捕まる心配は

ないんですがこれ以上の進展もなさそうです」


「一ヶ月に一度見回ってくれれば十分だ」


       

 ガイアもいずれは手を入れないといけないんだよな。


     

「ノア様、ミランからの報告です」

「反乱でも起きたか?」


「逆です、ヒルダの言っていた事は本当でした。既に主要な街は

アレス鉄道が開通しており都市六カ所に空港も八カ所の建設も既に終わり

今では貿易港以外の港の整備に励んでいる様子です」


「一年と少しでそこまで進んだか?」

「ノルト大陸とは正反対です。ミランの人間は一日の労働時間も

十二時間程度と非常に勤勉で残る問題は食糧自給率ですね」


「そこは本国からの輸送で補うほかないだろう」

「そうですね」


ノルトは未だに街の間の鉄道さえ整わないからな。


 

 

 その三日後に東の空軍と海軍基地となっているイースター島に敵機来襲の

報告があり三型戦闘機四百機で迎え撃ったが最初は優勢だったが

オーガスの新型が出てきて形勢が逆転したらしい。



「被害状況は?」

「ほぼ同数の相手に三型戦闘機が四十二機も食われました

更に滑走路も一本が破壊されて港にも爆弾を三発もらってしまったようです」


「敵の新型はそんなに凄いのか?」

「最高速度は三型の千四百キロ以上で高度一万四千メートル辺りまで

上昇するのを確認したそうです。それに武装もミサイルだったそうです」


「攻撃機に続いて爆撃機の最高高度も簡単に塗り替えられたか?」

「空軍からは『もっと速い機体を』という要求がきています

我が国が優一勝っている点は武装の威力しかありませんね」

             

 ジュノー大陸より広い領土を持っているとはいえ

凄まじい技術開発力だな。これに潜水艦まで持っているのか。


 基地防衛なら対空砲で守って貰えるから有利だが

逆に言えば攻められないという事だ。


「六型、それはもう無理か? 七型戦闘機に期待するしかないな」


 

            

 一面まさに牛だらけだな。

 

「癒やされますね」

「本当だな」

「近寄ってもまったく逃げようとしませんね」

「危機感が足りないんじゃないの」


「外敵がいないからだよ」

「サーシャちゃんはお利口だね」

「サーシャはもうすぐ六才だよ」

  

 サーシャちゃんは先日陸軍長官に就任したサキの一番下の妹で

サキが出世した後も一家で農家をやっているようだ。


「まだまだ子供じゃないの?」

「もう字も書けるもん」

       

「牛は何頭いるの?」

「五百……二十頭くらい」


「計算はまだまだなのかな?」

「できるもん。豚さんが三百二十二頭と鳥さんが三千四百位いるの

それと天使アヒルが四百六十羽もいるんだよ」


「天使アヒルか……久しぶりに食べたいな」

「あげないからね」

「捕らねえよ」


「でも今日は放牧も終わりなの。暖かいけど三月の途中までは草が

少なくなっちゃうの」

「サザンクロスの街より南なら一年中草が生えてるぞ」


「叔母さんがセリーヌっていう都市の近くの農家に嫁いだんだけど

しょうひりょうっていうのが少なくて大変なんだって」


 南のセーヌ川沿いにあるセリーヌも一大拠点だが人口はエクレールに

比べると少ないし競争相手が多すぎるな。


       

「ノア兄、なんとかならないの?」

「セリーヌ近郊は酪農家が多いんだよ

多く搾乳してもチーズとバター行きだな」

            

「結局は工房に取られるのね」

「畜産業をやりながら自家製の乳を加工出来る大規模農家は数える程だからな」


「ラズベリー家も乳製品事業に参入しようかしら」

「ヨハンの所は肉加工に投資しているから出来ない事はないな」


「でも乳製品って売れ行きに変動があるんですよね」

「そうだな、山羊乳との競争もあるし肉の方が安定しているのは事実だな」


「牛肉なら三日に一回は食べますからね」

「サーシャちゃんの家は豚と鳥も飼っているし業者ともコネがあるから

問題ないが細々と牛だけでやっている所は競争だろうな」

         

「うちは三十人以上人を雇ってるんだよ」

「それでも畑もあるんじゃギリギリね」

  

「畑をやらないと飼料を言い値で買うことになるからな」

「なんとも世知辛いですね」


 牛は三日に一回かどうかは所得によるが卵は一日に数個は使うし

豚肉は庶民に一番人気で鶏肉も根強い人気を誇っている

大家族のフリーダムには酪農は必須だ。

 酪農家も民間に全て任せたいが絶対出荷調整しようとする奴が現れるよな。


     


 そして新年を迎えたが東部のイースター島では戦闘が定期的に行われ

一回の戦闘で二機から三機が撃墜される状況では新年会も開けない。


「オーガスもまだまだ新型は少ないようですし、

毎回編隊を組んで来るのにもかなりの手間が掛かるようですが

月に五機落とされるのはかなりの痛手ですね」


「いっその事、イースター島を破棄して土魔法で埋めてしまうか?」

「敵は本土とイースター島の中間辺りに人口島を建設中のようです

最悪は本土が空襲に遭いますね」


「本土空襲か……」

   

「飛行士も慣れたのか脱出の成功率は九割以上ですが

それでも死者は出ますし士気も下がる一方です。攻勢に出る以外に道は

ないと言うのが現状です」


「潜水艦の方は?」

「五式は敵とは互角程度で六式は敵より勝っていますが

熟練の乗組員の養成に時間がかかっております」


 新人を多数投入したいが潜望鏡深度まで気軽に上がれないとダメか。

それにしてもオーガスめ、こんなに技術を伸ばしているとは。


 

            

今日はソフィーの三才の目覚めの儀だ。

 去年はなかったので二年ぶりだ。


「あなた、ソフィーはどうかしら?」

「女の子なんだし可愛く育ってくれれば文句はないよ」


「「ソフィー、フリーダム家の名を守れ」」

「ルーカス、クレア、そんな事を言っちゃダメよ」


「がんばるもん」


 さてどうなるかな?



「女神ヘカテーよ、この者の道を示し給え。血の道を示せ」


     

――――――――――

    

 名前:ソフィー・フリーダム

 年齢:三才

 種族性別:人族:女

 所属:フリーダム王国

賞罰:無し


 加護:クロノスの加護(伝説級)

  ポセイドンの加護(神話級)


――――――――――   

    

 ポセイドンの加護か、海では強そうだな。


 

「良かったわ」

「ソフィー凄い?」

「ああ、ソフィーはお兄ちゃんやお姉ちゃんに負けてないぞ」


 地震を鎮めてくれると有り難いんだが。

     

 さて、帰るか。


 

 

 翌日には敵の偵察機を空軍の緊急出撃した飛行士が撃墜したと報告が来た。


「遂に敵は本土を狙い始めたようですね

六型防空駆逐艦をイースター島に配備した直後に動きを見せるとは」

   

「強行偵察を実行してくるという事は東部を空爆出来る自信があるんだろう」

 

「敵は北の大陸のサントスをかたづけたら

全力で我が国に仕掛けてくるでしょうね」


「対地ミサイルが敵にもあれば東部は火の海だな」

「六型のハリネズミを東部に集中して展開していますが

人口島を複数同時に建設中の様子です。最悪はアレシア辺りまで空爆の被害に

合う可能性がありますね」


 既に三型の改良は限界を迎えているし一か八かの敵本土爆撃を敢行するか?

 ダメだ、そんな事をしたら八割は犬死にだ。


 ラインハルトは一年は持たないだろうな。



 工房も久しぶりだな。

       

「こんにちは、見せたい物とは?」

「ノア様は気が早いですね。お見せしたいのは対空及び対潜用の六人乗りの

小型艇です」  


「小さいな、こんなんで敵の新鋭機を落とせるのか?」

「ミサイルが四発しか積めないじゃない」

「大波の一撃で沈没しそうですね」

   

「これは手厳しい。これでも最新鋭なんですよ。七型の称号は

貰えませんでしたが簡単には沈みませんし高度八千メートル以下の戦闘機なら

確実に葬り去れる自信作です。攻撃機や爆撃機なら

高度一万二千メートルでも撃ち落とせるでしょう」 


「月産でどの程度作れる?」

「予算があれば百は軽く超えますね」

  

「よし、輸送船の工房も使って月産三百艇作ってくれ」

「高い評価を頂きありがとうございます。頑張らせて頂きます」


 少しは敵の侵攻を抑えてくれれば十分だ。

地球では八十年代には時代遅れと言われたミサイル艇だが今は攻撃力より

防御の為に活躍して貰おう。

  

 少しは盛り返さないと。


お読み頂きありがとうございます。


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