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第百四十三話:今までありがとう。さよなら一番鑑


 遂に十月も中旬になり米の収穫も終わり国の経営も上手く行っている。


 問題があるとすればプロキオン商会くらいだろう。


 

「若、米は予定通り大豊作です。収穫高はガイア北部が三億二千万トン

ミランが四千万トンと新領土では南部米が六千万トンとアレス米が

三億七千万トンで本国が一億七千万トンです」

 

「九億六千万トンか、上出来だな。まさかニコから収穫報告を聞くとはな」


「兄貴、ヒルダの姉さんも出産じゃ仕方がないですよ」

「あのヒルダさんが定例会議を休むとは珍しいですよね」

  

「ヒルダも今回が最後の出産じゃないかって言ってたわ」

「ヒルダさんも三十一才ですからね」


「私達も来年には二十六才ですよ」

「結局、十一型は出来なかったな」

 

「ホーク、ファルコン、スワン、スパロウの改修は進んでいるようですよ」

「でも増産してないんだろう?」

「父がもう少しで良いのが出来そうだの一点張りなんですよ」

 

「ケインとマクベスも頑固な親父を持つと大変だな」

「「慣れましたよ」」


「それでどうします。この有り余ったお米は?」

「オーガスへの輸出も去年の米で済んでしまいましたよ」

「新米を食べれるのは有り難いのですが」


「国民一人あたり七百キロですか

国民が全てアヒル族でもなんとかなりそうですね」


  

「私は二日で米五キロを食べ終わりますよ」

「ロイドは別としても今年は穀物が余るとは」

「去年はミカエルの領土だった所からの収穫だからな」


「この収穫高の事を知っている人間は高官だけですよね?」

「そうなるな」

「豊作だというのは知れ渡っているでしょうけどね」


「公式には五億トン程度と発表しておきましょうか?」

「そうなると、船舶事故でも装って事故を一つや二つ程度

でっち上げないと無理だろう」


「貴方たち、事故をねつ造するなんて許さないわよ」

「シャル、わかってるよ。ちょっとした冗談だよ」


「でも子供と国民以外で六億くらいいるんだろう?」

「そっちも一億トンあればたりるわね」


 

「一億トンはオーガスに売るとして、ケイン、玄米からでも

アレス液は製造可能なのか?」     

「可能ですよ。まさか収穫したばかりの玄米を使うとは思いませんでした」


「兄貴、大麦を増産したらどうですか?」

「ヤン、酒を飲みたいだけだろう」


「暖かい場所ではサトウキビ、あまり土壌の良くない場所では家畜用飼料

本国では今まで通りに米と小麦を主体でいいのでは?」

「そのあたりが妥当な線ね」

「肉の価格が下がるのは歓迎ですね」


「若様、そうなると海上ファームはどうしますか?」

「米が高値で売れないと知れば農家は野菜に転作するでしょうね」

「十分あり得るね」


「若君、海上ファームの主力を養殖に転換してはどうですか?」

「デニスは漁師に手厳しいな」

 

「腕のいい漁師以外は失業するよ」

「でも穀物と肉が手に入るなら残りは魚しかないのよね」


「小麦に回してお菓子作りもいいかも知れませんよ」

「お菓子となると牛と鶏と砂糖よね」

       

「牛と鶏は既に増産と決まってるし。サトウキビとテンサイも十分だよな」

「とりあえず、海上ファームは民間に一時預けて国は余った資源と

人材で普通なら軍備拡張なんだが……」


        

「敵もさっぱり攻めてきませんね」

「それでも空軍は最新型が欲しいですよ」

「それを言うなら海軍も新鋭艦が欲しいぞ」

      

「そんな事を言い出したら陸軍も宇宙軍も欲しいって言うでしょう」

      

「余ってるなら俺の所でビル建築で使っても良いぞ」

    

「南部地域はまだまだ発展の余地はありますね」

「エクレールはもうそろそろ限界に近いわよね」


「人口七百万ですからね」

「初めて俺達がアレス領に来たときの三割が住んでるんだよな」


「若、バビロン帝国にこちらから仕掛けて戦争を終結させては如何ですか?」

「ニコにしては珍しく過激な発言ね」

「ニコ、仕事のしすぎは良くないぞ」


「違いますよ。そもそも軍事的脅威がなくなれば

我が国の経済は今の三倍以上も夢ではないんですよ」

 

「軍事費がなくなればかなり発展するかもな」


「警備部だけで済めばお手軽だな」

「でも二大大国が存在する限り軍事力は手放せないないわよ」

「サン王国にも滅びて貰うという選択肢もありますよ」


「宇宙軍か」

 

「ステーションの警備しかしてないもんな」

「コロニー計画も一気に進みますね」

「ところでどの程度出来上がってるの?」

 

「そうですね、……全体の一割程度ですね

攻撃を受ける可能性が全く無いと仮定すれば一年で完成しますよ」

 

「あんな巨大な建造物を勝手に宇宙に建造してるのがバレたら大問題よね」

「宇宙軍もあのデカ物のお守りは大変そうですね」

  

「でも宇宙軍がいるから爆撃機を作らないで済むんだけどな」


「一発撃ち込んでみるか?」

「「やるんですか?」」

「悪くないですね」

 

「やってやりましょう」

「怯えることのない生活も良いですね」


 この流れは、私に荷電粒子砲を再び撃てと言っているのか?

 時期的にも来月が転移した月に当たるな。


「マクベス、技術的に問題点は?」

「既に完璧です。明日撃てと言われても対応できます」


「よし、一ヶ月間考える時間を与えよう。講和するならそれも良し

戦争継続を訴えるなら一撃お見舞いしよう」

       

「わかりました」

「なんか、簡単に終わりそうですね」

「今まで手加減していただけでも感謝して欲しいですね」

    

「十二型が見たかったよ」

「せめて十一型でも良かったな」


「ノア兄、『最高にかっこいいでしょう』をあげるわ」


「それでは解散だ。次に集まるときはアレス王国の運命を変える時だな」


 バビロン帝国に誰がいるか知らないが運がなかったな。


 


    

 五日後にはノア型空母一号鑑の退役式だ。         

    

 凄い人だな。


「若様、空軍の参加者は退役組も含めると三万人以上ですよ」

「ノア様、海軍は四万以上集まってますよ。新米はみんなこいつで

空母発艦と着艦を学びましたからね」


「ノア兄、元十四型の飛行士も続々と集まってるわ」

「今では半数以上が最新鋭機に乗ってアレス王国の飛行士を

牽引してくれてますからね」

            

「マルコ、お前からみんなに挨拶してやってくれ」

「いいんですか?」


「マルコが長い間守ってきた旗艦じゃないか」

「そうよ、アレスの盾として十年も頑張ってくれたんだもん」

「マルコは初期メンバーじゃないか」


「わかりました、お引き受けします」


 さらば、ニミッツ級原子力空母さんよ。地球よりも沢山戦えただろう。

   

「私は軍務長官のマルコだ。これよりノア型一番艦の退役式を執り行う」


 それから三時間は海軍や空軍の飛行士や家族が最後のお別れの為に

乗艦して写真撮影をしたり落書きを書いていたりして終わった。


   

「それではハーグの南南西五千キロの海中で沈める。

随伴はノア型空母二番艦と三番艦とする。解散」


「第一航空戦闘旅団、一番艦に向かって敬礼!」

 

        

「さようなら一番艦」

「最後まで名無しで済まなかったな」


 

「「「ありがとう、一番艦」」」

 

         

「「「ありがとう」」」


 名無しで済まなかったな。名前を付けると乗組員が離れたくなくなるからな

名無しで悪かったが静かに眠ってくれ。


        

 また、暗いぞ。


「お兄ちゃん、ファイトだよ」

「にいに、がんば」

「マキも応援してるの」

「兄ちゃん、落ち込んじゃダメだよ」


「どうしたんだ?」

「ノア、プロキオンスタンドで事故が起きて人が死んだらしいの

原因が臨時雇用の人間が解雇された腹いせなんですって」

           

「お父様、犯人はすぐに陸軍に捕まったみたい」

「兄さん、そろそろ諦めたら」


「ルーカス、ちょっと来い」


   

 こいつには商売は無理だったか。

   

「何ですか父さん?」

「極秘だが来月にはバビロン帝国と決着をつける。そうなれば一時的に

平和になるだろう。お前はわたしの側で内政を学んで二年後を目処に

国王になれ」


「僕が国王ですか?」

「自分の意思ではないにしろ一度は政務を経験しているんだ。このまま

商会長を務めれば立ち直れなくなるぞ」


       

「なんか、逃げるみたいでかっこわるいですね」

「父さんも成り行きで独立して王様になったんだ。その時は戦争の連続

だった。それに比べれば既に大陸は統一済みだ。かなり楽だろう」


「でも来年で十一才ですよ」

         

「父さんと母さんは実はこの世界の生まれじゃないんだ。一番艦は

十年前の空母なのに最新の空母に負けない機能を持っている事を不思議に

思ったことはないか?」


「例の原子力ですね」


「そうだ、神様の気まぐれでこの世界に転生してイシュタル辺境伯家の

次男として生まれ変わったが、父さんの生まれた国には最初から空母と

航空機が存在していたんだ」


「だから、たった九才でシリウスの基盤を築けたんですね?」

 

「そうだな、生まれた時には既に今のお前程度の知識があったからな

お前は人の上に立てる器だと思ってる。自信を持て。父さんは実の兄と

ちょっとした仲違いで争う事になったが、お前ならクレア達を守って

平和な世の中で善政を敷けるだろう」


 

「分かりました。僕にはお金儲けは向いてないようです。プロキオン商会は

父さんにお返しします。その代わり、明日から父さんの側で内政を

学びたいと思います」


 最後の戦争を見せるのもありかも知れないな。

 わたしは十才の時にこれだけの決意はできなかっただろう。


「よし、プロキオンは預かる。お前は最後の戦いを近くで見ておけ」


「はい、目に焼き付けて見せます」


                 

あっけないもんだよな。

 覚悟を決めればいつでも戦争を終わらせられると言うのに

何故実行しなかったのか?


 それも、あと数週間後にはわかるだろ。



お読み頂きありがとうございました。


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