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第十八話:初めてのマシンガン


 奴隷からも一応事情を聞いたが捕まったから即処刑

今まで逃亡に成功した奴隷はゼロとの事。

  

逃走した奴隷の数なんてわからないだろうに。


「若君、どうします?」

「デニス、良い案はないかな?」

「殺すには惜しいかと存じます」


「反対意見は?」

     

「よし、とりあえず僕が疲れて寝たという事にして、ヨハンは僕の付き添いで

それ以外はシャルとリリーナにバレると不味いから

風呂と食事を済ませてきてくれ」


「「「わかりました」」」


 さて、どうするか。まだ引き返せる

経済大国といえど、大国には違いない。それに比べて俺は辺境の男爵だ

それも親の威光でもらった爵位だしな。


「君たちに尋ねる。君たちを逃がした事がバレればこっちが処刑される

助かったとして僕たちのメリットはあるのか?」


「私どもは工房で十年働いてきました。その知識を全て差し出します」

       

「ノア様、知識と言っても、我々は彼らが何を知っているのかさえ知り得ません

メリットはほとんどないかと」


「俺は魔道機関車の動力設計部門で設計士として働いていました」

「俺は飛行艇の設計技師です」

「俺は魔法研究の開発部門にいました」

     

「私達三人は……拳銃という武器の研究所にいました」

 

 ほぉ、拳銃開発か、種子島とかだったら意味がないが

小銃とかだったら戦争の形態が変わるな。


「お姉さん達、どんな拳銃の設計をしていたのかな?」

   

「設計図があります」

「弾だけですが実物もあります」

  

「おい、まだ助けてくれると決まったわけじゃ……」

 

「ほう、自動小銃と九ミリの弾ですか」

 ヘファイストの加護が俺に銃の構造を瞬時に理解させてくれる

有り難いんだが、困ったもんだ。


「女性の方は切り札を使って誠意を示してくれたので助けてもいいでしょう」


「私どもも設計図をもっております」


     

 動力は魔石じゃなくて蒸気機関だが

問題は偵察機の動力として内燃機関が使われていることだ。

 この飛行艇の大きさはボーイングの727程度の大きさだろうか。

 それに零戦に近いフォルムの名称は偵察機。


「みなさん、ご家族は」

 これはある意味、最重要項目だ。


「家族はヘンドラーの奴隷商に売られました」

「見たところ、皆さん二十代に見えますが、お子さんは?」

「「「いません」」」 

    

「ヘンドラーでは優秀な子供を捕まえて教育を施す名目で学園に入学させて

技術的に使えそうな人間を理由をつけて犯罪奴隷に落として

技術部門で一生こき使うんです」


 もう設計図の繊細は俺の頭の中へインプットが終了してるんだけどな

とりあえず街の外へ逃がすか、クレア領まで連れて行くかだな。


「犯罪奴隷の方には逃亡防止の魔法刻印があるとか

それとそれ以外にも何か身につけさせられている物はありますか?」       


「魔法刻印は胸に、それと腕輪をつけております」


「まずは腕輪からですね」


「見てみますか、【ヘファイストスの目】」

『従属の腕輪』

 この腕輪を身につけている者は真実しかしゃべれない。

『魔法の呪刻印』

 刻印が打たれた場所より十キロ離れると心臓が停止する。


 アルタイルより魔法技術も優秀なのか?

    

「胸に刻印があるのでは、まずは男性からですね」

「お願いします」


 闇系統の封印呪文だよな。


「闇の精霊にノアが懇願する。我と精霊達の力を合わせ目の前の傷ついた

者達の束縛を解き放て、【魔力二割、対象固定、封印解除】」

 


「腕輪が外れた、それに刻印も消えたぞ」

「なんて運がいいんだ。こんな優秀な魔法師のいる宿に逃げ込めたなんて」

「本当だわ」


「私達は三日後の朝にここを出ます。服と少額のお金は用意致しましょう 

ここから自分達で逃げてもいいですし、残って我々に身柄を託すのかは

皆さんで相談して決めて下さい」


「我々が住める場所があるんでしょうか?」

「わたしは小さいながらも領地を持っております。あとは皆さんの後悔の

ない選択をして下さい」


 勝手に逃げてくれれば後腐れがなくて宜しい

捕まって俺の事を白状したら、勿論知らぬ存ぜぬだよ。


 アルタイルでは最高級の宿屋以外では毎日清掃なんてあり得ない

客が出て行った時に清掃するのが一般的だ。



「若君、奴隷の人達は結局助けたんですね」

「兄貴、宿の食事は美味かったぜ」


「とりあえず僕とコンラートはソファーで、ニコとヨハンは同じベッド

デニスとヤンも同じベッドにすればベッドが三つ空く

そこに寝て貰おう」


「私がソファで寝ますよ」

「二人で同じベッドよりソファの方が広いんだよ」


「女性陣には事情を説明しますか?」

「ミーアには説明しても構わないが、シャルはダメだ

リリーナも怪しい。ミーアにいう時も部屋に引きずり込んでから話してくれ」


「「わかりました」」


「どう事態が変化するかもわからん、明後日の夕方に方針を決めよう」


           

 翌日、飛行艇見物はラインハルトの班と一緒になったので

随分と我が儘なお姫様のお陰で大変だ。


「この私に奴隷のようなブレスレッドを身につけろと」

「決まりですから」

「もし外れなかったら極刑ですわよ」


                     

 設計図で見た飛行艇よりは一回り小さいな、見世物用の試作機なのか

エンジン部分にはシートが被さっているし。


「中々にでかい船ですわね」

「羽が短いですわ」

「本当に飛ぶんでしょうか」

       

「あそこにある魔道機関車は僕達が乗ってきたのと同じ型だね」

「あのレールの奥はなんの研究をしているんですか?」

  

「さあ、わたしはタダの案内人ですのでわかりかねます」

 

「脱走者だぞ!」


「みなさん魔力障壁を張ります。中へ入って下さい」


「「「【ウィンドアロー】」」」


『ダダダダダダダダッ』

  

「何ですか、今の魔道具の武器は?」

    

「貴重な奴隷を尋問無しで殺してしまって良かったんですか?」

「ここには二千近い奴隷がいます。我々が正しい道を示さねばなりません

あれは風の魔法を撃ち出す魔道具です」


 こいつらもイース教徒と同じような思想の持ち主なのか

風じゃ風穴は空かないぞ。

  

  

奴隷が逃げていてくれると、ある意味助かるが。



 ◇


 結局、六人の奴隷は逃げなかったので、対策を立てなければならない

十年も奴隷やってれば行くところがないよな。  


「イノシシの鍋は本当に美味かったな」

「一人、小金貨八枚ですけどね」

  

「それでどうします。明日はアルタイルに向けて出発しないと」

「そうですよ一度出口から出ないと、連絡が王都へ届きますよ」

  

「僕とヨハンは急用という事で今夜発つ、そしてすぐに戻ってきて

転移でクレア経由で国境に集合時間までには間に合わせるから

ニコたちはみんなを連れて旅行しながら国境を目指してくれ」


「俺も一緒に行きますよ」

「僕とヨハンだけの方が裏工作だとシャル達に思わせる事が出来る

とにかくシャルとリリーナにバレないように気をつけてくれ」


「「わかりました」」



「すいません、僕たち二人は急用で国に戻りますので」

「夜なのに大変ですね、たしかノア君とヨハン君ですね

宿帳には記入しておきます」


「それでは」



 警備が厳重になってるな、切符を事前に買っておいて正解だったな。

「そこに止まってるのが最終便だぞ」


「はぁ、はぁ、ありがとうございます。走ってきたのですがギリギリでした」

「君たち滞在許可証を確認させてもらうよ」

        

「これです」

「アルタイルの学生さんか。うむ、問題無いな。行っていいよ」

「それでは」


「駅弁じゃないか、ぜひ買っていこう」



「美味いぞ、食べないのか?」

「戻らなくて良いんですか?」

「多分、もう一回くらい、検問があるだろう」


       

 なんだ、俺の思い過ごしだったか、切符の確認すら無かった。

「さて、降りますか」

 

「ラインからの乗客は一列に列べ」


「子供か、旅行か?」

「はい、体の調子が悪くなったので急遽我々だけ帰国する事になりました」


「ノア・クレアとヨハン・ラズベリーか。よし通って良いぞ」

やはり検問を張っていたか。

 

  

「ラインの街での研究は本当に国家の機密だったんですね」

「噂では毎年、星金貨二十万枚以上の予算をかけているというのは

本当のようだな」



「それでどうやって戻るんですか?」

「絶対、僕の左手を離すなよ」

「はい」


「想像転移、ライン上空」



 かなり上空に転移してしまったな、さては魔力障壁が張ってあるな。


「なんなんですか?」

「位置は正確じゃ無いが、空の上や海の上なら想像出来る場所なら

自分の所有物以外でも転移できるんだよ。魔力を格段に多く使うけどな」


「そんな裏技があったんですか」

「とにかく戻るぞ」



「おかえりなさい」

「駅の改札で乗るときと降りたときの二回身分証の提示を求められたぞ」

「厳戒態勢じゃないですか」

「ミーアに上手く言っておきました」

「助かるよ」

      

  

「ではみなさん、これからアルタイルのクレア領という所へ

転移で向かいます。よろしいですか?」


「「お願いします」」

           

「転移、クレアの自室」


 クレアはのどかだな。


「マルコ、この人達を暫くお前の下で働かせてやってくれ」

「それはいいですが」


「彼らには別れた家族がいるんで、領内から出たいと行ってきたら金貨十枚を

渡して送り出してやってくれ。あとは本人達次第だ」


「この方達も獣人永住地獲得運動の一員なんですか?」

 誰だ、そんな変な名前の政策名をつけたのは。


「彼らは頭は良いが力仕事は向いてないから相談にのってやってくれ

運動には特に関係ないぞ」


「わかりました」


         

「ではみなさん、ここはアルタイル東部の港街です。本日からアルタイルの

生活が始まりますが、ここに定住するか出て行くかは自由に決めて下さい

夏になった時に皆さんがまだいたら、今後の相談をしましょう」


 とりあえず船の設計をやらせてみて、自由になってどう考えが変わるか

見極めてからじゃないと危なくて使えないな。


 さて、四日も暇になったな、どうするか?

  

    

お読み頂きありがとうございます。


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