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第九十九話:九型の名前はホークとファルコン


 季節は十月を迎え、秋といった感じになってきた

ガイア大陸では一連の収穫作業が終わり一足先に冬支度だ。


「麦の種まきや米の収穫に大豆の収穫と色々ありすぎです」


「ニコ、頑張れ、あと一ヶ月の辛抱だ」

「ガイア大陸を手に入れたのは失敗だったと痛感しております」


「今年は多いところでも三割しか植えてないぞ」

「だから来年が怖いんですよ」


「ニコ、頑張れよ」

「そうよ、男でしょう」

「こういうときだけ男って言うのを辞めてくれるかな」


「ニコ、十一月になったら嫁さんと一月くらいかけて旅行に行くか?」

「ミカエルは暖かそうですね」

            

「甘い物を食べてリフレッシュしてくるのも良いかもね」

「そうよ、ナディアさんとの新婚旅行も三日間だけだったでしょう」

  

「そう言われるとそうですね」

「今は農務省長官様だ。シリウス商会のクレア支店長から出世したよな」

  

「照れますね。そうだ仕事してきますね」


 おだてると弱い所は昔から変わらんな。


 

「ニコを褒めるのって面倒だわ」

「商才はあるんだけどな」

   

「兄貴、シリウスグループに居た方が高給取りだったんじゃないですか?」

 

「シリウスグループの幹部は少ないポストを取り合ってるんだぞ、

『一分に命を賭けろ』が決め台詞だ。しかし農務長官なら将来も安心だ」

 


「そういえば、ナディアさんは狼族よね。こっちの人かもね」

 

「詳しい話は聞いた事がないんだよな。二才年上だとしか知らないな」

「ニコの補佐官をしているんですよね。やり手なのは確かでしょうね」


ニコも結婚して七年か。ヨハンの次に付き合いが長いんだよな。

 出会いだけならリキの方が長いか。


 

「みんな、ここにいましたか? ダンが呼んでますよ」

  

「遂に九型か!」

「お楽しみですね」

「今度は時速二千五百キロくらい出るのかしら?」

        

 

 ダンの工房も八型以来だな。


「ダン、九型が出来たんだって?」

「そんなもんは出来とらんわい」


「これって見た目は三型を小さくした感じね」

「エンジンが単発式だな」


「ダン、もしかして偵察機なのか?」

      

「いや、九型は出来なかった。これは七型と八型を足して二で

割ったような機体だな」


「それって出来損ないって事?」

「遂に予算が底をついたか?」

「空軍としては一人乗りでも問題はありませんが遅い機体はご免ですよ」

     

「これはファルコン型で、ヘリの影に隠れているのがホーク型だ」

「隼と鷹の名前をつけのね」

  

「そうじゃ、隼は海軍機でファルコンで鷹は空軍機でホークだ」

「なんで型番がないんだ?」

「来年作るのをゼロ型に再来年の機体を一型にする予定だからだ」

   


「ホーク型は双発エンジンなんだな」

「結局、エンジンは二種類作ることになったのね」

「でも八型に比べてもエンジンは小さいわね」


「ダン、もしかして、このエンジンって同じじゃないのか?」

「坊っちゃんはさすがだな。そうじゃエンジンは同一モデルだ

調整具合に差があるが熟練の整備士の腕でカバー出来る範囲だな」


「性能は?」


 

「海軍機が魔道小型単発ターボフェンエンジンでの速度は最大で

時速千八百キロで最大上昇高度が一万九千メートルに航続距離が

四千キロで五発のミサイルを積むか増設タンク二個を積むかは自由だ

それに安定の三十ミリ機関砲一門装備だ」        



「そして空軍機だが、魔道小型双発ターボフェンエンジンでの速度は最大で

時速千九百キロで最大上昇高度が一万九千メートルに航続距離が

三千キロで七発のミサイルを積むか増設タンク三個を積むかは自由だ

それに安定の三十ミリ機関砲をなんと二門装備だ」


 

 微妙だ、微妙過ぎる出来映えだ。


「ダン、空軍機は七型より高度が二千メートル上がっているの認めるが八型より

二百キロも遅くなってるし、航続距離が千キロ以上落ちてるな」


「海軍機は速度も兵装も落ちているわね。それに航続距離が

八型より五百キロも落ちているわよ」


「結局は七型の改良版か」

「ダメダメって程じゃないけどね」

  

     

「このシンプルなボディを見ろ、七型よりもコンパクトで高性能を

維持しているんだ。量産機としては異例の性能だぞ」


「これをアレス型空母なら何機積めるんだ?」

「二百八十機は積めるぞ。ノア型でも百四十積めるな」

 

「ダンさん、その自信が量産型という点にあるなら増産は容易なんですよね?」

「おお、八型の四倍の速度で製造が可能だ。コストも半分以下だ

空軍機のホークは巡航速度は千六百キロで飛べるぞ」


「これって海軍から文句が来ないかな?」

「ファルコンは異様な程に小回りが利くぞ。一度乗れば海の男なら

一発で惚れ込むのは間違いない」


 高度と速度もオーガスの機体に遜色はない

むしろ新型機が出ていなければ確実に上だろう。

 今年の初めにヨハンがオーガスの新鋭機は速度が千五百キロ程度だと

言っていたが、かなり大きいらしいからな。

          

「オーガスの新鋭機がこれを上回るまではこれで行こう」

「オーガスの新型は時速千五百キロから千六百キロの間だったな

四年は負けないだろう」


  

 四年持てば十分だな、その頃は俺も二十七才か。

 そういえば神様が二十六歳になる前に決着をつけろと言っていたな

あれには何の意味があるんだろう?

  


「それじゃ、ファルコンとホークの名前で公表してくれ

ファルコンには乗って貰えば理解出来ると飛行士に伝えてくれ」

   

「わかったぜ」


 

 さて帰るとするか。

 

「兄貴、なんで来年がゼロ型なんですかね?」

「私の予想だが来年はアレス十型だろう。ファルコンもホークもゼロ型だ

そして再来年はアレス十一型で量産機は一型だ」


「機体の型番を十ずらしたんですか?」

「きっと開発機体の型番を覚えるのが面倒になったんじゃないかな」

「戦闘機以外にも色々作っているようですからね」



 そろそろ本国の北部の米の収穫も終わるか。


「ノア様、ガイア大陸は農耕機械を入れられなかった影響が出て

米の収穫高はライナ地方で二千万トンでそれ以外は合わせても四百万トンにも

届かない結果になりました」

    

「それは仕方ないだろう。三月まで戦争していたんだ」

       

「そうですね、それに引き換えミランは七百万に伸びて

本国に至っては一億八千万トンまで来ました」


 米だけでも一人三百キロか。

 米は安泰だが小麦が半分程度と少ないな。


「ヒルダ、輸出穀物は米にシフトするように伝えてくれ

この秋に収穫した小麦は一時倉庫に溜め込んで大手商会が値をつり上げたら

一気に放出する事にしよう」


「いい案です。それでは一ひねり加えて小麦四千万トンを

オーガス王国へ臨時で送った事にしましょう

がめつい商会なら小麦を高値で売るためにすぐにでも溜め込むでしょう」     


 

 ヒルダは凄い事を考えるな、農民は五割を物納で残りの一割を金で納めるから

高値になれば一気に税金分の金が手に入るし大歓迎だろう。


「ところで新領土での米の収穫高はどの程度だった?」

「非常に残念ですが五万トンにも満たないかと」


「米の畑は結構あったと思ったが」

「推定ですが北部を中心に六百万トン程度を収穫したのを陸軍でも

情報を掴んでおります。全て取られると思い隠している模様です」


 

「仕方ない、税を払う意思のない者を国民としは扱えない

税を払う意思のない者達は給金を三割に落として国の復興事業に従事させろ」

        

「わかりました、仮の灰色の国民証を与えて精々働いて貰いましょう」

 

黒とも白とも判別がつかないから灰色か。

 貧しくて税を払えないならば親愛の気持ちも湧くが姑息な者達は

労働力としてこき使ってやらないと示しがつかない。



 

 ニコは宣言通り大豆の収穫がヤマ場を超えた所でナディアさんと

子供達を連れて旅行に出かけてしまった。


「仕事が多すぎませんか?」

「これでも半分以上はユリアンがやってくれているんだぞ」


「俺が農務長官なんかになっていたら半年で辞めてましたね」

「しかし、ニコは二ヶ月もオーガス王国へ旅行とは

家族サービスが過ぎませんかね?」

       

「まあいいじゃないか、オーガス王国で戦争しているのは南部だけ

それも南西部だけだ」

「さすが東の大国と言われるだけはあるわね。中部より北は

戦争していないなんて」


「うちらに置き換えるとガイア大陸のアデルの所だけが戦争している状態か」

「さすが南北合わせて一万八千キロの国土に

八千万以上の兵士を抱えるだけありますね」

 

  

「私達が戦争を仕掛けても制圧するのは無理のようね」

「精々がフレア弾を投下して終わりだろうな」


「そのオーガスと対等にやり合うサン王国も凄いけどな」

 

「サン王国の艦対空ミサイルはアレスの六式ミサイル以上なんだって」

「それじゃ高度一万メートル以下を飛ぶ航空機はレーダーとにらめっこだな」

  

「海軍のサン王国に空軍のオーガス王国ですか

出来ればどちらとも戦いたくありませんね」


「その通りね」

「同感ですよ」


「みんな手が止まっているわよ」


    

 夏はこれの数倍の仕事をこなして

ニコはよく倒れないな、俺だったら仕事を放棄して次官に丸投げするだろうな。

次官が奥さんじゃそれも無理な話か? 



 

 ルーカスも来年の夏には学院を卒業か。その後はどうするんだろうな?


「ノア様、ノルト大陸から使節団がおいでになりました」

「ヨハンにしては随分と丁寧にもてなしているそうじゃないか?」


「はい、相手は一月前までは我が国の存在すら知らなかった

北の果てに住む北方民族ですので」

           

 南北の長さが三千七百キロだったな。

 前の世界線ではルーカスが生まれたときには発見していたが

新たなこの世界では俺が二十二才の時に初接触だから知らなくても無理はない。

  


「とにかく会ってみよう」


 さて、どんな人間かな? 頭の堅い人間だと面倒なんだけどな。

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