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第百四十話:生まれた国の差


 国税が新領土併合記念として二ヶ月間限定のアレス国民登録

キャンペーンを行い、期間内に登録した国民に対しては懲罰金を

七割削減するとした政策に歓喜した結果、かなりの人間が

登録を済ませた。


 

「国民総数が十三億六千万か?」


「ノア様、これでも成人の儀を済ませていない子供は四億以上と推定され

八才未満で国民登録している人間は僅か七千万程度です」


「内務の調査でも未だに登録していない国民は一億五千万以上

いる者と思われます」


「その者達の多くがオーガス王国や闇ルートでサン王国やバビロン帝国に

亡命しているようです」

 

「逆にオーガス王国からは主に闇ルートで年間に二千万以上の移民が

我が国に移住を求めてやってきております。その内訳も九割以上は

八才未満の子供とその親です」

  

      

「何でそんな赤ちゃんを含んだ子供達が命がけで亡命してくるんだ?」


「見つかれば終身刑ですが、亡命してくる子供の九割以上は

獣人です。オーガス王国でも八才の時に成人の儀と同様の式典が

行われており、この時に獣人と判断されれば九割は奴隷確定ですから

家族で命を賭けて密航する者が絶えません」

 


「兄貴、オーガス王国では毎年、星金貨を一枚以上払えれば

獣人でも奴隷落ちしないそうですよ」

 

「ただでさえ獣人は双子以上の出生率が異常に高いんだ。その金額は

無理な相談だろう」

 

「オーガス王国では税金を納めない人間は全て奴隷ですからね」

「困った制度ね」

 

 

「我が国で今年度に成人の儀を済ませた人間は八千四百万人で、その中でも

獣人が占める割合は既に三割を超えています」


「うちらの国も二十年後には半数以上が獣人になりそうね」


 戦争が終わって出生率は右肩上がりだ、それじゃ成人の儀式前の予備軍は

五億以上いるということか。


「赤ん坊からの人口も併せると二十億程度になりそうですね」

「そんなに食べさせる食糧があるの?」


 食糧問題か、面倒だな。


          

ノア様、本国では今年の小麦は遂に戦争の影響から完全に回復しており

ガイア全土で二億二千万トン、ジュノーの新領土で三億トン

ミランで二千万トン、そして本国での収穫高が一億五千万トンです」

    

「六億九千万もあれば余裕ね」

「今年は買い占めは許しません」


「しかし、今年も小麦一億二千万トンと米一億トンの緊急輸入依頼が

オーガス王国から来ています」


「あそこも懲りないわね」

「我々も今年は戦争したけどあちらはもう五年以上だからね」

「今はまだオーガスと良好な関係を築いておきたいですね」


「経済も絶好調よね」

「オーガスが倒れるとサン王国とバビロン帝国の二カ国を相手に

全面戦争となりますね」           

「サン王国とバビロン帝国は理由は分からないけど戦争しないのよね」


「バビロンは戦力が整ったら

アレスに戦争を仕掛けてくる予定なんじゃないか?」

「コンラート、不吉な事は言わないでよ」

         

「まあいい、オーガスへの輸出は認めよう」


 オーガスも公式以外に六億以上の人間を抱えていそうだな。

  


 

 その三日後にコンラートの言葉通りにバビロン帝国の航空機が発見された。


「若様、偵察に出た部隊からの報告では戦闘機六百機以上に

攻撃機と思われる物が二百機以上との報告です」


「ノア様、艦艇が三百隻程度確認されています

空母のような物が八十程度いる存在するようです」


「コンラートの馬鹿、あんたが変な事を言うからよ」

「コンラートの空軍で対処しろよ」


「まだ千キロも離れているんだよ。全力は尽くすけど海軍も協力してくれよ」

      

「若君、どうします?」

「空母のような物というのはどの位の大きさなんだ?」


「うちのヘリ空母と同程度ですね。大きさは四万トンくらいありますが

上に載っている航空機が大型なので上空から見えるのは二十機程度です」   


「そんなのが八十隻もいるのね」

「敵の航空機は最大で千五百機を超えそうですね」

 

「既にノア型空母六隻とアレス型空母六隻が南部に展開しています」

「クラウス型空母三隻もハーグの南西に展開済みです」


「若様、空軍もエンジェルを中心に南部に三千機を揃えてあります」

「海軍も三千五百機は出せます」

  

「早めに叩かないと南部のガス田と油田プラントが攻撃されます」

「ノア兄、ちゃちゃっと叩いちゃおうよ」

 

「チャンネルアリスの報道で既に住民にも現場からの

映像付きで伝わっております」

「余計なことをしてくれるわ。南部は半分パニック状態よ」


「よし、一度だけ我が国の五百キロ圏内に侵入すれば攻撃すると

警告しよう。それでも敵の部隊が進撃してくるようなら航空機と

空母を徹底的に叩け」


「敵の艦艇はどうしますか?」

「逃げるなら見逃そう」

     

「でも敵船は鈍足ですよ。五百キロ進むのに丸三日はかかりそうですね」

  


       

 その四日後に四百八十キロまで接近してきた部隊に攻撃を開始した。

  

「敵の航空機は壊滅させました」

「艦船も逃げたのは二十隻以下でした」


「コンラート、敵戦闘機の推定性能は?」

   

「全長五十メートルに全幅四十メートル程度で最大戦闘速度が時速千七百キロ

程度で高度一万二千メートルまで上昇するのを確認済みです。旋回能力が

悪いので容易に撃墜出来ましたが同等の数を揃えられたら我が国も

一割は損害を出したと思われます」


 

「海軍は敵攻撃機と主に戦闘しましたが、あれは爆撃機ですね

ミサイルは装備しておらず代わりに相当数の爆弾を抱えていたようです」


「艦艇に関しては全くお粗末な出来で高度四千メートルまでしか届かない

対空砲に射程四十キロ程度の砲撃のみでした。逃げる敵船の速度も

時速二十五キロ程度でしたね」


 

「そうね、『改良して出直してきなさい』をあげるわ」

「ミーア、出直してこられると困るよ」


 サン王国と良好な関係とは聞いているが技術供与は受けてないのか?

 

「航空機に自信を持っている国が航空戦力だけに大敗したんです

一年は攻めてこないでしょう」

     

「今回は艦隊艦ミサイルや地対空ミサイルも見せておりません

バビロン帝国には精々新規建造に金を使って貰いましょう」


「それなら、収容数の多いアレス型を二隻だけを南海上に残して

残りは沿岸警備に戻すか?」

          

「ノア様、ノア型空母の一番艦は原子炉の調子が今一つで

次に帰港したら退役予定です。旧式の二番艦と三番艦と共に

別れを惜しませてやりたいと思います」

 

「そうか、一番艦は配備されて既に十年も経つのか」

「原子力空母は既に製造可能ですが製造は許可されないのですよね?」

   

「あれは試作型だからな。原子力空母の製造は認められない

人の住んでいない地域で廃船としよう」

  

 バビロン帝国あたりにぶつけてやりたいけどな。

やり過ぎはよくないだろう。




「ママ、お替わり」

「マキ、大丈夫なの? もう三杯目よ」

 

「幼稚園では体力が要るの。サッカーの授業が一時間もあるのよ」

「マキはサッカー選手になるのか?」


「アレスリーグのスター選手になって空金貨百枚稼ぐの」

「マキ、アレスリーグは男子のみよ」


「お姉ちゃん知らないの、今年の秋から女子リーグが始まるんだよ」

「でも獣人に体力では勝てないでしょう?」


「たぶん、身体強化の魔法込みなら良い勝負だよ」

「精々頑張りなさい。商会の経営の方が儲かるのに勿体ないわね」

 

「ソフィー、また支店を増やしたらしいな」

「お父様、よく聞いてくれました。遂に五百店舗目をオリオンの街に

開業しました。あそこはお父様の生まれ故郷なんでしょう?」


「そうだったね、オリオンか懐かしいな」


「フィーうどん店は魚料理から肉料理まで出しているのよね」


「お母様、その通りです。毎日一店舗の利益は金貨一枚ですが

集まれば空金貨五枚ですよ。それに交代で週に一度はお休みです」

「優秀なのね」


「えっへん、そうなのです。ソフィーは優秀なの」

  

「それもクレアド商会がお肉や野菜を安く卸しているからでしょう」

「お姉ちゃんには感謝してますよ」


「私の所は店舗数は少ないけど牛を毎日五百頭に豚を毎日一千頭に

鶏を二千羽を生産、仕入れ、販売まで一括してやってるから

一店舗の売上げは黒金貨三枚以上よ。利益も黒金貨二枚ね」


            

「フィーのお店の二十件分です」

「そんなに簡単にお姉様に勝てると思わないことね」


 二人ともデネブ商会の輸送車を格安で使っているのにお気楽な物だ。


「グラン亭はまた二十店舗が閉店に追い込まれました」

「お兄様、経営に問題があるんじゃないの?」


「兄さん、聞きましたよ。またランチの値段をあげたそうじゃないですか?」

「ランチの値段が大銅貨九枚は高すぎるよ」


「そうね、一般家庭の月収は金貨三枚よ。一家六人で小金貨一枚以上よ」

「母さん、シリウスのランチは銀貨二枚と大銅貨二枚だよ」


「知名度の差だろうな」

「シリウスの系列店で食べればシリウスポイントが溜まるじゃない」

「グラン亭でもプロキオンポイントが溜まるよ」


「兄さん、シリウスはロケットからベビー用品まで手がけているのよ。ポイ

ントの価値が違いすぎるわ」

 

「プロキオンも今は電力事業が好調だ。国もまだまだ電力が足りないから

しばらくの間は大丈夫だろう」


 わたしの作り上げたプロキオンが衰退していくのを見るのは辛いが

これも自由競争だ、仕方あるまい。



 

 エクレールにまでモルト弁当店が出店してるのか?


「コロッケ弁当の大盛りを四つね」

「俺は唐揚げ弁当の大盛りを六人前だ」

「わたしはフライ定食を七人前ね」


        

「ノア、来てたんだ。見てよ開店三日目で既に毎日六百食を売ってるのよ」

「ルチア、モルト亭への影響はないのか?」


「大丈夫よ、モルト亭の近くには建ててないし客層も違うから

一食で銅貨五枚の儲けだけど店内の利益も合わせれば

小金貨五枚近くになるの。さすが王都近郊ね」


「まさにコツコツとだな」

 

「それにここで配送部門の荷物を受け取ってくれればモルト亭の

一割引券をプレゼント中なの」


「客層が違うんじゃなかったのか?」

「有効期限は十日間だけど譲渡するのは自由だから

子供のお小遣い稼ぎになるわ」


「そうか、牡蠣フライとはやってないのか?」

「牡蠣なんて使えるわけないじゃない。価格が銅貨十五枚よ」

 

「価格は王都でも同額なんだな」


「モルト弁当店は全国共通価格が売りなのよ。値上げする時は全店一斉

値上げよ。大銅貨一枚までならあげられそうね」


 ルチアの笑い声がちょっと怖いが、この価格でも利益がでるのか。


 プロキオンも危ないな。


   


お読み頂きありがとうございました。


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