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第四十一話:王国樹立


 高慢な使者を追い返して半月、小麦は今年も大豊作で、その量は

四千五百万トン以上らしい。そしてキグナス帝国は俺がアルタイル王国と

手切れをした情報をどこから掴んだのか、今ではお隣さんだ。


「ノア様、これで東と南を帝国に囲まれましたね

帝国領へ行った領民も百万近いので我が領の領民も

成人だけですと千五百万人程度ですね」


「農奴は小さい畑を耕していたから実質七百万人もいれば農地は問題ないし

技術者や職人や商売を始めた者は残ってくれた。暫くは様子見だな」


「その領民というやつなんですが、もうアレス領では無いですし

アルタイル王国とは縁もなくなったんだから国名を考えませんと」


「アレス国でいいんじゃないか?」

「そうね」


「いえ、アレス家は前陛下の下さった家名。それを名乗っていては

アルタイル王国からの完全独立とは言えません」


「それじゃラズベリー王国か?」

「いっそ、ストロベリー王国の方がいいんじゃない」

「ジャム王国もいいかも」

「それならノア王国は?」

 

「ノア様が退位したら廃れるじゃないか」


 二転三転したが自由が売りという事でフリーダムという安直な

名前に決定した。


 

 

そして一週間後に王国樹立宣言という事になった。

 

「国民の諸君。我々はアルタイル王国に無償で大量の食糧支援を行ったが

爵位の没収と領地の没収及び獣人の奴隷化と言われ無き要求を突きつけられた

私はそれを拒みここにジュノー大陸においての民族の平等を宣言して

フリーダム王国の樹立を宣言する」


 

「「国王陛下万歳」」


「ノア様万歳」

          

「フリーダム万歳」

「「「「自由万歳」」」」


 やはり自由はいいよな。テンサイも充分育っているし

胡椒を除けば食料に不満はない。

 服の材料も日本とは反対にシルクはほとんどないが、コットン、リネン

それにウールの資源は捨てるほどあるから困らない。


    

「陛下、とうとう独立を果たしましたね」

「ヨハン、今まで通りノアと呼んでくれよ。僕をバカな王様にしたいのかい」


「わかりました。他の者にも言っておきましょう

それで城の建設はどうします?」


「今は開発費にお金がかかってるから無くてもいいよ」

                   

「さすがノア様です。巨大な城を建てろと言われたら諫言申し上げるつもりで

おりました」

「余裕が出来たらお城も考えるよ」


 それから米の収穫が来たが、イシュタルの加護は素晴らしい威力を

発揮してくれて三千五百万トンの収穫だ

そこで問題になるのが輸出先だ。

   


「ノア様、現在、フリーダム家には十三型戦闘機が百五十機、爆撃機が五十機

更に改良を加えた十四型戦闘機が三百機に爆撃機が五百機に長距離爆撃機が

二百機ございます。そして来年には新造艦艇も加わりますので盤石かと」


「海軍と陸軍が正式に発足してからどう動くか決めようか?」


「そうですね、アレックス大将率いる陸軍が四個機甲師団で精鋭六万

陸軍の要望があればすぐに戦地へ行ける予備兵が十五万おり 

海軍も練習航海に余念はありません。後は新造艦が出来るのを待つだけです」


 

 その三日後にユキさんがフリーダムを訪れた。        


「陛下、お会い出来て光栄でございます」

「謁見の間すらない貧乏国ですよ。以前のようにノアと呼んでください」


「そうですか、ではノア様、トレミー帝国に攻め込んできていた北方の国は

食糧不足の影響で撤退しましたが、我が国が弱気になれば二年後には再び

攻め込んでくるでしょう。そこで陛下は北方大陸への遠征を決断されたので

フリーダム王国とは今後も良い関係を築きたいとの事です」


「こちらとしても問題ありませんが

ガイア大陸の他の国は大丈夫なんでしょうか?」

    

「キグナス帝国との戦争で北に目を向ける余裕はないようですので

その点は心配ないかと」


 キグナスも頑張ってるんだな。あまり力をつけない内にお仕置きを

しておかないとうちが危ないな。


「では今後ともよろしくお願いします」



 ユキさんは船団を引き連れていたが、本人は飛行艇でやって来て

お供は僅か三十人だったので簡単な祝宴を開いて翌日には帰国した

お土産は胡椒五万トンだった。


 なんともこちらの事情をよくわかっているお土産だ。

             


そして、そろそろキグナス帝国へ爆撃でもしようかと考えていた頃に

アルタイル王国軍が飛行艇七隻を先行させ、軍艦を三百隻と

輸送船八百隻を伴って我が領海に侵入したという報せが飛んできた。

 

 当然、俺達は飛行艇の鹵獲作業に全力だ。


「【ウィンドブラスト】」

「こちら第三戦闘大隊、敵に攻撃を開始します」


 そして三時間後には一隻を撃沈してしまったが六隻の鹵獲に成功

もしろん当方の損失は無しだ。

 戦闘機と爆撃機を保有する国に飛行艇七隻で攻め込んでくるとは

呆れてくるが、支援機の存在を知らないのならそれも仕方ない。 

   

 

「アルタイル軍がこんなにバカだとは思いませんでした」

「陸上部隊がいないのに飛行艇だけって理解に苦しむわね」


「輸送船を美味しく頂きましょう」

「そうなると港と飛行艇の基地も必要ね」


「港は整備すればなんとかなるだろう」

「では鹵獲に行くぞ」


「「「「おおおおおぉぉぉぉぉ」」」」


 

          

本当に千隻近くいやがる。


「水の精霊にノアが懇願する。我と精霊達の力を合わせ目の前の

障害物達に風の裁きを与えん

【魔力二割、対象前方広範囲、大渦】」 

 


「第四航空大隊全機目標を攻撃せよ。ただし抵抗しない船は避けよ」



 それから半日の戦闘で敵は降伏。帝国領の近くまで曳航してから

船を逆さにして乗員もろとも海に放り出して海軍一万で船の曳航作業だ。


    

「ノア様、九百隻もの船をどうするんですか?」

「ヒルダ、これでも二百隻は撃沈したんだけどな」


「そういう問題ではありません。トレミー帝国との交易に使っている

輸送船が戻ってくる場所がないではありませんか」


「老朽艦を廃船にするか?」

「そんなもったいない事は出来ません。仕方ありません、輸送船に食料を積んで

トレミー帝国へ行かせるのと同時にエクレールの西にある邪魔な半島に港を

作ってそこにまとめましょう」


「それは良い案だね。あそこは川が流れているし流通拠点には丁度いいよ

あそこなら港が四つは出来そうだね」


「国費もかかりますが、爆撃機で精密爆撃を行えば大まかな形はすぐに

出来るでしょう。残りは仕上げだけです」


 爆撃機を使って港を作るとか、財務官僚の思考は理解出来ないな。


 

          

そして五日後にキグナス帝国の使節がやってきた。

 

「陛下、お会い出来て光栄です」

「僕は光栄じゃないけどね」


「アルタイルの艦隊を見事に追い払ったお手並み、真に素晴らしい」

   

「お世辞を言いに来たんなら、僕は用事があるから失礼するよ」


「では、はっきり申し上げる。わが帝国の庇護下にはいられませんかな?」

「お断りだよ」


「では戦闘機と爆撃機を売って頂けませんか?」

「それもお断りだよ」

     

「では設計図だけでも」

「もっとお断りだよ」


「我が帝国と全面戦争になってもよろしいのか?」

「それは大歓迎だね。明日にでも攻め込んで良いのかな?」

    

「アルタイルと帝国を同時に相手になさると言うか?」

「お望みとあれば仕方ないよね」


 高圧的に接すればおとなしく従うとでも思ってるのか?

 ほんとに貴族って面倒だよ。


「それでは帝国の北部のセーヌ川に大きな橋を架けて食糧支援を

お願いしたい」

「それも条件付きでお断りだね」


「条件というと?」

「セーヌ川はうちの川だし橋を架けるというなら戦争だよ」


「あい判った。後悔する事になるぞ小僧。ではご免」


 海運だったら良いって言おうと思ったのに。

        

「ヤン、使者殿は女性に興味がなくなったようだ。もう父親になれない

体にしてあげてください」

   

「兄貴、任せておいてくれ」


 

さて、どうしようかな?


「ヨハン、どうしたら良いかな?」

「フレア弾は魔法師が作り上げた傑作ですが、既に二十万発以上の在庫があり

倉庫を圧迫しております。帝国領の北部、そう新領土に適度に

ばらまいては如何でしょう?」

 フレア弾は外側が鉄で炎魔法で圧縮した熱弾の周りを空気の層で区切って

それが落下した衝撃で弾けると膨張して爆発する爆弾を超える兵器で

魔法が使える人間なら一日に三発程度は作れる代物だ。     


「そうだね、それじゃ三日後に帝国に宣戦布告。その一週間後にばらまこう」

「いいですね。うちを脅威に感じている住民は逃げ出すでしょう」

 

 

そして三日後に俺が直接、帝都の衛兵の詰め所まで行って宣戦布告の書状を

渡して、その一週間後に遂に爆撃機編隊の初陣だ。



 

「第五航空大隊は初陣である。一度我が国の東部へ赴き爆撃しつつ

南下せよ。第六航空大隊は南へ向かい工房を中心に爆撃を行え」


「我らは?」

「第一航空大隊と第二航空大隊も初陣としよう。基本は第五、第六大隊の

護衛任務で帰り際に畑にフレア弾をお見舞いしてこい」


「「「了解であります」」」


最初だし、爆撃機二百機程度の攻撃でいいだろう。


「第五航空大隊出撃」

「続いて第六航空大隊出撃」


「我らも遅れるなよ。第五、第六ともまともな対空装備がないからな」


 二十機くらいは撃墜されるかな?



 

 朝に出撃した四百機の編隊は欠けることなく午後四時には帰還して

爆撃情報を報告していった。

   

「フレア弾三千発の威力は凄まじいですね。報告だけ聞いても

帝国の北半分の畑は全焼ですね」

    

「五月ごろに襲えばもっと効果的だったのに」

「帝国は北部に穀倉地帯を抱えているから、これでも結構な打撃なはずだよ

これで来年の小麦の収穫は二割程度になるだろうね」


「帝国のクレーマーが来ても通さないでくれ。要件を聞いても意味がない」

「わかりました。海の上で追い返します」


 

 まさか第五航空大隊までもが畑に攻撃するとは思わなかった

やはり人口密集地の街への攻撃をためらったか? それも仕方ない。



   


お読み頂きありがとうございます。


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