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第二十一話:沈没船のお宝


 第二次大戦当時の戦艦大和の半分近くって

凄く速いと思ってた時代もありました。


 そうです、良く思い出せば大和は普通に二十ノット以上出せたんですが

我が最速の戦闘艦は最大で時速十二ノット、それで最大です

風次第なので遅いときはママチャリに負けてしまいます。


「カモメって飛ぶの速いね」


「若君、現実逃避しないで下さい」

「兄貴、そう遠くないみたいですし」

「ノア兄、戦争に行くよりかなりマシだよ」


 三つ子に慰められるとは、他のみんなは血眼になって捜索中だ

これで星金貨十枚程度だったら大損だな。


 今日も夕方だ、捜索は終わりだな。


「若様、みつけましたよ」


「本当か?」


「かなりでかい赤マグロですよ。褒めて下さいよ」

 そうなんだ、紛らわしいぞ。


     

「マグロのステーキってこんなに美味しいのね

牛よりは確実に上ね」


「肉は捌くのも手間だし熟成にも時間がかかるから

こっちの方が数段上だぞ」


「お二方、本当に食べるだけの為に育てられた牛なら

牛の肉の方が上ですよ」

「そうかな?」


「明日はイカ料理を出しますよ」


           

 今日は天気はいいな、イカそうめんでも食べて元気を出すか。


「綺麗なイカね。透明じゃない」

「新鮮なんですよ」


「僕が調理しよう」

「若はイカ料理も作れるんですか?」

        

「期待していてくれ、暑いときは最高の料理だ」

 新鮮だと変な匂いはまったくしないな。

 

何センチできるんだっけ? ラーメンの麺程度の太さでいいか。


  

「出来たぞ。しょうゆをかけて食べてみてくれ」

 

「いい食感ですね」

「暑い時には最高です」

  

「生臭くないんですね」

 暇だし残りは干しておくか。


 この広さなら天日干し出来るか?


 

「ノア様、沈没船を発見しました」

「なに!」


「どうやって引き上げましょうか?」

「場所さえ判れば引き上げるのは魔法ですぐだ」


 食品を積んでたらアウトだな。


「風と水の精霊にノアが懇願する。我と精霊達の力を合わせ目の前の

障害物達を風の膜で包み給え

【魔力二割、対象前方広範囲、浮遊せよ……そして乾燥】」  



「船が浮き上がってくるぞ」

「全部で一、二、三……三十四隻ですね」

「予想より十隻以上多いな」

 


「ヨハン、着いてこい。一番大きな船に上陸するぞ」

「わたしも」

「「僕達も行きます」」          


「転移」


「船体は新しいですね、それに傷もほとんどないです」

「若君、これなら再利用可能なのでは?」

「そうだな、いけるかもな」


「あれは!」

 

「財宝か?」


「遺体が複数ありました」

「きっと、急な転覆だったんでしょう」

 これはダメかな。小麦のにおいがする。


「荷物は食料だったんでしょうか?」

「そうかもね」


「邪魔な小麦を転移魔法で海に捨てるか」


「少々お待ちください。この袋は通常より大きくありませんか?」

「そうね、通常は三十キロ入りよね」

           

「破ってみましょう。どうせ食べられないでしょう」

   

「あ!」

「またか、今度はなんだ?」

「若様、金塊ですよ。小麦の中に金塊が入ってました」

   

 密輸船か、そうなるとバレると不味いのか。


 

「全部で金塊が三千三百二十本ですね。一本五キロとして

一万六千六百キロですか」


「ヒルダ、どのくらいになる?」

「そうですね。純度が異様に高そうなので

長期的に売れば……星金貨で一万三千枚はいくかと」

   

 そうするとグラムで銀貨八枚程度か、日本で五千円くらいだったから

六割増しか、これで陛下に頂いた分は取り戻せたか。


「それじゃ船を回収してクレアに戻ろう」

「では我々はアイテムポーチを持っているので各船を回って

損傷の激しい船は積み荷を回収した後に破棄致します」

     

「任せたよ」


 これで最低といってた星金貨二万枚はなんとかなるか

でも長期的に売ってと言ってたからな。

 それに最低金額が二万枚だし、この辺の国は金を借りると平気で

利子を四割くらい取るから油断できないな。



 一人だけ転移で戻るとみんなの視線が怖いから船で戻ったが

帰りは曳航した分。三ノット程度の速度しか出なかったな。


 

 やっぱりベッドで寝ると疲れが取れるな

朝ご飯は何かな。


「大根の味噌和えに、ついに豆腐の製造も実現したのか?」

「はい、この春に出来たそうです」


 やはり味噌と醤油は最強だよな。醤油がなかったら豆腐なんて

ただのヘルシー食品になるからな。


       

 うたた寝してしまったか、自分の家だと気が緩むな。


「失礼します。報告書がまとまりましたのでご報告に」


「何隻残った?」

「六隻を廃棄して大型船二十隻、中型船が八隻です」

 

「それについては塗装して、紋章は消してしまおう

廃船は見つけた者の所有物だよな」

         

「そうであります」


「それじゃ、飯でも食べに行くか?」

「まだご報告が残っています」

「食べられる食料があったなら住民に分けてもいいぞ」


「繊細ですが金塊一万六千キロは報告済みですが、他に金塊が二万二千キロ

程度に金貨が三千五百億アル、銀、宝石、武器、防具、未知の植物等を

合わせると金貨は別にして星金貨で三万枚以上になりそうで、他の物も

適正価格で売れたとして星金貨で二万枚程度ですので

星金貨三万五千枚と他の品が星金貨で五万枚相当になるかと存じます」


 八千億アルか、ここから東大陸はかなりの距離があるというからな、きっと

かなり大規模な船団だったんだろう。 

 

「良し、金貨だけ預かろう。残りは痕跡が残らないように上手く……そうだな

主に国外に売り込んでくれ」


「かしこまりました」


 さてご飯にしよう。今日は美味しく食べられそうだ。

 東の大陸というのはかなりの金持ち国家なんだな。 

    

          

 船の洗浄と乾燥も終わったし、事業を立ち上げてもこの領地が更に裕福に

なる事はないし工事がないと暇だな。 


 夏休みは二ヶ月だから、まだ四十日以上残ってるな。


「兄貴、大変です」

「ヤン、まさか帝国へ出兵じゃないだろうな?」

「ニアピンですね。ヒンメル神聖国の陸上部隊が南下してきました」


「さすがに船団は懲りたようだが、そうなるとイシュタル領で戦闘か?」

「まだ新領土です」


「情報源は?」

「イシュタル領からの連絡です」

     

「陛下にご裁可頂こう」

     

「転移、ヒンメル神聖国国境」


 三隊に別れているのか、先発隊に本体に荷駄隊といった所か

全部で六万はいるな。


  

「兄貴、見てきましたが敵の本隊はマーチ領のすぐそばで野営する

ようですね。先発隊は本隊を護衛するように布陣しています」

  

「荷駄隊はどうした?」

「マーチ領に入っていきました」

「救援に行かないと不味いな」

   

「待ってください。争いはまったくありません

荷駄隊の幹部はお屋敷でくつろいでいます。勿論マーチ伯もピンピンしてます」


「物資の補給を手伝ったという事か?」

「徴発か差し出したのかは不明ですが物資を積み込んでいるのは事実ですね」

 

 マーチ家の近辺に駐留している兵力は前に見たときは三千程度だったはずだ   

北部に行くにしても戦力不足だろう。

国軍が動かなければ別だけど。


「ヤン、クレア経由で王都へ戻る。転移、クレアの屋敷」

  

「ノア様、お戻りですか?」

「敵軍の様子を見てきた」


「そうでしたか、我々も発見しました。敵は海岸線を約二万程度で

南下しています。明日の午後にはイシュタル領かと」


「おい、僕たちが見た敵はマーチ領付近に六万だったぞ」


「北部と東部への二正面作戦でしょうか?」

    

「そうすると東部の部隊は陽動でしょうか」

「陛下が休む前に意見を聞いてこよう。転移、王都の屋敷」


 さて、王様はまだ起きてるかな。


「ノア、どうした?」

「お爺さま、陛下にちょっと謁見の予約を入れようかと」

「何かあったのか?」

「ヒンメル軍がマーチ領に六万、イシュタル領の北に二万を確認しました」


「なんだと! わたしも一緒に行こう」

       

 兵がすくないな、夜はこんなもんなのか?


      

「陛下がお会いになるそうです。謁見の間へどうぞ」


「会議室でもいいんですが?」

「ご命令ですので」


「ハインツ・イシュタル、それとノア・クレア参りました」

 俺の台詞を捕られたよ。


「ヒンメル神聖国の軍が南下してきたとは真か?」

「孫が見てきた様子ですと、王国北東部のマーチ領に六万、東部のイシュタル領の

すぐ北側に二万でございます」


「八万だと、この時期に」

「困った」


「ノア、直答を許す、見てきたままを申すがよい」

「私はマーチ領の六万しか見ておりませんが、兵はマーチ領内に本隊四万

その周囲を先発隊らしき一万五千が取り囲み野営の準備を

荷駄隊に至ってはマーチ領で買い物をしておりました」


「マーチ伯爵が裏切ったか」

「前の氾濫騒ぎの時もそうだ」


「陛下の取りなしを無下にしおって」


「説明しよう」

「これは内務卿」

             

「我が国は帝国の支援のために中央軍十万、南部から二万、西部から二万五千

北部から二万と諸侯軍から三万の合わせて十九万五千を六日前に帝国に送った」


「では残りは東部の三万と国軍だけですか?」

「現在、二日前に東部から二万も中央へ来るように命令を下したばかりだ」


 おいおい東部と北部の精鋭まで帝国へ送るってどんな状況だよ。


 そんなにやばい奴らなのか。

          

「情報部の報告ではヒンメル軍は北西部に向かったと報告が上がっておった

そういう訳で北部も東部も正規兵は一万ずつしかおらん」


「マーチ家が偽の情報を出していたんだ」

「完全に計られた。今から戻しても王都の守りが精一杯です」

   

「ノア、領地替えを希望しておったな?」

「その通りでございます」

  

「勅命じゃ。ノア・クレア、アルタイル北東部のヒンメル軍を殲滅せよ

アルタイルの住民に被害が出ても構わん」


「勅命、謹んでお受け致します」


「これはお願いじゃ、東部もかたづけてくれると有り難い」

「努力だけはいたします」


 さて、忙しくなるぞ。シャルはどこにいるんだろうな。


      

「陛下、今、ドナルド辺境伯から伝令が参りました、兵力五万以上を

アルタイル北東部で補足したとの事です」

  

「敵は隠れるつもりはないと見える。おもしろいではないか

もはや和平交渉は無しじゃ」

  

「そうですな、交渉の余地なしですな」

 

「では失礼します」

「ノア、奇襲攻撃で先制せよ。これは命令だ」

「かしこまりました」


 なんか胃潰瘍にでもなりそうだよ。


    

「転移、クレアの自室」


「ノア様」

「兄貴」

   

「みんな居たのか、陛下から勅命を頂いた。マーチ領にいるヒンメル神聖国の

兵に対して奇襲攻撃で先制、そして殲滅。住民の損害は無視していいらしい」


「国軍は動かないんですか」

「一週間前あたりに帝国へ十九万以上の兵士を派兵した結果

精鋭は北部に一万、東部に一万のみだそうだ」


「この一戦で負ければアルタイルの王都から東は占領されますね」

「よって、捕虜を捕っても捕縛する兵士もいないので殲滅だ」


「皆殺しですか?」

「やっちゃいましょう。ついでにマーチも」

「そうそうシャルロットは王都にいるそうです。暇だからって手紙が来ました」


「それじゃ行ってくる」

「待ってください。交渉の必要がないのは判りましたが

住民への事後説明と見張りが必要でしょう。我々だけでもお供します」

           

  

「ヨハン、ニコラウス、コンラート、デニス、ヤン、ミーアか?」

「私達も行きます」

「それじゃヒルダ、マルコ、ユリアンの合計九名だな」


「がんばりましょう」


「おおおぉぉ」


「想像転移、北東部国境」


 馬鹿、離れるな。


 一人の方が数段楽だったな。拾うのが大変だ。


「死ぬかと思いました」

「手を離すからだ」

         

「拠点がないと上空に出るんですね。知りませんでした」


 さて大掃除だな。

 


お読み頂きありがとうございます。


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