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第八十二話:やり過ぎてしまった


 ガイア空襲は上手く行き当初は一週間で決着が着くかと思われたが

和平協定と称して飛行艇の特攻が空母を狙い

それを庇った軽巡洋艦一隻が見学に来ていた子供も含めて沈没し

乗員と見学中の家族の全てが死亡した。


 これに子持ちが九割を超える海軍が激怒して搭載弾薬を全てつぎ込んでの

空爆が開始された。

 俺が熱で寝込んだせいで歯止めが掛からなかったのも原因だろう。



「海軍の巡洋艦一隻が沈没、空母一隻小破、重巡四隻中破で

攻撃機が二十四機撃墜され民間船も百五十五隻が沈められました」


「ジュノー統一戦以来の戦死者だな」

     

「戦死者だけなら今回の方が上かも知れません

敵の方が遙かに上回っていますが」

  

「敵の戦死者は?」

「陸軍が調査中ですが動く航空機は無く陸上の機械化部隊も全滅

工房も全て破壊しましたので……生存者は二千万を切っている物と思われます」


 

 トレミー帝国の頃に四億五千万以上居た住民もガイア王国建国時は一億二千万程と

発表があったが、それの八割以上を殺す結果になったか。


 

 

「やってしまった感が半端ないな」

「わたしもノルトに行っていた間にこうなるとは思いませんでした」


「今後どうするか?」

「まずは軍関係の戦死者五百二十二名とテロで死亡した七千人以上の

弔いでしょうか」


       

それから戦没者とテロの犠牲者の葬儀を大々的に行い

TVとラジオの目を遺族に釘付けにした後は対策会議だ。


「ガイアは当分の間は放置するしかありませんね

民間船の渡航は今まで通り自己責任に致しましょう」


「それしかありませんね」

「もう謝ったとしても許して貰えませんね」

「一般の住民は何故殺されたのかすら知らないでしょう」

「ガイア大陸は陸軍も撤退した方が良さそうね」

  


「よし、西部の港には外国人の入国拒否命令を出すとして……」


        

「ノルト大陸が三日前に軍を完全解散して元軍人を漁師にしました」

「既に二万人にまで減っていたのよね」

「漁師が二万人も増えて大丈夫か?」


「大丈夫とかそういう問題じゃないだろう。次は自分達という思いが

強いみたいですね」


「もう去年まで溜め込んだフレア弾はないんだろう?」

「今年作った新弾頭以外はないみたいよ」

「相手には軍の弾頭数なんてわかりませんから」


「仕方ない、ノルトを六月一日付けで編入しよう」

         

「助かります。苦情の数が多すぎて仕事になりませんでした」

「警備はどうするの?」

「とりあえずは陸軍一万で主要港と主要空港だけ警備だな」

   

「コンラートとマルコの出番ね。アレックスさんは戻ってこないのね?」

「そろそろ陸軍長官も考えないといけませんね」


 アレックス先生も五十五を超えているらしいからな

後任となると難しいな。


 

    

そうして『五月の嵐』または『ガイアの終わり』と呼ばれる騒動は終わり

六月のノルト大陸の編入式になった。

  

「ここに告げる。本日をもってノルト大陸はフリーダムの領土となり

全国民に黒の国民証を与える。これよりはフリーダムの一員として

幸福を享受して欲しい」


「「パチパチパチ」」

 

     

儀式的なお礼の拍手だけで編入式はあっけなく終わった。

 みんないつ俺の気が変わって取りやめになるか不安だったらしい。


 

「ジュノー大陸は一昨年から空前の赤ちゃんラッシュで湧いておりますが

ノルトで去年生まれた赤ん坊は僅か二十二万程度です。うらちは五千万

以上の赤ちゃんが産まれているので出産率は二百分の一以下です」 

 

「若い人が少なすぎるのよね」

「うちらが産みすぎとも言えるわね」


「繁栄するかどうかは別としてとりあえずは強制的に軍人になった人間と

希望者を集めて街の間にレールを敷設しよう」


「そうですね、主要な貿易港と街の間にしか列車は走っていません

それとコンバインはどうします?」


 

「金利なしの五年後払いでも借りたいという人間だけに貸してやろう」

「その条件ならば利に敏い人間なら借りるでしょう」

         

「北側の警備は出来ませんがよろしいですか?」

「距離的に爆撃機以外では帰ってこれないだろう。北部は当分の間は

反乱が起きた場合以外は無視だな」


 領土が増えてもまったく嬉しくない。

 逆に仕事が増えて悲しくなってくるよ。



 そしてニコは毎年のように忙しい時期を迎えて俺達もそれなりに

忙しく仕事に励む。


 東や南の大陸にも輸送船の船員からガイア大陸の悲劇は色々脚色されて

伝わったようだがユニコーンは怯えオーガスは更なる軍備拡張で

これに対抗する姿勢を見せているようだ。



「バベル自動車から遂に反重力エンジン搭載の自動車の発売ですよ」

「一台黒金貨五枚だろう」

「コンバインが買えるわよ」


「体重六十キロ以下の人間が四人までか、裕福な若夫婦向けだな」


 上昇率二メートル速度四十キロのバベル六式はそれでもかなり売れた。


   

 いよいよ待った収穫だが最大の販売先のラインハルト率いるサントス王国が

北の島まで撤退してしまった。


「ノア様、今年は麦の作付面積が大きかったので小麦が一億トンに

大麦三千万トンで逆に本国は少々落ち込み小麦が一億トンを割る程度です」


 本国は四千万トンも落ち込んだか。

生産量が落ちるときは仕方ない。

 

「仕方ないね」


      

「ノア様、東大陸ですが空母四隻と五式潜水艦十隻で監視していますが

三日前に遂に南北大陸の統一宣言と当国に対しての宣戦布告が同時に

発表されました」


「そうか、それで疑問なんだけど何で潜水艦も五式なの?」

「六式もありますよ」

           

「そうじゃなくて五型じゃないの?」

「ダンの拘りで軍用航空機と艦上艦船だけに型をつけるそうです」


「そうなんだ」


 最前線で戦う機体と艦船だけ型がつくのか

潜水艦も最前線にいるけど。


 日本にだいぶ叩かれてサン王国は苦しいようだが

それでもユニコーン王国とは互角にやり合っているようだ。

そのお陰で南の安全が確保されたオーガスが力をつけてしまったが。



 先制攻撃を受けるのはご免なので潜水艦十隻をオーガス大陸の

南に向かわせて対地ミサイル百発を五つの港にお見舞いしておいた。


 サン王国の潜水艦だと思ってくれると非常にありがたい。


 

 そして今日はフリーダム型空母の進水式だ。


「おいダン、どうしてこんな形になったんだ?」


 形はまさにYの字だ。そして二つの分岐した方にスクリューがついている

そしてどう見ても全長四百メートル以上ある。


「気がついたか、最初はW型やX型が検討されたんだが速度が出ないので

Y型になった。速度はノア型のまま搭載機は三型で二百二十機積めるぞ」


 この形で時速五十五キロ以上出るのか。


「空母を先に見せるという事は六型は出来たのか?」

「それが今月だけでも二機も墜落していてな困ったもんだ」


 こっちが困るぞ。


「通常は分岐していない方が前を向いて航行するのか?」

 

「そうだ、その場合は基本的に後ろに向けて発艦する事になるが艦橋を

分岐部分の中間に取り付けたから最大で六機同時に発艦可能だ」

    

「艦橋が端っこに行ったのはいいとして対空砲も少ないぞ」

「そこは常に新開発した防空駆逐艦を同伴させる事で解決だ

これはテクノスーパーライナーを更に進化させた軽いが最大で時速八十三キロ

対艦、対潜ミサイル二門以外は全て対空砲というハリネズミだ」


「乗せる機体に期待してるよ」


  

 そして帰り道に満腹亭で食事だ。


「あの空母は中身もでかいですね。どうも三型より小型の航空機を想定して

作ってあるようです」

   

「仕切りがシートだったもんな」

「形は悪いけど活躍してくれそうね」


「六式潜水艦の報告ではオーガスも遂に空母を開発したようですし

海戦も間近かも知れません」


「はいよ、全部入り四人前だよ」

「親父さん、食中毒騒動も収まって元気だな」

「あたぼうよ、ガイアの連中のお陰で二ヶ月も休業させられたからな

支店の計画も練り直しだ」


 

「これが醤油と豚骨のミックス味か、悪くないですね」

「ご飯と一緒に食べると最高だぞ」


「辛味噌味と人気を二分しそうだな」

「ラーメンも車も混ぜるのが人気ですね」


「そういえばバベル自動車の新作は不良品が続出して回収騒ぎらしいわね」

「リキがこのままいけば国土交通省で財産の差押え処分も

あり得るって言ってたな」


「初の大型倒産になるかしら?」

「従業員は二十万以上だろう。きつそうだな」

       

          

 ミーアの予想は半分的中して八月にはバベル自動車は賠償金が海金貨八千枚

に昇ったがアレス銀行への預け入れ金で何とか返済してバベル海運として

造船会社に転向した。


 我がフリーダムは基本的に同業者が二社以上が同一分野にいない場合は

民間企業の進出を認めないので造船業にも先駆者は存在する。


      

「ノア様、アレス通信の回線がパンクしました。復旧は早くて半月後です」

「衛星回線を回すか?」

「そちらは軍用ですのでまだ無理ですね」


「交換手の長期休暇だと割り切ろう」


 

「それと一週間前に三型戦闘機が敵戦闘機を追いかける機会がありまして

その際に速度を測ったら時速千キロまで計測できたそうです

それに加えて高度一万メートルまで上昇したそうです」


「攻撃機は追いつかれて爆撃機は高度を下げられないのか」

「ルッツ型で飛行士は養成していますが乗る機体がないのが問題ですね」


 

「それで軍務長官と海軍長官と陸軍長官を変えるのか?」

 

「はい、ノーラ様は病気でお子さんを亡くされて不安があるのでしょう。よって

強い希望でマルコを軍務長官にしてマルコの次官のトムを海軍長官に

コンラートの部下のサキを陸軍長官にしては如何かと?」


「軍務もいつまでもリリーナに任せておけないし構わないだろう

空軍出身で陸軍が務まるのか?」

      

「二人ともクレア領出身の陸上部隊所属でした。三ヶ月も鍛えれば

一人前になるでしょう」


「それでいいだろう」

                   

 ノーラ姉さんの子供ということは俺の姪なんだけどな。


 南大陸はおとなしいが出来ればオーガス王国に出兵して

俺達に全戦力を向けてこないようにして欲しいんだけどな。


お読み頂きありがとうございます。


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