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第三十五話:胡椒は大切だ


 胡椒を求めて三千里じゃない、精々海を五百キロと思っていたが

実際は船なら半日程度らしいのでかなり近めの西大陸のようだ

どうやら密入国した国はトレミー帝国という国の帝都らしい。


「若様、美味しい魚じゃないですか。醤油もうちのと良い勝負ですよ」

「そうだね。タラじゃないかな」


「お姉さん、ごはんお替わりください」


「ご飯のお替わりは一杯銀貨二枚ですが、よろしいですか?」

「この軽く盛った感じで銀貨二枚ですか?」

       

「コンラート、僕が出すから好きなだけ食べろ」

「それじゃどんぶりの大盛りで」

「はい」

これは銀貨四枚は確定だな。パンも一個で銀貨二枚とは

予想を超える価格設定だな。 


「お肉も魚も美味しかったけど、お米が今一だったわね」

「そうですね、一昨年に収穫したお米で混ぜた感じでしょうか?」

「そんな所ね」


「すいませんが、九人分で金貨二枚と小金貨二枚になります」


 貧乏なアレス領の領民なら一年の食費だな。


「魚が貴重だったのかな?」

「いえ、みなさんはご飯を大盛りで二十六杯もお替わりしましたから

ご飯の代金だけで金貨一枚と銀貨四枚になりました」


「教えてくれてありがとう。美味しかったよ」



「恥かいちゃったじゃない。ヤンとコンラートが

それぞれ八杯もお替わりしたのがいけないのよ」

 

「面目ない、本当に銀貨四枚も取られるとは思わなかったんだよ」

「しかし、あの味で大盛りで銀貨四枚はかなり高いわね」

 

「嫌、あれはエクレールだったら、ちょい多め程度だぞ」

「エクレールだったら銀貨一枚あれば腹一杯食えるのにな」


 今のアレス領は定食を頼めばご飯のお替わりは残さない事を条件に

三杯まで無料でそれ以降も一杯僅か銅貨三枚でお替わり出来る。

 

「エクレールでご飯だけで銀貨一枚分食べたら治療師の診察が必要よ」


 

  

 そして、夜はミーアの隣室のデニスが睡眠不足だったようだが

良い天気だ。


「弟よ、壁が薄い事を理解しているのか?」

「デニス兄さん、すいません」


       

「パンも今一つね」

「これって伝説に出てくる黒パンでしょうか? 初めて食べました」


 勇者伝説には黒パンと干し肉を持って迷宮探索の旅にでるとか

あるからな、憧れがあるのかも知れないな。


「兄貴、お替わりして良いですか?」

「辞めとけ、白パンなら数年分持ってる」


     

「食べたけど、あの貧相な朝食で小金貨六枚だというから困った物ね」

             

 この角を曲がって、左か?

   

 ちょっとまて、右に曲がったから戻る時は右に二回曲がれば良いのか?

  

「若様、複雑な道ですがこっちですよ」

「これは敵軍の進軍を妨げる工夫かも知れませんね」


「あそこにユキ商会って書いてあります」

「シリウス商会の王都支店なみだな」


「若、見てください、星金貨百枚以上の買い物で一割引き

千枚以上で二割引き二万枚以上で三割引きとあります」

「ブラックペッパーが百グラムで小金貨一枚と銀貨八枚ですよ」

「砂糖が百グラムで銀貨一枚です。安くありませんか?」

 

「カカオ豆が一キロで銀貨八枚ですよ。若干安いですね」


「カカオも輸入規制がかかっているからかなり安いかな」

   

 わざわざ来たかいはあったかな。


「すいません、白金貨も持っていますが

大量購入ならアル通貨でもいいですか?」


「構いませんよ」

「それではブラックペッパーを買えるだけと砂糖を二万トンとカカオの豆を

五百トン下さい」


「お客様、……本気でおっしゃってますか?」

「勿論です」


「今、丁度、当店の最高責任者がおりますのでご案内します」


 あれ? このくらいの大店なら砂糖二万トン程度は

余裕だと思ったんだけどな。


       

「ようこそおいで下さいました。当店のオーナーのユキと申します

この度は大量のお買い上げのご注文を頂きありがとうございます」

     

 この人、転生者確定だ。敵じゃないことを祈るしかないか。


「わざわざご丁寧に申し訳ありません。それでブラックペッパーと砂糖と

カカオはありますか?」


「現在、帝都の各店と倉庫の在庫を取り寄せている所ですので

夕方にはお渡しできるかと」

            

「それで代金はいかほどになりますか?」


「そうですね、胡椒が四万トンで星金貨五十万四千枚と

砂糖二万トンで星金貨一万四千枚とカカオを五万トンで星金貨二百八十枚で

合計……かなりおまけして星金貨五十一万二千枚になります」


 おいおい、胡椒って言ってるじゃん。


「では光金貨で五千二百枚お支払いしますよ」

「おつりは砂糖でお支払いして宜しいでしょうか?」

「構いませんよ」


 良い買い物が出来た。これで領民にもスパイスの効いた肉料理とお菓子を

食べさせてやれるな。


「失礼ですが、私はユキ・ロマノフと申しますが。貴方様も貴族の方では

ないでしょうか?」


「隠しても仕方ありませんね。アルタイル王国で辺境伯を務める

ノア・アレスと申します」


「アレス辺境伯というと王国の新領土の大穀倉地帯を任されている

アレス様ですか?」


「そういう事になりますか」


 よく知ってるな、ジュノー大陸の情報を探っているんだろうか?

でもうちに攻め込む前にキグナス帝国だよな。


             

「ぶしつけなお願いですが、食料に余裕があるなら

譲って頂けないでしょうか? 勿論、相応の対価はお支払いします」

   

「構いませんよ、こちらも無理を言って揃えて頂きましたし」

 

「そうですか、それでははっきり申し上げます

小麦一千万トンに米を五百万トンを売って頂けないでしょうか?」

 

 俺の領内の資源をよく調べているな。流石に大商会の経営者だ。

  

「構いませんよ」

「構わないんですか。まだ金額を言っておりませんが」

「そこは貴方も貴族ならば名誉があるでしょうから」


「それでは小麦と米を一キロ銀貨二枚でいかがですか?」

「わかりました。小麦の第一陣を三日後に届けさせましょう

現在の我が領の輸送船は五百隻程度なので四百五十隻をこちらへ回しましょう」


「それですと五百回程度の往復になりますから、こちらからも輸送船を

二千隻程度をお礼に貸し出しましょう」


「それはありがたい、それならば四ヶ月かからずに納められます」


 すごいな、こっちの帝国も

うちも船の増産をしているが更なる増産が急務だな。


 魔法契約書を既に用意してるよ。どんだけ用意がいいんだ

これは元は商社とかに勤めていたのかも知れないな。

      

「それではこれで契約は完了です。代金は毎月アレス辺境伯が

直接受け取りに来るということでよろしいのですね?」

「問題ありませんよ。それでは失礼致します」


 うちの食料でアルタイル王国に攻め込まれたら立場がないからな

ある程度の監視は必要だな。


   

「商談はどうでした?」

「ブラックペッパーを四万トンに砂糖二万トンとカカオを五百トン

これはお祭り用だな。それで光金貨五千枚を払ってきた」


「光金貨五千枚を一括払いですか! 俺は兄貴に死ぬまでついていきます」

「ヨハン、それより小麦一千万トンと米五百万トンの売買契約もしてきた

これから四ヶ月は港はフル回転だぞ」


「でもうちには輸送船が五百隻程度しかありませんよ。それに三百隻くらいは

老朽艦ですよ」


「トレミー帝国が二千隻貸してくれる事になったから、なんとか回るだろう」

 

「それなら、すぐに帰国して穀物の輸送を始めましょう」


「え――、帝都見物は?」

「また来月にも連れてきてやるよ。どうやら船で半日もかからないようだ」


「きっとですよ」



 そして帰国して指示を出して本格的な外貨稼ぎだ

これが上手くいけば領内の開発にかなりの余裕が出る。


「ノア様、領内西部の五つの港の内、西の貿易港の名前をルミエールとして

トレミー帝国の輸送船の受け入れ拠点にしました」


「それで頼む、残りの四つの内の三つの港もトレミー帝国に使って貰おう

残りの西部の港を一つと北部の港一つとエクレールを対トレミー帝国用に

残りの一港でキグナス帝国への物資を輸送しよう」


「港の整備は順次進めますがエクレールの名前を使って宜しかったので?」

「アレク兄さんがオーブ領と旧アレス領の街の名前を全て書き換えたんだ

文句はあるまい」


「ノア様もかなり嫌われておいでのようですね」

「またバカな取り巻きが増えたようだからな。イシュタルもかなり危うい」


 本当に何で人のつけた街の名前を変えるかな

こうなるとアデルの身も危ないかも知れないな。まだ学生だから良いが。


                      

「ノア様、明日の収穫祭用の料理の材料は全て揃いました

甘い菓子を食べるのが初めての人間も多いと思うのでかなり盛り上がるかと」


「きちんと働いてくれているし楽しんで貰おう」



 凄い人数だな、奴隷が参加出来るパーティは確か三十年ぶりだったか

これは酒が足りるかな?


             

「ノア様、挨拶をお願いします」


「皆、聞いて欲しい。既にアレス辺境伯領では一級だとか二級なんとかという

国民はいない。全てわたしの可愛い領民だ。今日は君たちが心の呪縛から

解き放たれたお祝いだ。食事に甘い菓子に酒をふんだんに用意した

それではこれより収穫祭を開催する」


「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉ」」」」


 

「ヤン、遂に酒に挑戦か?」

「兄貴、俺達ももう学生じゃ無いですし飲めないと恥ずかしいですよ」

「アルコールは最初は体が受け付けないというから少しずつ飲むんだな」


「ご領主様。今日は甘いお菓子をありがとうございました」


「君は狐族の子供かな?」

「そうです、お父さんが狼族でお母さんが狐族です」


「子供は酒は飲むなよ」

「わかりました」


 子供との会話は心が落ち着くな、アレクも子供が出来れば変わるかも

知れないのに。


「すごいじゃないか、領主様とお話ししてたんだな」

「度胸あるな」

「見直したわ」


「耳を撫でて貰ったの。いい人だったよ。獣人を差別していないって本当みたい」

「私の尻尾にも触れてもらおうかしら」


 ぜひウエルカムだぞ、どんとこいだ。


 

「若君、第七陣の出航準備が出来たそうです」

「パーティが終わったら出航でいいだろう」


「しかし、四百万はいますね」

「鉄道敷設は順調だし近隣の街や村から集まったんだろう

食材は使い切って構わないが、お酒が無くなると大人は文句をいいそうだな」

 

「ワインに蒸留酒とノア様の指示された清酒工房の準備も終わりましたし

来年は現在の十倍程度の酒が出来るでしょう」


 酒が日常的に飲めるようになれば

その領地は豊かだという証明らしいからな。



お読み頂きありがとうございます。



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