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第百一話:エクレールタワー


 ついに二十四才、アレスで建国して十年が経った。


 何故か落ち着かない気分だ。神様との約束だと

二十六歳までに決着をつけなければいけないようだが。一体何と決着を

つければいいんだ?  



「ノア、どうしたんですか?」

「今日は新年だよな?」

「当たり前じゃないですか」


 なんだ、この変な気持ちは。

二週間後のマキの目覚めの儀でまた転移させる気なのか

クラウスの時がそうだったな。


「おい、神様聞こえてるんだろう?」

 


『将来への布石の一つなんだよ。十五才の時に元の世界に戻してあげたから

十年後にもう一度、何かしてあげようかと思ってね』


「何かってなんだ?」

  

『今は言えない。君が生きることに絶望を感じたときに少しの間だけ

旅行をさせてあげよう。その時までは忘れていていいよ』

     

「おい、待ってくれ……」


「ノア、大きな声をだして、どうしたんですか?」

「いや、なんでもない」

  

 あれ、誰かと話していたんだけどな。

 誰だった?   



 今日はマキの目覚めの儀の日だ。クラウスの時に神様と出会ったから

少々落ち着かない気持ちだ。


  

「次、マキ・アレス」


  

「女神ヘカテーよ、この者の道を示し給え。血の道を示せ」


     

――――――――――

    

 名前:マキ・アレス

 年齢:三才

 種族性別:人族:女

 所属:アレス王国

 賞罰:無し


 加護:ヘカテーの加護(伝説級)


――――――――――


 うちは伝説級が普通らしいな。

 今回は呼び出しは無かったようだ。少し安心した。


「パパ、どうだった?」

「さすがパパの娘だ」

  

「そうでもあるかな」

「マキ、いい結果で良かったわ」

「ママは心配屋さんです」


 マキはほとんど満三才でクラウスと一緒に勉強をしているので簡単な

会話なら既にマスターしている。


「今日はみんないるしお寿司でも食べに行くか?」

      

「「「「「賛成」」」」」

「ケイトもお刺身だけなら食べられるわね」


 来年は無しで再来年がケイトの儀式だな。


 

 さすが完全予約制だけはある、並んでいないな。

   

「大将、握りをお任せで頼むよ。シャリは少なめでね」

「ノアの旦那は今日は家族連れですか?」


「四人目の娘の目覚めの儀だったんだよ」


「今日はぶりとハマチのいいのが入ってるんですよ」

「それは楽しみだね」


「ミランダ、お嬢ちゃんたちの寿司はお前が握って差し上げろ」

「父さん、いいんですか?」

「シャリ少なめでわさび抜きだ。これをお前の卒業試験にする」

「頑張ります」


「ハマチをお待ち」

「リリーナ、幸せです」

「俺は食べないが海老を注文してもいいぞ」


「僕はタコを下さい」

「わたしはズワイガニがいいわ」

「わたしは甘エビがいいかも」

       

 お任せになってないが構わないか。


「ここにはアヒル族の人間も来るのか?」

「残念だがシャリが足らないんでお断りしてる状態だな」


「そうですよ。食堂と違って全てをシャリには使えませんから」

「電気炊飯器が使えれば便利なんだがな」


「父さん、電気炊飯器なんて邪道ですよ」

             

「僕は次は中トロでお願いします」

「わたしはね、大トロ」

「えっとね、えっとね、わたしはネギトロ巻き!」


「「甘エビ」」

「わたしは茶碗蒸し」

     

 ルーカスは女性に対してもお願いしますと言えるとは偉いな。双子の

息はピッタリだが本能優先だな。


「マキ、もうデザートなの?」

「茶碗蒸しは正義だってテレビでやってたもん」


 正義ね、いったいどんな番組をやっているんだか。


「ミランダ、巻き物を強く巻きすぎだ」

「父さん、すいません」


       

「食べたわね」

「びっくり鉄火を二杯も食べてしまったよ」

  

「ヤン達の大食いが移ったのかも知れませんね」

「そうかも知れないな」


  

 寿司屋訪問の後は帰宅して、ぐっすりと睡眠だ。


 

そして今日は完成した庁舎の落成式だ。


「王城とは全くの別物ですね」

 

「地上四百九十メートルの九十五階建てのビルと八十階建てのビルですか?」

「九十五階建ての方は地上四百九十メートルってあり得ない高さね」

「八十階建ての方も十五階も低いのに四百六十メートルもありますよ」

   

「十二階までの広さが決定的に違うみたいね」

 

「それに比べて我らの家は六十階建ての二百九十メートルですか」

 

「コンラート、大型のコンドミニアムタイプが百二十以上に一般タイプが

五百室以上のジュノー大陸屈指の最高の居住空間です

高さこそ負けますが横幅はこちらの方が遙かに上です」

 

「ノア様、既に本館と別館には荷物が

四割程度を運び終わっています。居住棟の方はこれからですね」


「今までの建物はどうするんだ?」

「陸軍の警備隊が使うそうです」


「なんで九十五階建てまで作れたのに百階建てにしなかったんでしょうね?」

「空港に近いから五百メートルを上限にしたらしいな」


 ヒルダもよくこんな巨大な建物を作る許可を出したもんだ。

       


「本館と別館は二十階置きに半重力装置を使用した連絡通路で繋がっています

総工費はこの二棟だけで海金貨六万枚かかりましたが自慢出来る出来映えです」


「ヒルダ、太っ腹だね」

「やれば出来るじゃない」

「部屋割りで揉めそうですね」

「最上階は全て展望デッキなんでしょう?」


 

「そうですね、早速見てみましょうか」

「しかし、基礎が出来ていたとはいえ半年で作り上げるとかあり得ないわね」


「作業員二万五千名に魔法師五千人を加えた一大プロジェクトですよ 

我が国の威信を賭けたんです。工期は早くても中身は超一流です」


 魔法で重さ十トンの鉄骨でも持ち上げられるからな

問題は耐震強度だよな。



「一階部分は広いですが、別館の方は高さが二倍あります。十三省と三軍の

幹部職員が全てこの二つのビルで働くことになります

エレベータは全部で八十五基で非常用に十基で展望エレベータが五基です

三十階と六十階が乗り継ぎフロアーとなっていて効率よく人を運びます」


「このエレベーターは三十階への直行便よ」


  

「ここが最上階の九十五階です」

「ロック山がよく見えるわね」

「綺麗な眺めね。港に入ってくる船もよく見えるわ」

「綺麗ですね」


「これは内密ですが実はこの上にアレス通信のフロアーがあって

航空管制や各種通信の中継基地になっています」


「それじゃ九十六階建てなのね」

「いえ、九十四階が存在しないので九十五階建てですよ」


「なんで、九十四とか縁起は悪くないわよね」

「ノア様のオフィスが九十一階で九十二階と九十三階が情報局の施設で

九十四階部分は貯水タンクになっているんです」


「そうなんだ」

「ヤン達が最上階に近いっていうのが癪ね」

          

「六十一階が防災センターで六十二階がコンピュータールームです

六十一階より上は専属スタッフしかエレベーターを使えません

それに配線設備は一般用二系統と緊急用一系統の三系統からなる安心設計です」


「それで肝心の部屋割りは?」

「この場合はフロアー割りかな」


「六十三階から八十九階の間にワンフロアーずつは各省に譲りますが

それ以外は取り合いですね」


「そうなると会議室は九十階なのか?」

「そうなります」


「コリーン、食堂は何階なんだ?」

「三階と三十階と六十階ですよ」

「二階は?」

「陸軍の施設になります」

 これは昼休みの食堂は戦争になりそうだな。


「何階がいいか迷うな」

「どこも捨てがたいわね」

「隣の別館も魅力的よね」

     

               

 色々と意見は尽きなかったが見学会は終了して移転は二月一日と決まった。


「兄貴、俺は九十二階に部屋を持ちますよ」

「好きにしてくれ。情報局は二フロアーだから場所を優遇されたんだろう」


 さて、ここも使い納めか。



「若様、大変です。戦争が始まりました」

「まさか、オーガスかサンが攻めてきたのか?」

    

「いえ、ノルトで戦争です。正確には内乱でしょうか」

「コンラート、驚かせるなよ」

「ほんとですね」

「空軍はせっかちなのよ」


「まあ、オーガスは大丈夫でしょう」

「ニコ、旅行から帰ってきたんだな。日焼けしてるじゃないか」

「オーガス王国へも行ったのか?」

「はい、海軍の巡洋艦に旧式の爆撃機が積んであるという報告があったので

イースター経由で見て参りました」


「家族旅行なのに随分と仕事熱心だな」

     

         

「それで連絡ですが、ハインツ様はオーガスで死亡しておりました

暗殺とかではありません。セシリー陛下を守って死亡したらしく

オーガス王国では銅像が三つも建っており英雄扱いでした」


 

「お爺さまは異国で死んだのか……」

「あのアレシアから生きて脱出したのに残念ですね」

            

「名誉の戦死ならお爺さまも本望だろう」

 

 爺ちゃんが死ぬ未来までは変わらなかったか。


「それでノルトですが、どうしますか?」

「あそこには航空機が存在しない。油田とタンカーに手を出す

素振りが無ければ好きなだけやらせてやろう」


「下手に仲裁に入ると恨まれますからね」

「気の済むまでやれば気分も落ち着くでしょう」

 

「今年は周辺で戦争がないと思っていたのに残念です」


 王や皇帝の命令じゃないんだ。一ヶ月も争えば落ち着くだろう。


 

          

 一月二十日にフレッドが帰国を早めて帰ってきた。

 予定よりだいぶ早い帰還で不機嫌なご様子だが何かあったんだろうか?


「フレッド、嫁さんと喧嘩でもしたのか?」

「一月末まで旅行じゃなかったのか?」

 

 

「うちの嫁も獣人なんですが酷い差別を受けましたよ

高級店には出入り禁止でホテルでも料金も倍取られるんですよ」


「そりゃ酷いな」

「獣人差別をする上級貴族がいると聞いていましたが嘘だと思ってましたよ」


「アデルも差別廃止を訴えているが貴族というのは厄介だな」

「我が国では獣人差別の人間は思想犯として徹底的に取り締まりますよ」

 

 だんだん国税じゃなくて警察みたくなってきたな。


「うちは七割以上が親族に獣人がいるらしいからな。差別なんてあり得ないな」

「そうだな、うちも妹のアリスの旦那が獣人だしな」

  

「わたしがいない間に変わった事はありましたか?」

「北のノルトで内戦がはじまったくらいだな」

 

「ほんとにオバカさんは困るわね」

「ミーア、来てたのか?」

              

「うちも家族旅行に行く予定なんだけどミカエルはダメみたいね」

「ニコの話だとオーガス王国でも中部から南部は獣人差別が激しいらしいぞ」

  

「嫌な光景は見たくないとなると暖かいトレミー南部かしら」

「そうだな、ロアン地方は住民同士で多少揉めているだけだしね」

  

「いっその事ツヴァイへ行ってオーロラでも見てこいよ」

「ミーアの所は獣人じゃないんだから他国でも平気だろう」


「ヨハンがアインス工業地帯も視察したいって言ってたからツヴァイにするわ」

「いつ行くんだ?」

    

「出産が来月だから三月になるわね。ヨハンは忙しいから二週間の日程よ」

「コンラートもマイちゃんと旅行に行ってこいよ」

 

「今はお隣が内戦中ですからキツいですね」

「俺の所も内戦が終わったらですね」

 

 

 情報局と空軍の指令官としては旅行に出かけられないか。

 

 うちもルーカスが学生の間に家族旅行に出かけるか。



お読み頂きありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] いつも、楽しく読ませていただいています。 今さらですが、誰が話しているのか、話している時の仕草などを、書いていただくと、読みやすくなるのですが。 それと、それぞれの国の位置関係がわから…
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