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第六十八話:人口が増えると問題も


 季節は米の収穫時期だ。今年もコンバイン軍団が農地で暴れまくっている

最近では国税長官のフレッドが取り立ての厳しさから商会を中心に一部の

人間から悪魔認定されてフリーダムの悪魔と呼ばれているらしい。


「南部は収穫が早いので税を取り立ててきました。米を五百万トンを

既にバベルへ搬送済みで大豆も千五百万トン程度を搾り取れそうです」


「噂になっている商会なんかからの取り立て額は?」


「脱税を行っている証拠を突きつけて潰した商会が七百八十件

軽めの不正に関わった商会が千三百件ですので、潰した商会の有り金が

星金貨で四百六十万枚に不正商会には六割の税金で星金貨一万六千枚です」

      

「よくやってくれた」

   

「通常の商会や猟師などからの税は我が国と同様に十一月に

取り立てる予定です」


 フレッドはやる気満々だな。


「フレッド、悪魔って呼ばれてるぞ」

「そうそう本国でも有名よ」

    

「言いたい人間には言わせておけばいいんですよ」

「兄貴の魔王には勝てないけどな」

「ノア兄の魔王伝説は完全に定着したわね」


 お前達が上書きしてるからだよ。



 そして米の収穫時期が終わった辺りでトレミー帝国の南下速度が

急激に落ちてそのまま対陣する事になったようだ。


「西大陸の国々が積極的に難民を受け入れたのは飛行艇の技術者を

獲得する為だったようですね」


「獣人排斥運動の過激派に残られるよりは良かっただろう」

「ロアンは去年から技術を手に入れて飛行艇の大増産を始めていたようで

既に二百隻の戦闘飛行艇を動員出来るようです」


「トレミー帝国は?」

 

「北方大陸で数回内乱があったようなので人口は圧倒的に上なんですが

技術的にはジュノー大陸に進出したロアンを下回るようです

増産しているようですが多くても百四十隻程度でしょう」

      

 領土が広がると面倒事が起こるのはどこも一緒か。


「うちの航空戦力の増産具合はどうなってる?」


「本国だけでは資源の輸送に時間がかかるので比較的に農作向きの

山の向こうのサンドリアから東のハマーンまでは農耕地域に指定して

ハマーンの東部から更に東のベルにかけての地域は農耕に不向きなので

工業地帯として統一後の直後から工房建設を行っていますが……」


「まだまだ増産には無理があるという事だな」

  

「残念ですがその通りです。来月には各種工房も稼働を開始するので

従来の三倍以上の増産が可能です。来年になれば五倍も可能かと」


 

「まずは二月までにトラクターを増産して新領土全域に貸し出せるように

ならないとな」


「ニコの計画では旧アルタイルから貸し出しをする予定です

距離的にも南部が最後になる見込みです」


 東部が先か、土壌がいいからそれは良いとして

全てを輸送船で輸送していたんではレールの通っていない

内陸部に送れないんだよな。


           

「アレス鉄道の拡張計画は?」

「レールの幅がアルタイル式とキングダム式は同様ですが

バルバロッサ式は若干広いので同じ幅の東部から始めているようです」


 バベルから南の海までは川が流れているし

西のマーチ港からバベルに輸送してそこからは船で輸送するか。

それ以外の内陸地へはデカ物ヘリでの輸送になるな。


 

「まあいい、当分は戦争で焼かれた街の機能を拡張させた都市の建設だな」


「港の工事が済めば取りかかれますが候補地の選定で内政担当の

職員の間でも激論になっています。何と言っても労働人口が余っている

来年の秋までの事なので」

       

「なんで来年の秋なんだ?」

            

「今年は難民に税を納める余裕が無かったので労働力としてこき使えますが

税を納めた来年の秋以降は酷使は出来ないからです」


 なるほど、難民はフリーダムの国民じゃないという発想か

奴隷じゃないけどこき使えると。


「難民に甘んじているのはどの程度いるんだ?」

「そうですね、誤差はあると思いますが一億四千万はいるかと」


「現在、手がけている都市はいくつあるんだ?」

「東は旧エクレールとマイセンとアレシアで西はマーチ港とその北部に

一カ所で南部は旧王都だけですね」


 バベルを入れても七都市だけか。


「内政官に一ヶ月以内に選定して着工開始するように指示しておいてくれ」

「わかりました」


爆撃機で硬そうな物は破壊して土魔法でならしてからトラックを動員すれば

基礎に関しては問題ないだろう。


  

「あなた、ルーカスがママって呼んでくれたんですよ」

「わたしはまだだけどね」

            

「家に帰ってくるのが遅いんですよ」

「リリーナも仕事に就くか?」


「いえ、また妊娠しちゃったみたいです」

「それはめでたいな。三人目が生まれる頃には多少マシになってるだろう」


「お兄様、アリスたちも三年生です。仕事を覚えたいのですが」

「セーラも覚えたい」


「どんな仕事をしたいんだ?」

「そうね、書類を見てサインをする仕事」

        

「セーラは……お菓子工房の責任者がいいです」

 

「ミーナ、アリス達は大丈夫か?」

「ルッツ様やソフィー様の事がありましたので

少し甘やかせたのかも知れませんね。学院を卒業するまでには直させます」


「「ミーナ、怖い」」


「仕事の話が終わったなら夕飯にしましょう」

「「はーい」」


 ドロシー婆ちゃんは爺ちゃんの補佐でバベルに住んでいるので

家で食事を一緒に取るのは母さんとヘルミーナに俺とリリーナと

アリスとセーラと愛しの子供のルーカスとクレアの八人だ。

 

「おいちいよ」

「そう、フウフウして食べるのよ」

「ルーカスはよく食べるわね」


「でも、この赤マグロは美味しいわよ」

「お母様とリリーナはお魚大好きですよね。わたしは肉の方が好きです」

「わたしもお肉かな」


 リリーナは控えめな性格なのでアリス達も呼び捨て状態だ

本人はリリーナ姉様と呼ばれたいらしいが。

   

「肉の方が太りますよ」

「ミーナ、私達は運動してるから平気よ」

「そうそう、魔法を使うのも集中力がいるから沢山食べないと」


        

 この脳天気な二人の将来か。妥当な所で俺の補佐官?

 俺も甘やかしそうだしニコに預けてみて仕事の厳しさを知ってもらうか。


  

「ノア、ギュンターはエクレールへ戻してやれないの?」


「海軍次官ですからね。南西部で空母の指揮を取っているので半年は

戻せませんね。定期的に爆撃機で帰ってくる分には構いませんが」


「ミーナは妊娠してるのよ。来年の春には生まれるから

産まれるときは呼んであげてね」

「わかりました」

     

 ヘルミーナは夕食が終わったら家に戻って今度は自分の子供達と夕食だ

家族が居ないからメイドを雇っているが父親の長期不在は不味いか。


「ところでうちはメイドは雇わないんですか?」

「昼間はメイドが四人に料理人が一人来てくれているわよ。夕食の準備は

していってくれるから夜は私とミーナで何とかなっているわ」


「そうですか」

  

うちは三階部分までしか使ってないから四人で平気なんだな

とても王族とは思えない暮らしぶりだが贅沢を言ったらきりが無い。


 

  

 そして一週間後にヒルダが一体一での面会を求めてやって来た。 

  

「ノア様、アレス通貨の全領土への変換が完了しました。十二月一日以降は

ジュノー大陸ではアレス通貨以外での取引は不可能となります」


「銀貨を二千アルのままで大丈夫?」

 

「アレス大銅貨は二百アルですし慣れれば大丈夫だとうちのスタッフの意見も

同じです。多少の混乱を見せているのは星金貨二枚分のアレス海金貨より

上位の通貨が無い点ですが今月中には収まるでしょう」


「国外貿易では問題にならない?」

       

「ノルト大陸とトレミー帝国とは既に為替取引を開始していますし

来月からはサントス王国に関しても決済期限を最大一ヶ月を上限にした

為替取引を開始しますので問題はないと」


「一体一での面会を求めてきたからには理由があるよね」


「想定外ですが五百万も国外に逃げて、前回の戦争で一千万人は死んだはず

なのですが現在フリーダム本国といいますかルミエールから東部の

イースタンまでを含むと本土の人口が七千八百万人で

新領土に十六億六千万人程度いると判明しました」

       

「あれ、減ってないじゃないか? かなり増えてるのか?」

 

「以前に私が言ったジュノー大陸に八億というのは間違いだったようです

現在は小麦と米をトレミー帝国に高値で出荷中ですがギリギリですね」

 

 本当に他国が発表した公式発表ほど信じられない物はないと

いう事を痛感させられたよ。しかし統治を開始してから半年も経っていない

からこの数字すらも確定情報ではないんだよな。

   


「十六億六千万もいたら食糧が足りないという事だね」

 うちの本国を合わせたら十七億を超えてしまうのか?


「はい、今年の米も本国では大豊作で八千万トン以上でしたが

清酒に回す分が工房を維持出来る最低限になります」


「本国の人間は既にイシュタル芋を主食にするような事は出来ないし

悪いけど新領土の人間の食糧と差をつけるしかないね」


 俺の感覚としては西のルミエールから入領当時のサンドリアの西の山までの

領土を本国と呼んでいるけど、そろそろ絶対に守るべき領土を

見直すべきかも知れない。 


 

「はい、それでビール生産分以外の大麦とライ麦と蕎麦を送るとして

備蓄用の麦と米の放出許可を頂きに参りました」

     

「備蓄用はどの程度あるの?」

「麦が一千万トンに米が一千五百万トンあります」

 

 国内備蓄を吐き出すのか? 不安はあるが仕方ないか

食糧難になれば歴史が暴動になると証明済みだ。


「わかったよ。許可しよう」


「ありがとうございます。それで管轄官庁の増加と人員の増加を

お願いしたいのです」


 これがヒルダの本命か。


 

「具体的には?」

      

「現在の内務、工部、農務、軍務、財務、文部と国土交通、総務と国税

だけですと国の運営が出来ません。まずは領海が膨大ですので海軍とは

別に海運省と山も増えましたので農務を分けて林野省を増やし

国税には税の取り立てに専念してもらい酒を主に扱う加工省と

新規事業を扱う商務省の四省の増加をお願いしたいです」


   

 周りが全て海だマルコの仕事を減らすのはいいので海運省はいい

ニコの仕事も更に減る林野省に酒と缶詰製造の加工省に商務省か。


「商務省は必要か?」

  

「はい、商会の管理は勿論ですが現在は無線以外では手紙しかありません

商業省に郵送業務を行わせたいと思います」


 郵政事業は必要か、現在の状態では民間には任せられないし

アレス銀行の業務も限界に近いから郵便事業も初めて見るか。


「省庁の増加は認めるとして文部の長官も今は空席だ。ポストが五つ必要だぞ」

 

「現行の内政部署の次官を長官職に昇進させましょう

一時的に長官職の仕事は増えますが次官を雇ってもらいましょう」


 次官なら仕事も出来るだろうし信用も出来るだろうから適任か。


「わかった、次官を長官に昇進させよう」


 

 十三省庁体制か。それも仕方ない。

 どこまでやってくれるかはお手並み拝見だな。



お読み頂きありがとうございます。


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