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第百四十四話:タマコと子供たちをありがとう(最終話)


 アレス歴十一年も遂に十一月、ルーカスは商業大学院を中退して

秘書官として働いている。プロキオン商会の吸収もすんなり完了して

最後の一時といった感じの日々だ。


 

「ルチア、グラン亭のリニューアルオープンの用意は済んだか?」

「完璧です。明日残った七十五店舗を全ての営業を再開出来ます」


「ノア様、ダイアナの電力地帯の掌握も完了しました

六カ所の発電所も異常は全くありません」

   

「ノルトの施設も見学してきたけど全て良好よ」

「プロキオンスタンドの全店はデネブスタンドとして

既に営業を再開しています」

 

「輸送車も含め全てをうちで引き取りました。これで従業員は

二百九十万万五千人ですよ」

「もうすぐ三百万人ね」

  

       

「よし、デネブカードへの切り替え者には今月は全サービス二割引きにしよう」

「「わかりました」」


 こんなものか、プロキオンも素直に従ってくれたな。


「それでね、ノア、バビロン帝国を滅ぼすって本当?」

「もう、情報が出回っているのか?」


「本当なんだね」

「驚きですね。八千キロ離れた相手に攻撃するんですか?」

「街では爆撃機三万機を隠し持っているっていう評判ですよ」


「繊細は秘密だけど、やるからには徹底的に叩くつもりだよ」


 

 こういう優秀な奴らの才能を伸ばすには平和が一番だろう。



 デネブ商会も商業棟からそろそろ

本館に引っ越しをしてもいい頃なんだけどな。


「父さん、みなさん集まっていますよ」

「わかった」


 

 全長官職勢揃いか。

          

「ノア様、先月は大事な会議に出席出来ずに申し訳ありませんでした」

「ヒルダ、気にしないでくれ。勝手に決めて悪かったよ」


「ノア様、バビロン帝国からの回答はやれるもんならやってみろだそうです」

「アレス王国も舐められたものね」

 

「やってやりましょう」

「既に警告をしてから三十五日経ってます」


「後世の歴史家に魔王とその側近と書かれるかも知れないぞ」


「上等ね」

「そうです、やってやりましょう」

 

「もう貴族制度なんていうのが古いと分からせるべきです」

「そうですね、上級とか下級とか言ってる時代は終わったんですよ」


「特権階級でいる限り考え方は変わらないでしょう」

「お金で苦労したことがない人間は成長できないのよね」


「もう一度聞くぞ。全ての準備は出来てるんだな?」

  

「念のためにオーガスを狙って一基、サン王国にも一基を配置済みですが

バビロン帝国に十割の威力で四発連続で撃ち込めます」

         

「わかった」

「すぐやりますか」

「攻撃衛星の全力なんて初めてでしょう」

「どの程度の威力になるんでしょうね」


「街の噂どおり爆撃機数万機程度ですかね」


「ヨハン、TV局に情報を流せ。二時間後にバビロン帝国に向けて

超高空から熱攻撃を開始すると通達してくれ」


「わかりました」


 賽は投げられたか。


              

「父さん、これが戦争なんだね」

「お前は知っているだろう」


「僕は夢の中で指示しているような感じだったからね。あんまり細かい所は

実は覚えていないんだ」


「そうだったのか。これからはお前達の時代だ。マーガレットさんと

手を取り合って苦難に立ち向かえ」

        

「うん、メグも応援してくれるって言ってくれてるんだ」

「わたしが特大の婚約指輪を贈っておいたからな」

   

「出来れば僕が贈りたかったよ」

「結婚指輪で勘弁して貰え」


 やはり、ルーカスにはプロキオン商会は重荷でしかなかったようだな

そう考えると悪い事をしたな。


「ノア、みんなが時間だって言ってますよ」

「リリーナ、お前も来たのか?」


「この国の運命が掛かっているんでしょう。私も目に焼き付けておきたいわ」

「わかった」


         

 これで最後か。


「若様、大変です。国勢不明の大艦隊が

エンジェル南方の千五百キロで発見されました」  


「兄貴、大変だ。敵の数は少なく見積もっても艦艇が一万隻はいるようです」

「若君、衛星で空母と思われる艦艇を二百隻以上確認しました」


「警告したのが裏目に出ちゃったわね」


「マクベス、艦隊を狙えるか?」

「勿論です。五分で六号機の修正変更を終わらせます。加えて二号機の

照準はサン王国の王都に向けておきます」


 一万の艦艇という事はサン王国の艦艇だな。

 

「兄貴、サン王国も完全に敵に回ったようですね」

「もう長い間国交がなかったしね」

  

「父さん、戦闘機は出さなくて良いの?」

「ルーカス、既に空軍と海軍の主力六千機は南部地域に展開済みだよ」

 

「そうだぞ、次期国王だろう。心配するな」

「王様って言うのはね、どっしり構えている物よ」

「わかりました」


「モニターに敵艦隊の映像が届きました」


 本当に大艦隊だな。敵は総力を注いだ訳だな。

 


「敵船の照合が完了。大きさからみて戦艦六千二百隻、巡洋艦二千五百隻

駆逐艦千五百隻、輸送船六千隻、空母と思われる艦艇が二百六十隻です」

     

「軍艦の数だけだったらうちらの百倍以上ね」

「戦艦六千二百って、よくオーガスはこんなのと戦ってたな」

「これでも一部なんだろう」

「本当に巨大海軍国家なんですね」

    

「警告はしないの?」

「ルーカス、そんな事をしたら戦闘機が飛び立っちゃうじゃないか」

 

「全ての空母に二十機だとしても五千機を超えますね」

「まともに戦ったら、うちの飛行士も半数は死ぬね」

 

「国籍照合完了、オーガス王国から受け取った敵データーと

同一の艦艇が二千四十隻含まれています」

「あーあ、確定じゃないですか」

             

「軍艦一万隻で亡命はあり得ませんね」


「ノア様、二号機から六号機まで全ての発射準備が完了しました」


 運がなかったな。

 少しはあの世で遊んでやるよ。


「よし、オーガスに向けてある一号機とバビロン帝国に向けてある

三号機以外の全ての軍事衛星を使って攻撃せよ」

        

「了解です」


 結局はこうなるのか。今回はオーガス王国が絡んでいないだけマシか。

 

  

「エネルギー集積衛星準備良し。発射衛星の準備完了」


「軌道修正用衛星は全て目標地点に到達」


「制御衛星に座標コード入力」

「防衛衛星は全て第一級警戒態勢です」


「射線に障害物なし」

「エネルギーを発射衛星に射出」

 


「兄貴、凄いですね」

「若様、これが宇宙からの映像なんですね」


「二号機と四号機のエネルギー充填完了」

「誤差修正、軌道修正コンマ一度」


「五号機と六号機のエネルギー充填完了」

「誤差修正の必要を認めず」

   

「最終セーフティ装置解除」


「ノア様、暗証コードを入力して下さい」


 言い国と、一一九二。


『暗証コード確認、最終セーフティロック解除。魔力認証……ノア・アレス様

と確認完了。目標四カ所に十秒後に照射開始します』

     

                     

「カウントダウン、九、八、七、六、五、四、三、二、一、発射」


 

「荷電粒子砲発射!!」


 モニターごしでも眩しい。


 

「現在、敵艦隊及び敵拠点三カ所の確認作業中です」

 

「十年前にこれがあればね」

「そうだな、アルタイル王国は存続していたかも知れないな」

「キング陛下ならどんどん撃ち込んでいただろうね」

「連射出来ない銃を持って戦場を駆け回っていたのが懐かしいわね」

 

「僕は剣を振るっていた頃の方が懐かしいよ」

「コンラートは剣の腕だけは一流だったからな」


 既に三十分経ったか。


「監視衛星から映像が届きました」


「これって敵の王都だよな」

「岩の塊だね」

  

「建物の残骸すら残ってないのね」


「推定で半径四百キロが消滅した物と思われます」

「エクレールからドロシーまでと同等の地域が消滅かよ」

「これじゃ爆撃機なんて無用の長物ね」


「敵艦隊の生き残りと思われる航空機六百二十機が

時速千キロ以上で接近中です」

   

「コンラート、エンジェルの南三百キロまで迎撃機を出せ」

「了解」

「トム、警戒中の艦艇に艦対空ミサイルを発射させろ」

「了解」


「サキ、二百キロまで寄ってきた馬鹿には地対空ミサイルをお見舞いしてやれ」

「了解です」


      

「ノア様、三号機も目標を旧ユニコーン王国の王都に変更完了です」

「兄貴、ここは既にサン王国の軍事拠点です。やってやりましょう」

「汚物は焼却よ」


「良し、三号機発射しろ」

  

            

「三号機のエネルギー充填完了」

「誤差修正の必要を認めず」

   

「最終セーフティ装置解除」


「ノア様、暗証コードを入力して下さい」


 言い国と、一一九二。


『暗証コード確認、最終セーフティロック解除』


「みなさん、モニターを直視しないでください」


「わかった」

「わかってるわよ」


「三号機……発射!」


「命中を確認しました。監視衛星が既に通り過ぎているので

映像は早くて六時間後です」


「巡洋艦から百二十発の対空ミサイルが敵に命中

八十八機の撃墜を確認」

 

「敵戦闘機部隊が重巡洋艦部隊のファランクスの射程に入りました」

「ファランクス照準、撃て」


「九式駆逐艦部隊の該当海域の到達」

「対空砲全問撃ち方始め」


 ハリネズミにはいい相手だろう。

    

      

「第三、第四戦闘軍団が敵航空機部隊と接敵」


  

「続いて、第一、第二戦闘軍団が接敵しました」

 

「第五、第六戦闘師団も戦闘に加わりました」

  

「敵はエンジェルの南二百キロを超えました」

 

「敵味方識別信号は正常に動作しているか?」

「完璧です」

  

「地対空ミサイルを発射!」


「第六、第七、第八対空大隊は地対空ミサイルを発射せよ」


 

 一時間の戦闘で決着が着いたか。


「重巡洋艦二隻に被弾」

「更に九式駆逐艦四隻が被弾」


「六艦とも被弾するも死者はありません」


「戦闘機部隊で撃墜された機体なし」


「若様、ほとんど完勝です。敵は機銃しか搭載していなかった模様です」

「半数が爆弾を抱えていたようです」

       

「やった! アレス王国の完全勝利よ」

「ノア、やりましたね」

   

「こんなに余裕を見せて戦死者を出したら笑い者だったよ」


 

 六時間後に繋がった映像でバビロン帝国とサン王国の首都と工業地帯の

焼け跡の映像がテレビ局の映像に乗って国中に流れた。


  

 翌日にオーガス王国のセシリー女王との電話会談でバビロン帝国領と

旧ユニコーン王国領をアレス王国の領土としてサン王国の領土は

オーガス王国が長年の戦争の対価として、もらい受けるという事になった。  



 そして二週間後。

 

「ノア型空母七隻と重巡洋艦十四隻に軽巡洋艦二十八隻と駆逐艦五十六隻か

随分と大きな部隊ですね」

  

「それに八万トン級の輸送船が百八十隻よ」

「陸軍も三十万も乗り込んでますよ」

  

「移民する民間人二百万人も既に決まったんでしょう?」

「そうだね、三日後に八千トン級の輸送船で第一陣の五万人が出発だよ」

   

「その人達がバビロン地方とユニコーン地方の管理をするのね」

「だいぶ死んだと言っても八億以上の人間は残っているからね」


「僕たちがアレス領に来たときのクレアの住民と同じですね

きっと南部で成功するんでしょう」

    

「もう敵国はないからな」

「安定したら我が国も軍縮だね」

「この星の人間も五十億も居なかったのね」


「今年生まれた赤ちゃんは八千九百万ですよ。年末までに九千万人に

届くかも知れません」

   

「わたしだったら来年の一月に登録するわ」


 

「ノア様、それでは行って参ります」

「ギュンター、頼んだよ。君がバビロン総督府の総督だ」

「ノア様、わたし達も行って参ります」

      

「サキ、トム、ユニコーン王国領は広大だ。力を合わせて統治してくれ」

「「かしこまりました」」


 これでいいよな。


「全艦、エンジン始動!」


「さようなら」


「「「「「さようなら」」」」」

「「元気でね」」


 

「全艦、西に向けて発進!」


 神様からの罰もなかったし

これで良かったんだろう。いくつもの選択肢があったけど

わたしはこの道を選ぶ運命だったのかも知れないな。


     

「ルーカス、明日からお前が国王代理だ」

      

「正式な国王にはしてくれないの?」

「馬鹿だな、そんな事をしたらデネブ商会に税金が掛かるじゃないか」


「父さんは最後まで金儲けなんだね」

   

「シリウス商会の創業者だからな!」


 

 アルタイル王国の貴族の生活も悪くなかったが

私にはアレス王国が良く合いそうだ。


 ありがとうみんな、よく十年以上着いてきてくれた。


 

「ありがとう、皆さん」


アレス王国万歳。


 転生のチャンスをくれた神様にも機会があれば

お礼を言わないといけないな。



お読み頂きありがとうございました。



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