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第百三話:親子面接なんてご免です


 二月二十五日にタマコが双子の女の子を産んだ。

 そしてノルト大陸の内戦は規模を拡大して大陸全体に及んでいる。


「リリーナ、希望の名前はあるかい?」

  

「そうですね、クラリスとディアナが良いかしら」

「それじゃ、クラリスが六女でディアナが七女だな」


 

 

「ノア様、おめでとうございます」

「ヨハン、旅行はどうだった?」

    

「視察に時間が掛かり帰りが遅れましたが満足する結果です」

 

おいおい、家族旅行中くらいは仕事の事は忘れろよ。

 

「オフィスで話そう」


 

 陸軍の警備兵が増えてるな。 


「ここに来るとあの壮絶な整理作業を思い出しますよ」

「内務は荷物だけ運び込んでほったらかしだったからな」



「若様、お待ちしていました」

「何かあったか?」

    

「残念ですが、ノルト大陸でルッツ型の目撃情報が入りました」

「航空機を隠し持っていたのか?」

  

「残念ですが確認出来たのは二十機以上です」

「わかった、八型を警戒に当たらせよう」

  

「ノア様、アレス型空母を一隻派遣しましょう」

「トムに任せる」


 面倒だな、航空機があるとなると時速六百キロといえど無視は出来ない。

  

「それで、ヨハン、アインスはどうだった?」

 

「素晴らしい発展ぶりです。毎月二隻の巡洋艦と三十隻の輸送船が完成しており

陸軍用の車両は月産二百台程度ですがまだまだ土地に余裕があり、既に

造船においての供給量はベルの八割を超えています」  


「そうなるとベルの造船関係は最先端技術の保持者とアヒル族の

技術者以外はアインスに異動させた方が効率的かも知れないな」


 

「そうですね、既にガス関連及び製油施設の八割と製鉄工房の六割は

ミラン大陸南部に集中しています。最新型空母以外は任せてもいいでしょう」


 航空機のベルと造船のアインスか。

自動車を全面的にアインスへ移行すると運搬に手間がかかるんだよな。


「それで進めるとして問題はノルト大陸だな」

「中途半端に介入すると手痛いしっぺ返しを喰らう可能性があるので

静観するか本格介入するかのいずれかですね」


「それなら当面は静観だな」

     

   

「ノア兄、これはお土産ね」

「ノルト大陸の繊細な地図か」


「アヒル族の住んでいた地域以外の繊細が載っているわ

東西が一番長い場所で千八百キロ以上で南北が四千キロ弱ね」

「それに人口が四年前の記録ですが人口が九千万とありますね」


 前の世界線とは領土の大きさは同じだな

南北で四千キロもあるんじゃ

ミラン帝国が北部に侵攻しなかったのも頷けるな。


「戦争するほどの余裕があるのか?」

「これも四年前の情報になりますが食糧自給率は四割です

拡大した旧キグナス帝国と同等ですね」

      

「いい加減にして欲しいんだけど

飛行艇技術が伝わったっていう情報もあるのよ」


 自給率が以前の二倍弱で航空機の技術付きか。


「二千万は移民として来たから、それでも七千万は残っているのか」

「若者もかなり移民していますから頑固者を説得するのは難しそうですね」


「お土産は空軍と海軍に送っておいてくれ」


 

  

 警戒中の航空機が落とされないのを祈るしかないか

タンカーが撃沈されたり航空機が落とされたら戦争に嫌でも突入決定だ。


    

「おかえりなさいませ」

「ノン、ソフィーはちゃんと勉強してるかい?」

「はい、既に足し算と引き算は完璧ですね。逆に歴史などは苦手のようです」


「ノア、お食事を用意してありますよ」

「そうだな、先に食べるか」


「パパ、おかえり」

「マキ、ただいま」


「今日は鯛づくしか」

「海軍が演習で釣ってきたのをトムさんの奥さんから頂いたの」

「海軍も防衛部隊は暇だな」


「ではいただきます」

       

「「「「「いただきます」」」」」


「このあら汁は美味しいね」

「煮付けも甘くて美味しいです」

             

「わたしはお肉の方がいいわね」

「肉より魚の方が体重が増えないぞ」


「多分だけど、きっと大丈夫よ」

 言葉がおかしくなっているな、心当たりがあるのか。



「父さん、母さん、話があるんだけどいいかな?」

「構わないぞ」



 面と向かってルーカスと話すのは初めてかも知れないな。


   

「父さん、昨日の放課後に先生に経済大学院の推薦入学を勧められたよ」

「経済大学院か……悪くはないな」


「昨年開校したばかりの二年生の大学院ですよね」

「そうだな、アレス王国に二校しかない一学年で五百名だけの

技術大学院より厳しいカリキュラムの超エリート校だ」


「先生の話だと倍率が五百倍だからかなり狭き門だって言ってたよ」

「経済大学院の入学は四月だぞ。それに全員寮生活だぞ」


「単位の取得は終わってるし大丈夫だよ。父さんと母さんも二年しか

学院に行ってないんでしょう。もう僕も大人だよ」

 

「確かにそうだ。学院に通ったのは実質一年といった所だな」

「母さん達は学院生時代に戦争に参加してたからよ」


「父さんが今のエクレールを統治したのはルーカスと同じ学院の

三年生の時だったが年齢は十二才だったがルーカスは今年で九才だぞ」


「父さんは九才の時にはクレア領を任されて十才の時には

昔のエクレールを領土にして伯爵になったんだよね」

     

「そうだったな」

     

「将来、王様になるなら試練を避けちゃいてはいけないと思うんだ

お願いだよ受験させてよ」

 勉強したいと言っているんだ。止める理由はないか。


「ノア、受験するだけなら良いんじゃないの?」

「推薦は一度しか受けられない。九月の通常の大学院の入学の時は

もう推薦は受けられない。実力で入学するしかないぞ」


「覚悟の上だよ」

  

 俺に似たのか、ルーカスも頑固だな。

 

「良いだろう、受験して見ろ。ダメだったら就職するつもりで受けろよ」

「ありがとう」


 ルーカスが経済大学院か、将来を見据えて決心したのか

教師に影響されて受験を決めたのかは解らないがいい結果に期待したい。         

      

「ノア、良かったの? 三月に卒業だから同期のお友達が

居なくなってしまいますよ」


「いずれは国王を継ぐ身だ。今は祝ってやろうじゃないか」


 

  

 小麦の価格が少しだけ上昇しているな。


「ノア様、うちの息子は経済大学院を受けさせる事にしました」

「なんだ、ヨハンの所も同じか」


「ルーカスも受けるんですか?」

「昨日、相談を受けたよ」

   

「そうでしたか、授業料免除とはいえ受験費用が金貨二枚で三日間の試験の

一発勝負ですから今年も五十万以上の学生が泣くことになるでしょうね」


「マリア母さんも増設するなら第一期の卒業生の就職内定率が

九割五分以上という条件を出して来たよ」


「内定の段階で九割五分以上ですか

技術大学院でも内定段階だと八割程度ですよ」

 

「噂では授業は七時限だが予習二時間に復習五時間が日課らしいじゃないか」


「今のアレスでは最短で国の上級職員になれる道ですからね」

「ヨハン、それで両親面談はどうするんだ?」

「足切りされなかった受験生の親が受けれる面接ですね。そこまで行ったら

勿論行きますよ。両親面談での加算ポイントは最大で百点ですよ」


「親がミスをすれば減点対象にもなるらしいけどな」

 

「親のいない子供は親族に親代わりとして出席してもらう事も可能ですが

両親に特別の事情がなければ代理は認められませんからね」    

 

「大丈夫なのか? 俺とヨハンが同日に抜けて?」

「デニスとニコとフレッドにヒルダの所も受けるようですから

当日はトムとサキに司令部に詰めていてもらいましょう」


 

  

 そして、遂に三月三日からの三日間の試験を受け終わり日付は変わり

三月十日の午後。


「父さん、母さん、一次試験の点数が千三百点を超えていたよ」

「ルーカス、何点満点なの?」

「千五百点満点だよ」

       

「明後日は面接か?」

「明日の個人面接で落ちる可能性もあるよ」


「ルーカスの個人面接の手応えが良ければ私達が行かない方が

良いんじゃないかしら」

     

「今の段階で百五十五位だから個人面接だけ上手く言っても

加算されるのは最高で三十点。百位以内に入るかも微妙だよ

両親面談の最高点は百点だからお願いだから受けてよ」

    

「足切りされなかった人数は載っているのか?」

「第一経済大学院だけで千二百人二十人いるよ」


「つまり千三百点から千五百点の間にそれだけいるのね?」

 

「そうなんだ、だから千三百点ギリギリの受験生でも

二つの面接で最高点を採れば千四百三十点になるんだよ」


 つまり明日の個人面接の終了段階で入学確定者が相当数出るという事か。

       

「明日で決まる事を祈ってるよ」

「出来れば明日には合格証書を貰いたいよ」

         


 翌日の夜はまるでお通夜のような状態だ。


「父さん、母さん、先立つ不孝をお許し下さい」

「受験に失敗した程度で落ち込むなよ」


「目の前で女子生徒が殴られるのを見たらつい熱くなっちゃって

試験管を殴っちゃったよ」


「まあ、大学院の入学試験は九月よ。ゆっくり準備するのね」


      

なんだ雨か、ルーカスって呪われているのか?


「ノア、緊張してきちゃった」

「落ちるのはほぼ確定だろう。来年以降の練習だと思えばいいさ」


「ルーカス・アレスさんの親御さんは中へどうぞ」


「失礼致します」

「失礼致します。ルーカスの両親でございます」


「席におかけになって下さい」

     

 親だけの面接で面接官が三人もいるのかよ。


「ルーカス君の現時点での点数は千四百点以上です

既に昨日の段階で千五百点を超えた合格者は二十二名出ており、合格可能

点数は千五百点以上と想定しております」


「それでは私から質問させて頂きますわ

お母さん、ルーカス君の好きな食べ物を三点挙げて下さい」

         

「赤マグロのお寿司とウナギの蒲焼きと牡蠣フライです」

「お父さん、ルーカス君を将来は何の職業に就かせたいと思っていますか」


「残念ですが優秀ならば国王以外の選択肢はありません」


「昨日、ルーカス君は試験管に暴力を振るいましたが、どう思われますか?」

「残念な結果ですが、相手に非がありそれを正すための行いならば

私達は恥とは思いません」

      

それから三十分程度のやり取りがあったが、三回ほど試験官を殴り

飛ばしたくなる場面があったが結果は明日連絡をくれるという事になった。



「母さん、どうだった?」

「今日の段階で千四百点以上だったって言ってたわよ」

「既に昨日の段階で二十二名合格者が出ているそうだ」


「母さんの感じだと三十点くらいかしら」

「周りの親御さんがダメダメなのを祈るんだな」


      

さて補欠では入れれば御の字だが

五百倍の競争率で辞退者が出るとも思えないが。


「ヨハン、どうだった?」

「ミーアがもう少しで試験官を殴る所でした」

    

「うちも怒り心頭という感じでしたね。機会が合ったら税金を搾り取って

やりたい気分ですよ」


「経済大学院は今年度の卒業生の就職率が七割を切ったら廃止にしましょう」

「ヒルダが政策に感情を持ち込むとは珍しいな」


「面接官がお母さんのコネで財務省に入れるつもりですか

なんていう馬鹿な事を言うんですよ。ユリアンも激怒してました」

「ほんとですよ、農務の仕事を一ヶ月ほどやらせてやりたいですね」


 

 受験させたパパさんママさんはみんな激怒しているのか。


      

「父さん、合格通知が来たよ。これで来月からは寮生活だよ」

「良かったな」


 どこの親も激怒してダメダメだったのか?


お読み頂きありがとうございます。


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