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第五十七話:長期休暇も悪くない


 キングダムとの戦いから一ヶ月、キングダム兵はバルバロッサとロアンの

怒りを買い三百万を超える兵士は奴隷に落とした後に鉱山行きを名目に

集められて毒殺、その他の住民もほとんどは奴隷に落とされたらしい。


「コンラート、長官が休暇を楽しまなくて良いのか?」

「三週間も休暇を貰ってもすることがありませんよ」


「兵士達は旅行に行っているそうじゃないか」

「長い間、戦争が続きましたからね。息抜きが必要なんでしょう」


 空軍と海軍は三週間の休暇で陸軍は三交代で休暇だ。

更に職員も二交代制で休暇で希望するなら労働者もお休みという

国の機能を低下させるレベルのバカンスだ。

  

    

「兄貴、まだバベルの街、いや都市を作ってるみたいですよ

金が余ってるんですかね?」

    

「豊富な労働力のせいだろう。私も八千万も奴隷がいたら巨大な王城を

作ろうかと少しは考えるよ」


「奴隷だけでうちの人口の倍近くとは豪勢ですね」

「まあ、兵士が減ったのは有り難い。うちもそのお陰で休暇が取れるわけだ」

    

「工房は三割は居残りみたいですよ」

「働くのが好きなら止めはしないよ」


  

「若君、ご飯でも食べに行きませんか?」

「そうだね、今日は女性陣がみんないるし行ってみるか」


「兄貴、俺も」

「情報部はみんなが休んでいる時が仕事だぞ」

「大声で言っちゃっていいんですか?」

「もうお前が情報部の長だって事は子供でも知ってるぞ」

「そうそう、ヤンが情報を持ってくる回数が多すぎるのよ」

「ニコは新婚を楽しんでるから、俺とリリーナとデニス夫婦にヨハン夫婦に

コンラートだな」  


       

外で遊ぶ子供が随分と増えたもんだ

ヒルダがエクレールの人口が二百万を超えたとか言ってたな。


「今日は満腹亭に行きましょう」

「ミーア、判ってて言ってるのか?」

「もちのロンよ」

行ったことがあるならいいか。


 

「うゎ、なんなのこの行列は?」

「三十分待ちは当たり前だぞ」

「そうそう、美味くて量が多いときてるからね」


「私は天丼を食べたいかな?」

「そんな和食は置いてねえよ。ラーメン屋だぞ

海老が食いたいなら海老そばだな」


 四十分並んだか。早いほうだな。


「おやじ、Wチャーシューの全部入りの味噌大盛り四人前に海老そば二人前と

そうだリリーナはどうするんだ?」


「……わたしは鰹節ご飯を下さい」

「うちの裏メニューを王妃様が知っているとは光栄だ

煮卵を二個サービスするぞ」


「ほんとリリーナって節約タイプよね」

「若様、もちろんおごりですよね」

「そうだな」

  

                 

「お待ち、熱いからな」

 

「何、この山のようなネギは?」

「ここのラーメンはみんなネギは大盛りだよ」

  

 煮卵もメンマも良い味だ。味噌も完全に庶民に普及したと言って良いだろう。

 


 

「「もう……これ以上は食べれないわ」」

 

「「僕が後を引き継ごう」」

 

「食った、やっぱりWチャーシューは鉄板ですね」

「美味しかったね、次来る時は醤油に挑戦だね」

「鰹節ご飯も昆布の味が出てて美味しかったです」


  

「さて勘定も済ませたしこれからどうする?」

「カラオケ」

「ビリヤード」

「ローラスケート」

「おいおい、お前達妊婦だろう」

        

「カラオケでいいか」



「いらっしゃいませ、七名様ですとパーティルームの使用で

小金貨二枚でお飲み物は最初に承ります」


「それじゃレモンティを七人前お願いします」

    

 うちはカラオケと言っても未だに民間用のパソコンは開発段階なので

レコードを自分で入れ替える方式だ。


「行きます、撲滅アルタイル」


「死ね、死ね死ね死ねアルタイル、我らは最強航空師団、世界の全てを

焼き尽くす……」


 一人四曲歌った所で時間だ。    



「次の休みは話題の映画の『アレシアの落日』を観に行きましょう」

「僕としては『バベルの悲劇』の方が良さそうだけどね」


 どうもうちの国は戦争関連の物が多すぎるな

軍事一色は良くないんだけど、これもジュノー大陸の現状を訴えてるのか。


 

  

 そして七月中旬になる頃には麦の収穫も終わってトウモロコシへシフトだ。


「ノア様、今年も我が国は絶好調ですよ!」

「ヒルダが笑顔っていう事は売れそうなんだね」


「はい、戦争で大陸全体で数千万人が死んだようですがジュノー大陸の

総人口は公式発表で八億以上います。今年は戦争被害と謎の台風の被害で

各国の収穫高は半分以下なので移民が稼ぐ最後のチャンスです」


 公式ね、奴隷は数に入ってないだろうし、徴兵可能な国民の総数を

真面目に報告するとはとても思えないな。

  

「うちの人口は?」

「本国が四千万人に新領土が千八百万人程度ですね

さすがにノルト大陸も危機感を覚えたらしく移民禁止令が出たそうです」

          

 二千万人も流出すれば焦って当然か。うちの国民も六千万に近づいたか

ノルトが八千万に北方大陸が七千万と西大陸か。


「何トン程度売れそうだ?」

「既に大麦と小麦を合わせて七千万トンの注文を受けています

トウモロコシの注文も六千万トンです。これが全て星金貨になるんですよ」


 ヒルダはお金が好きだな。そういう顔はユリアン以外の前じゃ

見せちゃダメだぞ。


      

 そして遂に本国の流通は限界を迎えたという事で王都エクレールと西部の

ルミエールにエクレール東部のブルームと中央のサザンクロスに南の都市の

セーヌを改名したセリーヌの五都市体制ではキャパオーバーとなり

エクレールの西に一つ、サザンクロスの東西に一個ずつの

都市を建設する事になった。


「若様、新領土の方は都市建設はいいんですか?」

「サウス系の街が四つあるからな。作るとしても来年以降だ」

「でも中央がガラガラですよ」


「やはり流通拠点として中央に一つは必要か」

「ないと不便ですよ」

「仕方ない。グランシャリオと命名してベルとハマーンの南の分岐点に

一つだけ作るか」

 

「そうですね、あの辺に都市があると空軍の活動も楽になります」


「ノア様、アレス鉄道の軌道的には少々東のベルよりになりますが」

「それでいいよ。レールを増やすのは簡単だけど

せっかく軌道に乗った運行スケジュールを崩すつもりはないよ」


 既に本国は三十分に一本の急行列車と普通列車に加え二十分に一本の

貨物列車の運行のお陰で運行ダイヤは限界に近い。

 それは単線仕様の新領土も同様だ。


 山手線なんていうのはある意味人類の英知と呼んでもいいだろう

あのダイヤを最初に組んだ人はきっと仕事のしすぎで疲れていたんだろう。


「助かります」

    

「リキ、次のアレス鉄道の新型魔道機関車は決まった?」

 

「それがダンさんがディーゼルを押すんですが、鉄道幹部は蒸気が良いと

言うんで話し合いは平行線ですね。しかし今年の春に東の山にトンネルが

完成したので今は大陸横断鉄道の列車の設計でみんな燃えてますよ」

    

 アレス鉄道も単独で黒字決算だしそろそろ民営化が必要か?

東西五千キロ以上の横断鉄道か。一体何日かかるんだろうか。


 

 

 フリーダムは主要穀物の収穫期以外が工事本番なので八月末から一ヶ月は

公共工事にシフトする。今は以前の週休二万アルから月にアレス通貨で

金貨二枚の五倍に賃金も上がっている。

  

「デニスもこれで三人目か」

「その言い方だとまるで妾でも囲っているように聞こえるじゃないか」

「新しい嫁さんを娶りたいのか?」

「違うぞ」


「ミーアは四人産んでるし。今年の米の時期にはリリーナも二人目だな」

「ニコも来年にはパパらしいですよ」


「仕方ない、二人の為に大お見合い会を開くか」

「うちの住民の六割は女性だっていうのに、高給取りで二十歳までに

結婚出来なかったら笑い者だぞ」 


「いつ開きますか?」

「十月に入ると米と大豆収穫の修羅場が待っているから

九月中に一回目を開こう。移動費用と滞在費は私が持とう」


「そうなるとエクレールと開発がピークのサザンクロスの西のベガと

エクレールの西のドロシーの三カ所がいいかと」

        

 サザンクロスの東なので東の街はデルタで西はベガじゃないが

星繋がりでベガでエクレールの隣は婆ちゃんにちなんでドロシーだ。


「そうだな、参加年齢は自由で女性参加者は移動と宿泊費を全額持って

パーティ資金は男性の参加費から取ろう」


 

     

 それから一週間後に第一回目としてエクレールでパーティだ

二回目がドロシーで三回目がベガの予定らしい。


「若君、女性参加者が八万人に男性参加者が十二万人程度ですね」

「将来的には三万人程度を収容できる施設を作りたいね」

        

「今日は快晴ですし飛行場でも十分かと」

帝都では三十万人以上を収容できる施設を建設中らしいが

うちは開発ラッシュのお陰で人員の絶対数が足りない。

  

    

「みなさん本日は良く集まってくれた。今日参加してくれた中から

縁があって結ばれた夫婦には私が作った高性能の五十キロ収容可能な

マジックポーチを結婚式に贈らせて頂く。ではパーティの始まりだ」


   

 朝の十時に始まったパーティはダンスパーティとランチを挟んで

午後からは酒も入って午後六時まで続いた。


「兄貴、住んでいる所を教えてくれた子が七人いましたよ」

「若様、わたしは三人ですね」

「コンラート、三人と言ってもマイちゃんとメアリーちゃんを含んでだろう

実質一人じゃないか」


「しかし、航空機が一機もいませんでしたね」

「今はエクレールの近辺に一番艦がいるからな。他の飛行場へ移転させてある」


「そろそろ十三型は引退ですね」

「今年に入ってから二機も緊急脱出する事件が発生しているからな

冬には焼却処分だな」


 初の国産機にしてはよくやってくれたと言った所だろう

改良点は数多いが、その改良を施した十四型もあと三年程度の寿命だろう。


 ルッツ型戦闘機の後継機が生まれないと我が国はかなり戦闘力において

劣勢になるのは明白だ。


 

    

 そして麦とトウモロコシに次ぐ過酷な米と大豆の地獄の収穫シーズンだ

去年は過労で三十人程度が倒れたらしいが、今年はコンバインを増産してある

かなり分の良い勝負だろう。これは農家に取っては戦争だ。


「今年はテンサイもかなり取れそうなので大変ですね」

「テンサイ対応型のハーベスタが間に合ってくれて良かったよ」



 ここはエクレールのセントラルステーションだ。

 営業開始は朝の五時五十分で夜の八時までの営業で鉄道とバスの

一大拠点でアレス鉄道でも最大の駅だ。

  

「……次は第十六陣の農耕機械を貨物列車に連結開始だ」

「班長、蒸気では十車両までが限界です」

「仕方ねえな、次のディーゼル便に回すぞ」


 

『九時発エクレール発デルタ方面行き五号急行列車は

十一番ホームより定刻通りの発車です』

 

『四番ホームに東行きの普通列車が到着します』

『エクレール空港行きの定期バスが九番バス乗り場から五分後に発車します』


 

「よし、次の貨物便が来たぞ。気合い入れて十分で乗せるぞ」


 二十四本のホームとバスの停車場所が二十だと管理するのも大変そうだな

アレス鉄道は給料が良いから何とかなりそうだが。


 戦争がないのもいいもんだ。

    


お読み頂きありがとうございます。


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