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第百二十八話:職場探しは大変だ


 五月末で第一次天然ガス事業計画は一度終了して真面目で優秀な人間

九万人のみを再雇用して半月の休暇を与えた。


 結局、ノルト大陸はLNG施設とLNGタンク二十二基に港の整備で終わった。


 ルミエール近くの工業地帯には受け入れ施設とタンク八基と発電所一カ所が

完成したので来月からはルミエールで本格開発になる。

 


「それでは来月の十五日から電力事業を開始します」

 

「プロキオン商会はルミエールと南のエクセリオンと東のベガに

電力を供給する予定だ」

      

「アラン、何万キロを供給するの?」

「坊っちゃんの考案した八十万キロワットの設備が六基で開業だ」

「それじゃ、年間で四百二十万KWhも供給できるの?」


「稼働するのは三百日程度だな。三百万程度とみておいてくれ」

「電力会社が価格を決められるのよね。幾らで売るの?」


「二KWhで銅貨一枚といった所か」

「安いのね」

 

「シリウスが十KWhで銅貨七枚だからな。少し値引きしないとな」

「電気って一日にどの位使ってるのかしら?」


「そうだな、一世帯でクーラーを使う家で十五KWh程度じゃねえか」

「もうクーラー無しで生活出来るアレス国民なんていないわよ」

 


「ミカエル王国では上級国民じゃないと買えないそうですよ」

「まだ上級だ下級だなんてやってる国があるのね」


「でも毎月、海金貨百五十枚も手に入るなんてグラン亭での

稼ぎが寂しくなりますね」

 

「おいおい、俺達の食事はグラン亭で大量に

仕入れてあるから安く済んでるんだぞ」


「そうよ、アヒル族には食費は命の次に大事な事よ」

「そうですね、毎日お腹いっぱい食べれるなんて

一年前は想像出来ませんでした」


 こいつらは一日に米だけで四キロ以上食べるからな。


「俺もここの飯は性に合ったな。毎食二キロは食ってるぜ」

「グラン亭もギガ盛りの先を考えないとね」


「テラ盛りですかね」

「何か熱い物を感じない響きね」

「いっそ宇宙盛りは?」

            

「それだと四キロくらいないと不満がでるんじゃないかな」

 宇宙盛りまで行くのかよ。


 

「そうだ、プロキオン盛りがいいんじゃない。ご飯二キロと六百グラムよ」

「何で二千六百グラムなんだ?」


「プロキオンの絶対等級がそのくらいだって聞いた事があるわ」

「ギガ盛りの八百グラム増加か、いいだろう」

     

「これでダメだったら四キロの宇宙盛りね」

  

              


 六月にスカイタワーの空いてるフロアーを埋めるために

二年限定で保証金の額を七割下げると通達が来た。


「坊っちゃん、どうする? 既にくじ引きでフロアーの取り合いだぞ」

「あと二フロアーは欲しいわね」

 

「スカイタワー本館に事務所を持つのは商会の権威に関わりますね」

 

「海金貨四百五十枚は流石に払えないぞ」

「そうなると激戦の中層フロアーですね」

   

「食堂は四十階置きなんですよね」

     

「このパンフレットだと四十一階から七十九階と

八十二階から九十九階までが空いてるわよ」

 

「八十一階は?」

「空軍が入ってるんだって」

     

「よし、二フロアー獲得を目指そう。アラン、抽選に行ってこい」

「何で俺なんだ?」

  

「僕はくじ運ないからね」

 

 

 二日後の昼に厳正なる抽選の結果。本館の七十六階と七十七階を手に入れた。


「アラン、七十八階と七十九階はどうしてダメだったの?」

「坊っちゃんの妹さんのクレア嬢ちゃんだったか。そいつに負けた」


「クレアも商会を始めたのか?」

「そうみたいだな。ソフィーっていう妹さんも八十二階を取ったみたいだぞ」

 

あいつら、僕が取れなかった本館を簡単に手に入れて。

 これは父さんが融資してるな。


 

 もう帰っていやがったか。


「父さん、クレアとソフィーに大金を貸しましたね?」

「ルーカス、お前の所は稼いでいると聞いているぞ」


 

「今は事業拡大中で今年はどうしてもまとまったお金が必要なんですよ」

「二人にも貸したし、お前にも海金貨一万枚を貸してやるか」


「ありがとうございます」

 

 四十五万枚あった海金貨も保証金に十万枚とLNG事業で十二万枚を

使ってしまったので実に有り難い。


 父さんってどれだけお人好しなんだ。

 この良い子ちゃんの感じはやはりルーカスなんだろうか?

 

 

「兄さん、お金を借りるなんてずるいわよ」

「お兄様、ずるいです」

      

「お前達のせいで希望のフロアーを取れなかったんだぞ」

「くじ運は普段の行いが出るのよ。罰が当たるような事をしてるんじゃない」

「じゃない!」


「何の店を始めるんだ?」

「私はチーズの加工業ね」

「ソフィーはうどん店を始めるの」


 歴史にずれはないようだな。今回は昆布の輸入は楽そうだな。

 

「お互い頑張ろう」

「「負けないわ」」


           

 今日は久しぶりに刺身でも食べるか。

      

「兄貴、今日は奮発してますね」

「ヤン、絶好調みたいじゃないか?」

 

「分かりますか。厚生省が『牛乳を飲もう』キャンペーンを開始してくれた

んで増産が追いつかない位ですよ」


「うちのクレアがチーズ加工を始めたらしいから

競争になるな」

「ああ、クレアド商会ですね。負けませんよ」


「若君、うちもECMという装置の大量受注を受けたんで

かなり儲かってますよ」

「あんたたちって商業大学院に行く必要無いんじゃないの?」


「僕もそう思うよ」

「ニコ、分かってねえな

学生なら親の所得の十分の一は非課税になるんだぞ」


 すっかり忘れていたよ。父さんの所得って一体幾らだろうな

僕も報告書を読み飛ばしていたよ。


 シリウスの株の六割を持っていたはずだ。


「ルーカス、教えて貰った鰹節工房が完成しました。三日後から

操業開始です」

 

「なんだ、メグも商会を立ち上げたのか?」

「はい、商業大学院に行けば強制的に立ち上げさせられると聞かされました」


「しかし、メグも鰹節とは意表をついた事業に手を出したわね」

「もう二割はルーカスの所で買ってくれると約束してあるんですよ」


「上質の鰹節なら父の会社でも扱うように言っておくよ」

「デニス、ありがとう」

      

 タマコの鰹節に対する愛情は本物だからな。良い物を作ってくれるだろう。


「それで試験は何日になったか知ってるます」

「知ってるわよ。七月一日の午前九時に算術、書き取り。更に商法と

魔力テストの試験を行うそうよ」

 

「何で魔力テストなんだ?」


「魔力の低い人間は魔法師に舐められるから

経営者には向かないそうよ」


「世知辛い世の中だな」

    

「それはそうと、ミカエルの王都のバベルで五百階建ての

超高層ビルが半分以上出来上がってるんだってね」

「知ってるわ。地上二千五百メートルなんでしょう」

  

「うちらのスカイタワーへの対抗心が見え見えだよな」

「別にヤンの物じゃないわよ」


「そういえば全員スカイマンションに住んでいるのね」

「一応、親が長官だからな」

「特権というやつね」


「俺も百階以上に住みたいぜ」

  

 やっぱり学院生になると伝達速度が遅れるんだな。

そろそろミカエルのビルが倒壊する頃だろう。


「そういえば、ミカエルはガイアの南部にも超高層ビルを建ててるみたいよ」

「お金があるのね」

「バルバロッサ帝国は余程溜め込んでいたようね」


「溜め込んでいると言えば、ルーカス、スカイタワーの本館に

事務所を構えたんだってね」

「保証金二年限定の七割引きの誘惑に負けたよ」


「うちらも共同だけどワンフロアー借りたのよ」

「父さんに海金貨を百枚も借りちゃったよ」


「デニス兄さんは航空工房の受注で当分は安泰でしょう」

「十一型戦闘機が開発されると嬉しいんだけどね」

「開発しないの?」


「どうも十型のスパロウっていう小型戦闘機の性能が良いようだから

十一型は延期するみたいなんだ」

             

「航空機産業の開発を一年止めるって、ある意味無謀ね」


「僕は父さんに聞いたけど量産型が二機種に一般型が二機種あって

どれも性能が良いらしいよ。だから改良は続けるって言ってたよ」

 

「それならなんとかありね」

   

 あなたには『再来年がんばりましょう』をあげましょうとか言わないんだな。


 

     

 やはり三百階建てでエレベーターが二百基だと少ないな。


「兄さん、今日も仕事?」

「クレアもだろう」

     

「午前中に農家に行って交渉してきたのよ」

「それはお疲れ様」


「四十階毎に中継地点を設けるのって不便よね」

「そうしないと食堂や会議室に行くのに時間がかかるだろう」


「わたしたちは八十階前後だからいいんだけど

二百五十階以上の父さんは大変でしょうね」

「僕たちとは違って本館から出ないから大丈夫じゃないかな」

「そういうものかな」


「それじゃ夜にね」


  

「ルーカス、電力契約世帯は十万件を超えたぞ」

「中々の滑り出しだね」


「ルーカス様、グラン亭の今月の利益は海金貨二百五十枚になりそうです」

「六店舗増えただけで大幅増益だね」

 

「プロキオン盛りが大好評なのが原動力ですね」


「あたいからも、小麦農家を回ってきたわ

確定で九百万トンの契約を取ってきたわ」


「おいおい、売れるのか?」

「去年の小麦はアレス王国の西部のマイセンに送っておいてくれ」

「何でわざわざ穀倉地帯に送るんだ」


「どうも船乗りの話だとオーガスの今年の収穫高は低いらしい」


「ルーカス、小麦を売る候補地の都市を十六まで絞り込みました」

「どこにする?」


「エクレールでは売らないでルミエール、エクセリオン、ドロシー、ブルーム

サザンクロス、ベガ、デルタ、セリーヌ、サンドリア、ハマーン、ベル

イースタン、グランシャリオ、マイセン、ジェノバ、キングです」

 

       

「いいんじゃないか」


 ヤンとコンラートともぶつかってないし理想的だろう。


 まずは試験に受かって余裕を持って大商戦に立ち向かおう。



お読み頂きありがとうございます。


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