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第四十二話:日本に戻ったのはいいけどね


 帝国への宣戦布告から半月、穏やかな日が続きそろそろ内政と外交に

力をいれなければならなくなった。


「トレミー帝国を除く西大陸の国々が連盟で今は目録だけですが  

ブラックペッパー十万トンを陛下の即位記念に、それと星金貨三千万枚分

相当のアレス通貨を買い取りたいと言ってきています」


「西大陸のブラックペッパーが無くなってしまわないか心配だね」

「一大産地のようなので大丈夫でしょう

西大陸に爆撃機を寄越すなというメッセージだと存じます」


「あんな所まで行ったら帰って来れないよ」

「航続距離は秘密ですから、勝手に想像しているのでしょう」


「ヒルダ、三千万枚分も用意出来るの?」

「光金貨は偽造が怖いですから外すとして、星金貨二枚分と規定して

アレス星……いや海金貨を用意しましょう。それに加えて七割程度を

アレス黒金貨から下の通貨を混ぜて送れば相手の負担も大きく減るでしょう」 

 

 結局、二の倍数を辞めるつもりはないのか。なんで海なんだろうな?

 


「それで次は学校建設だよね」

「はい、ただ一つの友好国のトレミー帝国は戦争中で

学院に行けない人間の教育は急務です。週に五日の余裕のある家庭を対象に

した通常学院と週末の二日のみの学習を行う学院を建築中ですが

ノア様から頂いた予算が底を尽きました」


「星金貨二万枚も使っちゃったの?」

「計画を進めていく内に学院に孤児院等の施設群を併設する案と母親が

安心して仕事が出来るような工房建設を建て始めた所

星金貨であと二万枚ほどかかる見積もりになりました」


 孤児院というか保育園と女性向けの工場か? 隣接してればお迎えが

楽になるし問題無いか。


「わかったよ、あと三万枚だそう。それとそろそろ高級官僚を決めようよ」

「高級官僚といいますと?」


 意味が通じないのか、貴族も上級とか下級とか言ってるもんな。


「また貴族制度を作るつもりはないけど、内務卿とかそういうやつだよ」


「ノア様、内務卿となると国政全般になってしまうので、内務省、工部省

農務省、軍務省、財務省と新たに文部省と軍の三長官に分けては如何ですか?」

    

 ヨハンめ、話のわかるやつだ。


「それでいいよ。それじゃ財務長官はヒルダとして、農務長官はユリアンで

いいのかい?」


「申し上げにくいのですが、国の要職の長官職を夫婦で独占するのは問題かと」

「それじゃユリアンは農務次官でヨハンが内務長官でデニスが工部長官で……」


「兄貴、俺はどんな長官でもいいですよ」


 ヤンに任せたくないと、俺の第六感が警鐘を鳴らしてるんだよな。


「兄のデニスが長官だから弟のヤンもダメだ」

「そんな……」


「マルコが海軍長官でコンラートが空軍長官でアレックス先生が陸軍長官だから

よしニコを農務長官にして、新規の文部はお爺さまとお婆さまの合同でいいか」


「兄貴、軍務のトップが空いてますよ」

「仕方ない、三長官が真面目なら暇そうだしマリア母さんにやってもらおう」


 家族を使い回すとは情けないが新規に人が入ってこないんだよな。

 


「しかし、第七食堂研究部のみんなが国の要職を任される日が来るとは

想像もしていませんでした」


「俺なんて貴族になる事すら想像してなかったよ。今は違うけどな」


「第五キッチンでの誓いの言葉を思い出しますね」

「死ぬとき死ぬ場所は同じってやつか?」

         

「まだ数年前の事ですけど懐かしいですね」


「いろいろ大変だろうが頑張ってくれ」

  

    

 これで俺の仕事も減るな。鎖国に近い状態だし暫くはゆっくりするか。


 

        

「ノア様、なぜわたしを重臣の列に加えてくれなかったんですか?」

「リリーナか、そのなんというか……この前にあんな事があったから

リリーナを僕のお嫁さんにする事にしたんだ」


      

「タマコがご主人様のお嫁さんですか?」

「……嫌なら別にいいんだぞ」

     

「うれしいにゃ。ノア様の為に一杯子供産むのです」


 そろそろ結婚しないとリリーナが後ろ指さされちゃうし

俺も他に相手がいないから職場結婚も仕方ないだろう。

       


 

 そして何故、寝室の前で待ってる。

 

「兄貴、俺も要職につきたいです」

「おまえもか」

  

「だって、ミーアも次官になるとか言ってるんですよ」

「いいだろう、お前を情報部の長官にしよう。これは公には出来ないが

豊富な予算に優秀な人材を集めて他国は勿論、国内の情報も集める

影の軍のトップだ」


「影とはいえ、軍のトップか。俺やります」

「それじゃ、優秀な人材を五百人以上集めて、訓練して他国へ送り出してくれ

二度とうちの国民をそそのかすような輩が出ないように見張ってくれよ」

  

       

「兄貴、成果にご期待下さい」


 予算の無駄使いになってもそれは仕方ない

汚れ役だし脳天気の人間の方が向いてるだろう。


 

  

それから忙しい日が過ぎ今日は年末だ

俺も十五歳になるのか。転生して十五年だ。


「ノア様、飛行工房と造船工房から開発に待ったがかかりました」

「何を待つんだ?」

「十五型の戦闘機及び爆撃機の改良案が出ず

造船技師もエンジンの出力が出ないので

そういう不良品を納品出来ないので時間を頂きたいとの事です」


 だんだん職人気質に磨きがかかってきたな

あたらしい技術が必要なのか。

 

「職人をまとめているのは誰なんだ?」

「ダンという男で私達がヘンドラー王国に修学旅行に行ったときに匿った

奴隷の男ですよ」

 ダンか、いつの間にか工房のトップになっているとは才能はあるんだな。

    

「具体的には何か言ってきてるのか?」

「ラフなイラストでもいいので、一度自分達の目で見れば何とかなると

もうしておりますが……実際は魔法でコピー出来ると言っております」


 戦闘機や爆撃機にイージス艦のイラストならデッサン程度なら可能だが

コピーできるなら実物を用意してやりたいな。

 


 

『その願い叶えてやろう。十五歳の記念と新婚旅行で半月ほど戻してやろう』


 

 これは神様の声だよな。聞き間違えじゃないよな?

 おいおい神様、そんなに簡単に異世界を行き来できて良いのか?


「ヨハン、大事なことだよく聞いてくれ。俺は暫く他の大陸の様子を

探りに出かけるからヨハンが国王代理として国を預かってくれるか?」


「ノア様は技術班の苦悩を察して自ら他国の技術を盗みに行くのですね

わかりました。このヨハン、身命にかけてフリーダムをお守り致します」


 新たに現れたタイマーは既に三時間を切った

どうする俺一人で地球へもどるのか?


      

「タマコ、僕は一時的に地球へ戻る事になった。ヨハンに任せてあるが

タマコじゃないリリーナも上手くサポートしてくれ」

      

「ノア様はあの屋敷に戻ってしまうんですか?」

「大丈夫だ、武術の訓練もしたし今度はやられたりしない」


 そろそろ時間だ。


「それじゃタマコ、元気でな」


  

 そして、俺の意識は途切れた。



 ◇


 

 ここは、俺が死んだ倉庫の中か?

 あれ、髪の色が黒、それに肌の色が……。



 あれ、隣の女性は……タマコか?

 

「おい、タマコなら起きろ」

       

「痛いです。ご主人様」

 タマコだな。見た目は三十歳程度に見えるが。

      

「タマコ、状況を把握しよう。どうやら日本人に戻ってしまったようだ」

「それは大変ですね」

  

「一人で呑気に鰹節なんか食べるな!」

 鰹節、もしかしてアイテムポーチの中身を取り出せるのか?


 なんだ、取り出せるじゃないか、異次元倉庫も自由だ。

 

「ご主人様、手帳が二枚と財布がありますよ」

「これはパスポートだな。あとはカードだけか」

 


 なに、名前が斉藤一で年齢が三十二歳だと

それに発行年月日が千九百九十二年の年末になってる。俺が死んだのが

二千十九年の暑い日だから二十七年前か。財布はカードだけで金はないか。

 


「リリーナ、お前のパスポートはどうなってる?」

「名前が斉藤里奈で三十歳で……既婚にゃ」


「変な所でデレるな」


 そういえば、俺の名前って何て言ったっけ

あれ、思い出せないぞ。名字は斉藤だったはずだけど。


「リリーナ、僕の名前を覚えているか?」

「ご主人様です」

 そう呼んでいたのか? 猫じゃ仕方ないか。


 とりあえず猛烈に腹が減った。まずはレストランに行って

食事と情報収集だな。


「【ウィンドカッター】」


「ノア様、全損ですよ。おまわりさんがくるのでは?」

「まあ気にする必要もないだろう」


 金は銀のインゴットをどこかで売るか?

               

「おい、リリーナ、その一万円札はどうした?」

「アイテムポーチからお金を取り出したら出てきました」


 なるほど、星金貨を取り出せば一千万円が出てくるのか

これなら豪遊できるな。

   

「まずは飯だな、転移、東京港区」

 転移出来ないか? 短距離転移は可能と。


 

「ノア様、あそこにおそば屋さんがありますよ」

「入ってみるか」


「いらっしゃいませ」

「カレーライスに山かけそばを下さい」


「わたしは天ぷらそばとむじな蕎麦で」

「僕の前で海老を食べようとは良い度胸だ。お姉さん天ぷら蕎麦は

キャンセルで野菜の天ぷらの盛り合わせとミニカレーライスを追加で」


「あら、わたしはお姉さんと呼ばれる年齢じゃないと思うけど」

「これはすいませんでした」


 俺は三十二歳だったな。お姉さんはどう見ても大学生といった感じだ。


「ノア様、わたしは辛いのは苦手なんですが」

「豊富な食材の並ぶフリーダムでもカレーだけは食べれないぞ」


「沢山、材料を買っていけばいいじゃないですか」

「それもそうだな」


「熱いご夫妻に当店自慢の熱々の蕎麦ですよ」


 夢にまで見たカレーライスか……味はさすがに蕎麦屋の味付けだが

これも悪くない。

 蕎麦も美味いなうどんとは違う味わいがある。


「ノア様、このカレーはダシが利いてて美味しいです」

「学生さん、湾岸戦争はどうなったのかな?」


「あら小沢総理から発表があったじゃない。陸軍で戦死者百五十名を

だしたけど、我が日本とアメリカを含む連合軍の大勝利よ」

「そうだったね」


 どうやら同じ世界線のようだが小沢さんが首相になっていて

湾岸戦争にも出兵したようだ。 


「銀貨でおいくらですか?」

「銀貨……そうか、百円玉ね。百円玉なら三十二枚ね」

                      

「すいません、ちゃんと一万円から払いますよ」

 

美味かった。久しぶりの味わいだったな

あれだけ食べて三千円か、令和と比べても安いな。 


「リリーナ、銀貨だったから良かったが、間違っても星金貨とか言うなよ」

「ごめんなさい、あ、な、た」

 まったく反省してないな、この自由気ままな所は猫のままだな。


 

 とりあえず東京に行ってみないと始まらないな。


お読み頂きありがとうございます。


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