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第百三十九話:息子は経営には向いていないようだ


 アレス歴十一年も五月になって国の運営もデネブ商会も順調だ。



「ルーカスの所が経営不振なのか?」

 

「はい、兄貴、どうもLNGタンカー以外の船舶と漁船は売り払って

海運からは手を引いたようです」

 

「若様、グラン亭も一日の利用客が二百名程度に落ち込んでいるようですよ」

「ルーカスは一体何をやってるんだろうな」


「船舶を買い取ったのはデネブ商会じゃないですか?」

「そうなんだ、そんな報告は聞いていないけどな」


「デネブに取っては少額の取引ですから言わなかったんでしょう」


「まあいい、それでニコ、報告というのは?」

 

「はい、ミランで試作中だった一ヘクタールの植物工房が完成しました。一日

にレタス四トンを出荷できる工房が十件です」


「そんなにレタスばっかり作ってどうするの?」

「ミラン大陸は作物が育たないけど電力は余っているからね。それに

ジャガイモや山芋じゃなければかなりの種類の物が栽培可能だよ」


 

「ジャガイモはイシュタル芋があるからいいけどね」

「夜間に余った電気で作るのね?」

「そうなるね、それに夜間に作業させるのは可愛そうだしね」

 

「輸送費を考えれば多少は安上がりになりそうですね」

「新種のレタスなら今の十倍育てられるんだけどね。馴染みがないからなのか

あまり売れないんだよ」

  

「農地に向かない地域で人口の多い街の周辺なら収益を見込めそうですね」


 

       

 こんなもんかな、農家との兼ね合いが難しいんだよな。


「ノア様、遂に宇宙コロニー建設の設計プランが完成しました

予算が付けば来月にも着工する事が可能です」

         

「宇宙コロニー計画は莫大な予算がかかるからね。それで総工費は?」


「既に風魔法で五重加工された軌道エレベーターが十六基稼働中ですので

輸送費は格段に下がりましたが……直系三十キロ程度のタイプで

空金貨三百万枚程度かと思われます」


「出せない額じゃないけどね、本当に作る意味はあるのかな?」

  

「馬鹿げた軍事費に掛ける金があるならば『アレスの槍』を作れば

もはや攻撃機や爆撃機など無用の長物になります」


   

「アレスの槍ってなんだい?」

「重さ二百キロのミスリルとヒヒイロカネの合金を敵の都市に高速で

落とす兵器です。荷電粒子砲と違ってある分だけ撃ち込めます」


 マクベスもダンの息子にしては過激だな。しかし、対粒子砲対策も

必要だよな、バビロン帝国がどれだけの科学力を持っているかは

ほとんど不明だ。それに夢がある。


 

「いいだろう、一号機の成果次第で中止にするか継続するかを判断しよう」

「ありがとうございます」

             

 広大な領土があるんだ。そもそも移住計画は意味がないんだよな

そうなると工業プラントという事になるのか。あとは研究開発だな。



   

 今日は農業計画と宇宙開発計画と色々あったな。


「ノア、おかえりなさい」


「夕飯は何かな?」

   

「かつおのたたきにアジの刺身に赤マグロのステーキよ」

「何でステーキーなんだ?」


「子供達が刺身よりステーキーが好きなのよ」

「まあいいか」


「今日はお父さんはマキの隣で食べよう」

「お父様、マキがご飯をよそってあげる」


「ありがとう」

「「「いただきます」」」


「味は悪くないけど肉みたいな力が湧いてくる感じがしないわね」

「ハンバーグが最強です」


 やはり旬の食べ物は美味いな

植物工房で作った野菜はどんな味なんだろうな。



  

「父さん、グラン亭の六割の店舗が赤字に転落したよ」

「夕飯を食べ終わった途端に重い話だな」


「利益を出しているのは電力とスタンド経営だけになったよ」

「兄さん、経営方針が不味いじゃないの?」


「フィーうどん店は絶好調よ。毎日三百人以上のお客さんが来るの」

「わたしの店も一日の利益で金貨六枚は行くわね」

  

「グラン亭は旗艦店でも利益が金貨二枚ほどまで落ち込んでるよ」

「モルト亭も利益は金貨二枚程度だぞ」


「でもモルト亭は全店が黒字でしょう?」

「アヒル族も毎日五十人は来店するらしいな」


 

「ルーカス、お母さんは思うんだけどメニューが多すぎるんじゃないかしら?」

 

「でも品数を多くしないとお客さんに飽きられちゃうよ」

「それと去年の躍進していた時に比べてかなり高級店になってしまってるわ」


「シリウスやフリーダム系列のお店も高級志向だよ。高いメニューは

一食の利益が大きいんだよ」


「まあ、グループ全体で赤字に傾いたら考えてやろう」

「もう既にダイアナの開発は止めないといけない状況なんだよ」


「ルーカス、最悪は潰れてもいい商会の経営が傾いた程度で

弱気になってどうする。お前は次期国王なんだぞ」

   

「そうね、国の経営だったら失敗できないわ

ルーカスなら言ってる意味が分かるわね」


そもそも大銅貨六枚で食べられたディナーが

銀貨四枚っていうのがおかしいんだよ。

 それに仕入れコストが跳ね上がってるのも原因だよな。


 

 

 昨日はルーカスの愚痴に付き合わされてしまったな。

   

「ノア、ルーカスは国王としては問題ないと思うんだけど

商才がないのかしら?」

「社員を使い切れていないんだろう。原点に返れば自然と盛り返すはずだぞ」


「そうね、プロキオンカードの会員数は三百万以上だって言うしね」

  

 まあ、本来は娘達に経験を積ませるため始めさせた商会経営だ

ある意味、失敗する事はいい経験になるのかも知れない。


 

        

 うちの店は列が途切れないようだな。


「ノア、もうメニューを減らそうよ」

「ルチア、どうしたんだ?」


「注文が二つの日替わりメニューに集中してるし

パスタなんて一日に二十食も出ないよ。それにコストも馬鹿にならない」


「そうだな、肉料理と言っても基本的にはハンバーグと唐揚げが

定番メニューだから日替わりを四つで回しているような物だからね」

      

「それじゃ人気メニュー四品と日替わり三種類にしていいかな?

かなりスタッフの負担も減るわ」


「いいだろう、任せるよ」


      

「ノア様、デネブ航空の新路線案がまとまりました」


「えっと、六割の旅客機をサテライトとライナで経由させるのか?」

「はい、シリウスはサテライトを放棄してバベルに新拠点を移しました

この機会に旧アレス領土で地盤を固めた方が宜しいかと」


「これを見ると南東のデロイアや南のエンジェルに

南西のハーグの利用客が少ないね」


「ノルトでは旅客機よりも格安の船が利用されており

それはミランも同様です。問題はガイアですが南が安定していないので

当分の間は本国と北部を結ぶ路線のみに就航させます」


 戦争終結から三ヶ月だ。仕方ないだろう。


「それでいいよ」


                   

「ノア様、配送ステーションが足りないですよ

現行の四百拠点から八百拠点に増やすことを進言します」 


「港周辺にある二十四の巨大拠点を使ってもダメなのかい?」

 

「当社は航空、鉄道、船舶から送られてくる荷物をドア・ツー・ドアで

届けると約束しています。特に鉄道貨物から送られてくる荷物が膨大で集荷

施設は荷物で溢れかえっています。三日前に航空部品の入った小箱を探すのに

四十人で八時間かけてやっと見つける有様ですよ」


 小箱一つを探すのに不眠作業とは大変そうだ。

     

「大変だね」

「大変ですよ、輸送車十八万台とジェット航空機四百二十機に

セスナ三百二十機に船舶六百隻で東はオーガス王国から

北西のミラン大陸までを結んだネットワークです。これでも

オーガス国内での配送業務を行っていないので助かってますよ」                  

「仕方ないね、他の系列会社でも使えるように上手く設置してくれ」

「わかりました」


 うちも十式の最新輸送車を使いたいが

そんな事を言い出せる雰囲気じゃないな。


 

  

「ノア様、モルト弁当店を増やしましょう」

「食品関係で賞味期限が近くなった商品を格安で提供している弁当店だろう」

    

「そうです、既に顧客は二億人に近くいると思われ更に増加中です」


「アレス王国の総人口の四分の一もいるのかい?」

「ノア様、公式の報告なんて信じているんですか? アレス国内には

少なくとも子供も合わせれば十四億以上は居ますよ」

    

「そんなにいるのかい?」

 

「いいですか、アレス国民に計算されるのは金貨四枚を支払って登録するか

入学金を支払って学院に入学するか、八才の成人の儀でお金を支払って

内務省に登録する三点のみです。私も十才で孤児院を追い出された後に

十三才で街から出る為に何とか金貨四枚を支払って登録出来ましたよ」

 

  

「そんな事になっていたのか?」

 

「十三才で登録出来れば良い方です。国民にならなければ国税に

見つかりにくいですから。二十才でも国民証を持っていないという人間も

相当数居ますよ」

  

「でも不便だし国税も黙って見てはいないだろう?」

 

「見つかったら懲罰金ですし電子カードは持てないし長距離便にも乗れない

最悪なのは生まれた街の圏内から出られないという事ですね」

  

「わかった、増やして構わないよ」

 

「ありがとうございます。利益は一店舗で一ヶ月に金貨四枚程しか出ませんが

格安食堂と日用品の売り場を併設していますからデネブ商会の拠点として

在庫処分の最終拠点として機能してくれるはずです」


 モルト弁当店の弁当はご飯大盛りで一つ銅貨十五枚だ

新鮮な食品を使えば黒字ギリギリのラインだが

需要があるならやるしかないか。



   

 昨日は色々とあったな。

          

「アイラ、昨日アレス領内には十四億以上の人間が

いると聞いたんだが本当なのか?」

  

「残念ながら本当です。新生児と目覚めの儀までの子供は厚生省で登録を

受け付けておりますが、それ以降は内務省の管轄になります。国民以外は

病院に入院する事も出来ず闇で治療師が暗躍しているようです」


 

「リキ、街から出る者の交通規制は解除出来ないのか?」

 

「税金未納の者を簡単に外に出しては全ての人間が行商を始めてしまい

ます。それに私もノア様と出会うまでは国民登録していませんでしたよ」


 裕福な親の子供しか国民登録が出来ないのか?

 


「ノア兄、私も十一月に生まれた子供翌年の一月に登録したけど

二年や三年登録が遅れるのは既に日常的な事よ」


「そんなに金が無いのか?」

「違うわよ、学院の標準入学年齢は九才でしょう。例えば十二才で

九才の子供と競争した方が圧倒的に優秀な成績で卒業出来るわ。優秀な

成績を出した学院生は就職する時に有利になるのよ」


 

「兄貴、俺の所は嫁のリンダがうるさいんで直ぐに登録しますが

情報局の職員の半分以上は十才以降に国民登録した連中ばかりですよ」


「厚生は適当な理由をつけて子供の登録料を下げる事は可能ですよ」


「内務では登録を済ませた国民の不満を考えると下げても二割が限界です

しかし、両親ともに死亡しているという条件ならば八割引きは可能です」

    

「そうなのか」

    

 仕事の都合上、情報局の職員は仕方ないとしてもこのままでいいのか?

 

ミカエルの旧国民でアレスに登録したのは四割程度だと言うし

そうすると軽く十五億人を超えているだろうな。



お読み頂きありがとうございました。


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