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第十五話:ルクセンブルク家の没落


 結局、アン王妃は離宮へ幽閉されて軍の審問官によって尋問を受けた結果

ルクセンブルク家の関与と治療師をヒンメル神聖国からの要請で引き入れたと

口を割ってしまったらしい。


 何故、父さん達が王都に居たかと言えば、死ぬ予定のエリザベス王女殿下の

葬儀に出席する為だったようで上級貴族は王都に集結状態だった。


「ルッツ、久しいな」

「シュナイダー内務卿、お久しぶりです」

「いや、わしは来年あたりに引退しようかと思っておったが、こうも状況が

一変すると当分は引退出来んわ。過労で倒れたらお前の息子のせいだぞ」

    

「肝に銘じておきます」


  

 今日は俺がエリザベス殿下を治療してから七日後で殿下の快気祝いならぬ

派閥移動ゲームのパーティが開かれている。  

   

「ノア、紹介するわ。私の父のダスティン・マーチ伯爵よ」


「初めまして、お嬢様と同級生で同じ部活動のノア・クレアと申します」

「君の事は娘からの手紙で聞いているよ。娘が世話になっているようで

感謝している」


「こちらこそ、感謝しております」

「それで良ければ私の妻も病なのだが治療をお願いできないだろうか?」

「構いませんよ。この騒ぎが終わったらご領地へ行って診察致しましょう」


「いや、無理をして今回王都へ連れてきていて

あちらのソファーで寝ているんだ」


「そうでしたか、では今から見ましょう」

         

 

顔色が悪いな、よくこんな妖怪の集まるパーティ会場へこれたもんだ

なんだ、また呪いかよ。勘弁して欲しいな。


「シャル、いや、マーチ伯爵、指に嵌めている指輪を頂けませんか?」

「構わんよ」


「指輪なんてどうするの?」

「呪いがかかってるからね、宝石の中に封印するのが一番効果的何だよ」

「何、シャリーに呪いがかかってるだと」

「殿下にかかっていたレベルの呪詛ではありませんが、強い呪いですね」

「ではお願いするよ」


「光と水の精霊にノアが懇願する。我と精霊達の力を合わせ目の前の傷ついた

者に激しい癒やしの力を授け給え

【魔力四割、対象固定、テラキュア、呪詛を封印】」


「眩しい」

   

「終わりました。お若いですし食事を取る事をお勧めします」

「まさか、今ので治療が終わったのか?」

「そうですよ」

この程度なら簡単なんだけどね。

 

 

「ノア! 父さん、ノアを捕まえたわ」

「ぎゅびがしまう、ぎぶです……」

  

 もう少しで窒息死する所だった。ソフィー姉さんは相変わらず馬鹿力だな

可愛い、あまり可愛くないけど死んだらどうするんだ。


「ノア、リリーナが居なくても治療が出来るのね」

「えっと、居た方が確実性というか成功率が上がるんですよ

それにリリーナ一人でも超一流の治療師ですよ」


「ノア、まだ昼前だが広間で昼の三時より会議を開くことになり

イシュタル家からは儂とルッツ、ノーラとお前が出席する事になった」

            

「上級貴族家の当主は全員呼ばれたようだから気をつけてね」

「お婆さま、僕は上級貴族じゃありませんよ」

「何を甘えた事を言っておるか。今回の騒動の中心人物であろう」

 爺ちゃんはビタミンが足りてないんじゃないのか。


 あーあ、どうしようかな、これならクレアで治水工事してた方が楽だったな

本当に王都というか貴族は困ったもんだ。

  

 そうか、こういう時はお土産が必要か、貴族相手なら毒無効効果の

ネックレスにするか? ネックレスは男は面倒だな

無難にブローチにするか。

               

 ◇



 結局、ブローチは似合わないので取り外し可能の解毒のカフスボタンを

頑張って八十点作った。災害級以上の製品が出来るとかなり光るので

誰も近寄って来なかったので、それも集中するいい材料になった。


 材料をかなり使ってしまったので、またクレア領で採集しないと。


「リリーナ」


「クレア男爵の席はこちらです」


 何、ここはオーブ家の人間ともイシュタル家の人間ともかなり離れてる

じゃないか。かなり上座ではあるけど。


「クレア卿、よろしく頼むよ」

「内務卿、こちらこそお願いします」

 なんだよ、隣はシュナイダー侯爵か、嫌がらせか?


「国王陛下、御入来」


 そうか、座って出迎える訳にはいかないよな。


「皆、席にかけるがよい」

          

「では私から会議の趣旨をお話しましょう。といってもほとんどの方は

ご存じと思いますが葬儀を行う予定のエリザベス様が横に居る子供の治療で

瞬時に全快となり、その原因がアン王妃とヒンメル神聖国とどこかの公爵家に

ございました。まずは陛下より発表があります」


 俺は隣の子供扱いか、日本だったら小学生だから仕方ないんだけどね。


「まずアンを王家より追放。ヒンメル神聖国へのジュノー大陸の国々への

謝罪要求。息子のフランツを正式に王太子とする事……「お待ちください」

      


「チャールズ、不服か?」

「王太子の選出は学院を卒業する時に決めるとおっしゃったはずです」

   

「時勢も読めぬのか? 儂が言い終えて尚文句があるなら申すが良かろう」

  

「フランツを王太子へ、ルクセンブルク公爵家の領地替えを行う

これは王族の暗殺未遂の責任だ。そしてチャールズを廃嫡とする

尚、エリザベスの呪詛の事を知っていた人間は後日罰する。以上じゃ」 


「陛下、お待ちください。我がルクセンブルク家は長らくアルタイル王家に

忠誠を誓ってきた家でございます。長い時間をかけて事の真相を究明

した後の処罰をお願いしたい」


「ルクセンブルク公、貴方の弟君と妹君が全て話して

くれましたよ。これ以上の追求が不可能なくらいにね」     


「そういう事じゃ、ルクセンブルク卿とチャールズは退出せよ」


 これは内戦確実だよな。ルクセンブルク公爵はどの程度の

兵を持ってるんだろうな。日本の歴史で例えるなら明智光秀より

状況が悪い。 


    

「ここからは楽しい話題ですな。フランツ王太子とイシュタル家長女

ノーラ様の婚約をここに発表します。ヒンメル神聖国が戦争の賠償金に

星金貨九十万枚そして五万の捕虜の引き渡しで星金貨五十万枚の合計

星金貨百四十万枚の賠償金そしてヒンメル神聖国の南部三領地を我が国へ

編入で休戦協定が結ばれました。実行は領地を引き継ぎ次第です」

     


 それから十分で十二歳以下の子供は退出、カフスボタンだけ渡して

俺も退出。爺ちゃん達が帰って来たのは翌朝らしい。


「父さん、ゆっくりしていて宜しいのですか?」

「ルクセンブルク家の事を言ってるのか? 既に手は打ってある

ここから内乱をおこそうとするやつは自殺願望の持ち主くらいだろう」

     

「そうだったんですか」

 

「昨日言ってたカフスボタンは一つ星金貨二枚で売れたから

これが代金の星金貨百六十枚だ。そして今回の功績は王家としては借り一つ

という事でお前が次ぎに手柄を立てたときにまとめて払ってくれるそうだ」 


 王家に貸し一つ与えても無理難題を言われそうだな。

 

「お爺さまは?」

「軍を率いて、アルタイルの新領土の検分に行かれた」

     

「北の脅威がなくなると辺境伯家としての立場が危ぶまれるのでは?」

「そこは問題ない。ヒンメルも港を含む海岸線を失うのは反対意見も

多かったようで南部と言っても、アルタイルから見れば北北東になる」


 俺に国境線の敵領土へ転封とかにならなくて良かったよ。


 ◇


  

 結局、ヒンメル神聖国はジュノー大陸の国々に謝罪を表明。断って和平協定を

やり直しては幾ら取られるか判らないから謝るだけならと諦めたそうだ。


 そして国内では四カ所で五千人規模の反乱が起きたが

素早く鎮圧。その責任を取らされてルクセンブルク家は子爵家にまで降格

当主は隠居して、トライセンの反乱で空いていた領地へ入って細々とお家存続。


       


「期末考査なんて、何で存在するんだ」

「これが終われば冬休みだ。コンラート頑張れよ」

「一ヶ月も休校になった後に試験とか鬼だよな」

 

「仕方ないでしょう。公爵家の没落、そして貴族家が二十二も断絶したのよ」

「マーチ家は潰れなくて良かったな」

「当たり前でしょう。父さんがかなり努力したんだから」


「期末が終わったらどうする?」

「他の生徒は実家に帰るようですよ」

「クレアに帰っても仕事するだけじゃないか」

「そうは言っても夏休みと違い今回は短縮して三週間だけですし

国外は無理です」


「安く泊まれて知らない場所か」

「それならうちにくれば、みんなの家はクレア領なんでしょう」

「お宅訪問か悪くないな。行ってみるか?」

「そうですね、クレア領にもどるよりはマシでしょう」


               

 コンラートはかなり危なかったが、苦手科目の二教科でポイントを使って

上手くしのいだようだ。


 そして今日から冬休みだ。


「南部だよな、そうなると馬車か?」

「ノアは転移出来るんでしょう」

「東部と北部の今はルクセンブルク家の所だけだな」

「それじゃ北部に転移で連れて行って」

「南部じゃなかったのか?」

「領地替えになって、新領土へ行くことになったのよ

ルクセンブルク領からなら馬車で十日くらいかな」

        

この前まで敵国だった所か、なんか労働を強制されそうな気がするな

行くと言ってしまったし仕方ないか。


「その程度の距離なら転移を繰り返せば今日中に着くな」

   

「行くぞ、転移、ルクセンブルクの小屋」

   

「ほんとに便利な魔法ね」

「若様は天才ですから」


「ここから連続転移するぞ。慣れないと空の上に転移した時

焦るかも知れないけど慌てるなよ」


   

 四時間か、まあ適度な距離だな。


「この領地は最前線なのか?」

「そうなるわね。ここから南は旧アルタイル領で西も同様だけど

北はヒンメル神聖国であの丘から東が未確定新領土よ」

  

「クレア領の十倍はありそうですね」

「あそこに獣人発見ですよ。熊族ですかね」

    

「シャルロット、よく来たな」

「父さん、ただ今」

「皆さんもようこそおいで下さいました」


「「「よろしくおねがいします」」」


 海はないが川は綺麗だし、悪くないか。


     

 領都はクレアよりちょっと広いくらいか

元敵国と考えると良い場所を取れたのかも知れないな。


「おい、獣人、領都への立ち入りは禁止のはずだぞ」

「でも獲物を売らないとご飯が食べられないから」

「とっとと出て行け」


「領主としては止めた方が良いのでは?」

「お客人の前で申し訳ありません。おい衛兵、そこの獣人を連行して追い出せ」


 おいおい、獣人は何も悪い事してないだろう

これがマーチ家の普通なのか?


「ノア様、私はちょっと用が出来ましたのでコンラートを借りますので

ニコはノア様の護衛を務めるように」

          

「わかりました」


「では晩餐は夜の七時からですので」

「お心遣いありがとうございます」


 貴族としてはこれが普通なのかも知れないが、こいつは

ダメな奴だ。そうなるとシャルもダメな奴なのか?


お読み頂きありがとうございます。


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