表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/145

第六十三話:わたしは魔女よ


 七月十三日に起きたバベルでの反乱は連鎖的に拡大して手がつけられない

状態まで拡大。元キグナスの人間に元イシュタルの人間やもっと言えば

元アルタイルの人間と元バルバロッサの人間もいるから大混乱も無理は無い。

   

「既に革命が起きてから四日ですよ」


「陸軍は完全に休養が取れただろう」

「空軍と海軍も半分は休暇中ですけどね」


 報告だと三千万人以上の奴隷が帝都に居たそうだから

これを殺したら俺は魔王から次は……悪神あたりか。



「中継機より報告。戦闘が徐々に沈静化していっているとの報告です」


「戦闘機隊、攻撃隊発進」

「第八戦闘大隊発艦せよ」

「第十三攻撃大隊発進せよ」


悪神の上って何だろうな。

 そもそも魔王は魔族の王様なのか?

それとも魔法を使う者の王なんだろうか?



「バベル侵攻の陸上部隊より報告。相手は奴隷よりの解放と

バルバロッサ帝国内での通行の自由を保障と食糧の援助をしてくれれば

バベルを受け渡すといっているそうです」


「どうします? 接近してから乱戦に持ち込まれては数が違いすぎます」

     

「そうだな……パンを物資袋の上に置いておこう

絶対に五十メートル以内に近づかない事。あとは責任者と私が会おう」

   

「危険なのでは? 最悪はサントスの苦肉の策という可能性もあります」

「その時は俺との別れにありったけのフレア弾をバベルと旧バルバロッサ領の

全域にばら撒いてくれ」


「覚悟の上なら文句はありません」


 魔王顕現と言った所か。魔王を討ち果たそうとする勇者はどのくらい

いるのかわからないが。


 

     

 四日も反乱をしていた割には綺麗だな。双方共に火を放たなかったのか。


  

「陛下、こちらへ。代表を名乗る人達が中で待っております」

「わかった」



 魔王伝説でも悪魔伝説でも何でも来い。


 

「お初にお目にかかる。フリーダム国王のノア・フリーダムと申す」


「お初に御意を得ます。元キングダムの将軍でバルド・ランスターです」

「同じく元キングダムの将軍でラルフ・ロードスターです」


「も、もしや軍務卿と辺境伯ではないのか?」

「その通りでございます」

「もはや過去の事ですな」


 バルド殿は伯爵に陞爵して軍務卿にラルフ殿は辺境伯に陞爵して

確かヒンメルの領主だったはずだが。


「お二人が反乱軍の指揮官でよろしいのかな?」

「そうですな」


「住民の奴隷解放は望むところだ、何日か食べる分なら食糧も問題ない

しかしここより北は既に暫定的だがフリーダムの領内なので

獣人を蔑む輩は通すことが出来ない。その点だけは譲れん」


「その条件で問題ありません。獣人排斥運動をしていた者は東か

西へ向かわせましょう」


「西大陸が受け入れてもいいというなら西大陸へ輸送しよう」

「東大陸へは?」

「交戦国に輸送船を送るなど無謀を通り越して自殺行為だ」


「陛下は人族に恨みでもおありか?」

「わたしも一応は人族だ。種族が違うことに恨みなど無いぞ」


「ならば何故、獣人だけを擁護なさる?」

 

「ロードスター殿は勘違いされているようだ。人族と呼ばれる人間が

獣人と呼ばれる人間を排斥しているのだ。勘違いをなさるな

加えてお伝えする。我が国はイース教徒を弾圧の対象とする」


「神聖なるイース教が何をしたというか?」

「アルタイルで爵位を持っていたならばヒンメルとの戦争の原因が

イース教にあったのは明白であろう。そんな事もお忘れになったか」


「……」

 こいつダメなやつだ。

 ぶち切れる前のアレクに近いな。立場が違えば斬りかかってきそうだ。


「では会談は終了ですな。ごきげんよう」


「この魔王め……」

「イース教徒の暴言は、褒め言葉として受け取っておきますよ」

      

                              

魔王伝説再びといった所か。



 暴徒になったら爆撃が必要だし、居残りでいいか。

 四日も寝ないで内戦状態だったんだ。双方共に疲労の限界は近いだろう。


「獣人排斥に関わった過去のある者は西か東へ進め」

「そこ、列を乱すな」


「西と東のどっちがマシなんだ?」

「どっちかなど判らん」

「西なら西大陸の慈悲次第」

「東なら東大陸の慈悲次第だ」


       

もう三時間も経つじゃないか。まだ二割も減ってないぞ。


「君、さっきから難民が移動しないよ」

  

「残りはここで一晩、身の振り方を考えたいそうです」

「夏だから寒さは大丈夫だろうけど。食糧だけ多めに渡して置いて」

 

「了解であります」


  

「監視の兵を残してバベルへ入城せよ」

 

「「「はい」」」

 


さすがに草原をそのまま都市にしただけはある

街の中央の通りは視界の効く限り直線に見える。


「凄い街だな」

   

「本当ね」

「そうですね」

  

「おい、シャルとデニスじゃないか

東部はどうした、まさか負けたのか?」

「違いますよ。敵を全滅させてしまったんで戦闘機で来たんですよ」


「確か航空機だけで千五百以上とか言ってたような」

「あれね、あまりにも遅いから狙い撃ちよ」

    

「よく街の防衛網を突破出来たな?」

「えっとね。わたしが『もう面倒よ、この死に損ない』って言ったら  

爆撃機がね……フレア弾を落としちゃったの」


「一撃で沈むような小さな街だったのか?」

「いえ、おおきい街でした。兵士だけでも五十万は居たでしょう

そこを……半狂乱に陥った爆撃機隊が一斉にフレア弾を落としてしまいました」

     

「ノア、私の事を魔女と呼ぶことを許可するわ」

「私も三時間前に魔王と呼ばれたばかりだよ。魔女なんて可愛いじゃないか」


「ノアの魔王伝説は不滅だったのね」


 

 それより五十万の兵が守っていたということは大切な人か物が

あったんだろうな。フレア弾の一斉投下か。



 アレシアの王城も広いと思ったがスケールが違うな。


「あり得ない広さね」

「芸術的価値も凄そうですよ」

 都市の西から中央の王城までだけでも百キロ程度はあるな。これで

南北も同等以上あると考えれば一都市だけで岩手県の二倍以上あるのか? 


「あら、宝物庫は荒らされちゃってるのね」

「若君、物資を持ってきて正解だったようですね」

「ここも一面焼け野原になる予定だったけどね」


「さすがは先輩魔王様ですね」

「反乱が起きたとか聞きましたが」

「元なんとか国民の寄り合い連中が起こしたようだね」


「なんとかってアルタイル王国も入っていそうね」

「アルタイルの元辺境伯と伯爵に会ったよ」


              

「あーあ、めんどくさいわ。今日は寝ましょう」

「そうだね、城の中を歩き回っていたら九時だよ」

  

俺も寝るか、客間でいいかな。



 

そして十八日に起きてみれば既に昼過ぎだ。


「若様、お目覚めですか?」

「ヤンとニコじゃないか」

   

「言いたい事は判りますよ。指揮はどうしたでしょう」

「そうだな」


「新型トルネード弾はやばかったですね。事前に見ておかなかったお陰で

大量虐殺者になっちゃいましたよ」


「あれはエクレールでも二百発で廃墟になるね」

「あれを笑って渡したダンが怖いですよ」


「それで中央軍はどこにいるんだ?」

「本隊はこの北の……百キロ?」

「二百五十キロ程度離れた所に本隊はいますが

前線部隊は明け方にここに到着しました」


     

「次は東かそれとも南へ侵攻か?」

「微妙ですね。東は大魔女シャルロットの大虐殺で逃げ出しましたし

中央も俺達の悪名が兄貴に届きそうな位に旋風を巻き起こして

停滞してますよ」


「ヤンの言いたいのは敵は極度の混乱状態で東へも南へも進めないと

いうことですね。北へ向かえば確実な死が待ってますし」          


大魔女に魔王の弟子といった所か

もう一時過ぎか。どうするかな?


  

「まずは飯だな。その間に事情を説明してくれ」


 

おかかのおにぎりもいいな。タマコは元気かな

まずは難民がいるから南部制圧かな。 


「……ですね。それでマイセンとマーチの港に人が集結中なんですよ」

「若様、聞いていましたか?」

「あらかたね」

「ではどうします?」

    

「港に人が集まってるんだろう? トレミーかロアンに連絡すれば

いいんじゃないか。受け入れるかは別問題だけど」


「最後の部分しか聞いてないじゃないですか

今の課題は外にいる……親フリーダムの人間の処遇ですよ」


「フリーダムが好きな物好きが国外にいるのか?」

「簡単に言えば反帝国と反キングダムと反イシュタルの寄り合いですが

獣人排斥運動に関わっていたような者は全て去ったようです」



「中央軍はどこまで来た?」

「北に五十キロ程度ですね」

「今日は鍋でも振る舞って明日の朝の七時に入ってきて貰おう」

         

「いいんですか?」

「ああ、多分イース教徒が結構いると思うぞ」

「わかりました」



   

そして十九日、今日も寝ぼけているが

起きたら全ての人間が中に入っていたようだ。


「お前ら、反乱起こされたらわたし達は死ぬぞ」

「銃も刃物も奪ってありますし難民の六割程度は死にそうですよ」


「それはいいとして、南部へ進むか?」

「それしかないですね。でかい空港は手に入りましたし

南部攻略を終わらせましょう」


 一斉反乱の影響が大きいとはいえ       

まだ侵攻開始してから二十日も経ってないのか。

 

お読み頂きありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ