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第四十七話:学食の食事もまあまあです


 季節が田植えシーズに入った頃に航空機研究工房から第一号機が

出来たので見に来て欲しいと連絡があった。


「マルコ、忙しそうだな」

「増えた三千隻もの輸送船をどうすればいいんですか?」


 ぷかぷか浮いてるのは入港待ちの輸送船だったのか

積み込みにも時間がかかるし農務のニコより忙しくはないだろう。    


「頑張ってくれ。それより新型機を見に行こうよ」



いつの間に滑走路なんて作ったんだ?

 遂にF-4かA-7の後継機が出来たのか。半年待ったな。


「それでは初披露です。新型一式戦闘給油機です。四発魔道エンジンに

艦首にノア砲一門、後部にノア型機関銃を一門装備で最大搭載燃料は

五万五千リットルです。全長三十八メートル全幅四十八メートルです」


 あれ? 四機渡した空中給油機の試作機だったのか

給油機に武装をつけたか。


「では乗ってみましょう」

      

 トルネード弾も積んであるんだな。今度は飛行士二人の他に機関士と

給油班が必要なのか。


「緊張しますね」

「そうだな、転移魔法を使えない人間は落ちたら終わりだからな」


   

 悪くは無いが、高度六千メートルに到達するのに十五分はかかった

空母のレーダーで探知出来れば互角以上に渡り合えるが

緊急発進での迎撃は無理だな。最高速度が五百キロなのは魅力だけど。


 

   

「ノア様、感想は如何ですか?」

「こちらから攻撃するなら問題ないけど、アルタイルの飛行艇は高度

四千メートルまで三分程度だった事を考えると上昇率がネックかな」


「やはり急務は戦闘機開発ですか?」

「これも十分合格点だよ。これで先制攻撃を受けてもかなり南部まで

逆侵攻出来るからね」


「今は余剰人員を使ってノア型空母の二番艦と三番艦を建造中なので

完成すればこちらから先制する事も可能ですよ」


 それでいつもより輸送船が多かったのか。

 流石に原子力を理解するのは無理だよな。出来ても実験室も作れないか。


       

そして五日の飛行と整備を繰り返して初号機の限界速度は

時速六百キロで最高到達高度が八千メートルで航続距離が三千キロに

僅かに届かない程度の高性能ぶりを発揮した。



 今日は久々の領内視察。国内視察とでも言うべきか。

 今日のお供はヤンとコンラートとミーアだ。シャルはそろそろ出産

らしいので仕事からも離れて療養中だ。

  


「若様、今日は車で出かけるんですか?」

「そうだな、農地を見回って学校見学にしよう」


 車はディーゼルエンジンのトヨタのハイエースだ。


 一番の国の収入源の自動車税と重量税は俺が二十歳になったら導入すると

宣言しており、ヒルダが自賠責保険の有用性を街の人間に説いたようだが当然

理解されず、各種自動車が改造工房に一万台、国内に九万台が流通している。


        

「俺としてはもう少し道が増えるといいと思うんですよ」

「例の高速道路案はヒルダとデニスに却下されちゃいましたしね」

「ノア兄、うちは鉄道網の整備が進んでるから

道路は不要と思われたんじゃないの?」

 

「そうだね、フリーダムで車を使うのは九割りは仕事用だし

高速道路はコンクリートだから農地みたいに土魔法で平らに出来ないからね」


 高速道路の整備や管理なんて人件費や維持費を考えると

とても採算が合わない。みんなには列車を利用してもらおう。

 今は国内路線だけだけど。


  

「あれって、トラクターですよね。後ろに積んでるのはなんですかね?」

     

「こんにちは、今日は農作業ですか?」

「ノア様、そうですよ。今日はノア様から頂いた新種の米を苗にしたものを

うちの畑に田植機で植えるんですよ」


「おいちゃん、その田植機って乗る場所がないけど、まさか手で押すつもり?」  「ミーアちゃん、そうだよ。普通の米は爆撃機で一気に蒔くけど

新種は数が少ないから手動式の田植機で植えるんだわ」


「大変そうだけど頑張ってね」

「ありがとうよ。昔に比べればかなり楽だけどな」


 かなり探したが時代の影響か乗車型の田植機は売ってなかった。


 

      

「兄貴、見た感じ今年も麦は豊作って感じですね」

「そうだな、作物を植えられる農地はまだまだ余ってるんだが

今の人口だとこれ以上は増やせないな」


「若様、三歳以上で十二歳未満の子供だけで約三百万人。若様の政策の

影響を受けて三歳未満の赤ちゃんは既に百五十万人です。これからですよ」


 アレス領になってからの餓死者はゼロで一昨年の老人の死亡者五十万だが

去年は十万人程度だし今年はもっと下がるだろう。

  

 でも交通事故の死亡者が出たらどうするかな?


「そうだな、努力を惜しまない移民が五百、いや二百万程度欲しいけどな」

「しっかりしなさいよ。二十年後には人口がきっと四千万人くらいになるわよ」

       

 産めよ増やせよ政策か。どこまで行くかは運次第か。


 

「それじゃ学院の見学に行くか?」

「兄貴、学院は九月開校じゃないのか?」

「いや、十一月開校になったようだぞ」


「冬に始まるって珍しいな」

「ヤン、大豆の収穫のヤマ場を超えた所で開校よ。丁度良いじゃない」

「ほんと、フリーダムって農業優先なんだな」


 フリーダムの収益の八割は農作物だぞ。

 その辺を学院でどう教えているかだよな。



       

場所は変わって王立第一学院。フリーダムにある六十校ある学院の内で

エクレールに最初に出来た学院だ。


「アリス、セーラ、ランチだろう。一緒に食べよう」

「お兄様、お友達も一緒にいいかしら?」

「もちろんだよ」


「初めまして、アリスの友達のメアリーと言います」

「わ、わたくしはマイと申します」


「メアリーちゃんとマイちゃんね、よろしく。となり居るのがミーアで

その横がヤンとコンラートっていうんだ」


「コンラートさんというと空軍長官のコンラート様ですか?」

「一応そうなるね」

           

「私の父は第一航空大隊所属の飛行士なんです。お会い出来て光栄です」

「あそこは優秀な戦闘機乗りが多いからね。君の父君は優秀なんだね」

  

「俺だってじょうほう……「痛っ」

「兄貴、酷いですよ」

「(黙れ、影の組織だっていうのを忘れたのか?)」

「(そうでした)」


     

「お兄様、内緒話は良くないですよ。それよりランチに行きましょう

今日はお肉が食べたいから第二食堂がいいかしら」


  

「若様、食券機ですよ、懐かしいですね」

 俺達が学院に居た頃は争奪戦だったからな。


「アリス、並ばないのか?」

「私達は事前に購入してあるから大丈夫なんですよ」


    

「兄貴、ラム肉のワイン煮込みセットを買ってきました

なんと一人前でアレス銅貨で二十枚の格安価格ですよ」


 アレス通貨は銅貨二枚分だから四百アルか

子羊のランチにしては安いか。


 献立は子羊の塊が四個にごぼうと卵の炒め物にアスパラガスとチーズに

スープでランチ購入者はパンやご飯はお替わり自由か。    


「「「「いただきます」」」」


「マイちゃん、今のおまじないはなんだい?」

「コンラート様、知らないんですか? アレス教の食べ物を食べる時の

感謝を伝えるおまじないですよ」


「おまじないね、アレス教?」

「コンラート、わたしも初めて聞いたぞ。爺さんが勝手に広めてるんだろう」

「ノア様、おまじないを言ってから食べないと不幸に見舞われるんですよ」


「そうか、仕方ない。いただきます」


 言わないと異教徒だとか、そういうのに比べればマシか。

俺が『いただきます』と『ごちそうさま』を言った方がいいと提案したのは

覚えているが、まさか宗教を利用して普及させているとは思わなかった。  


「若様、これは山羊のチーズでしょうが中々いけますね」

「このアスパラも結構美味いわね」

    

「しかし、随分と学生が多いですね。確か一年間の授業料が

黒金貨一枚でしたよね?」


「うちはお父さんが飛行仕官だし、副職の利益も入れると

一年で星金貨二枚行くそうです」

「うちのお父さんは漁師ですけど、お婆ちゃん達が魚屋さんをやってるから

去年の収入は星金貨で二枚以上って言ってました」


 やはり自分で船を所有している漁師は実入りが良さそうだな

 アレス領は三世代家族は当たり前で四世代家族もかなりいるらしいし

信頼出来る家族のバックアップは絶大のようだな。 


       

「みんな頑張ってるんだね。将来は家の仕事を継ぐの?」

     

「いえ、第一志望は工房技師です」

「私は技師の……奥さんになりたいです」

   

 技師は一人前で星金貨二枚で班長で星金貨五枚の高給取りだ

それに工房では食事が無料だから人気が出るよな。


「そうなのよ。だから無理してでも子供を学院に通わせた方がいいのに

理解出来ない親が多いのよね。奥さんになるにも教養がないとね」


「そうだね」


 

     

 午後も選択授業を見学したが電気理論とオートバイの実習だった

授業は一時限で四十五分の六時限制で宿題はないが予習してこないと

着いて来れなくなるというレベルの高い授業内容だった。


「いや、俺はアルタイルの学院で良かったよ。ここだったら留年してたな」

「学院には剣の授業が無かったし平民が経営学を学ぶ時代が

来たんだと思うと時代の流れを感じたよ」


「そうね、フリーダムはノア兄の家族以外は全て平民だもんね」

「ミーアは貴族になりたいなら爵位くらいやるぞ」


「辞めておくわ、それでなくてもヨハンは毎日忙しそうなのよ」


         

 ここにいる人間とリリーナ以外は目の回るような忙しさなんだよな

倒れる前に手を打たないとな。


お読み頂きありがとうございます。


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