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第2話

 


「抱き合わせ商法か……」



 ―――こらおっさん。



 ……このオヤジ、ここまでフォローしてやった恩を忘れやがって!



「さあ、お答え下さい会長さん。 美少女モデル(わたし)が欲しいならゲームオタク(コレ)もセットです」


「ぐぬぬぬ……!」



 ―――なんかムカついてきたな。



「これは……あれだね? 二人一緒(ニコイチ)で面接に来てどうしても片方欲しいから仕方なく残念な連れも採用するキャバクラみたいなものか」


「おっさんいい加減しばくぞ」


「そうなりますね」

「お前もしばくぞ」



 コイツら、調子に乗りやがって……!



「……よーっしわかった! セットで撮影しよう!」



 立ち上がるおっさん。



「商談成立ですね」


「うんうん、スイカもほら、塩かけた方が甘く感じるしねっ!」



 ―――俺は塩か。



「……おい、おっさん」


「うん、そういう事だから君もよろしくねっ!」



 晴れ晴れとした顔をして話すおっさん。 俺はその顔に近づき、睨みつけて言い放った。



「――やらねぇよ……」


「……は?」

「は? じゃねぇ、やらねぇよ。 やるわけねーだろ」


「う、うそだろ? まさかのオマケからのNG? これがホントの “塩対応” ?!」

「上手いこと言ってんじゃねぇ! ぜってーやらねぇ!」


「そ、そんなバカな……」



 ここまでコケにされてやるわけねぇだろ?

 何の得も無いし、めんどくせーのはごめんだ。



「篤人くんがやらないなら、私もやらない。 行きましょう」


「残念だったなおっさん、このまま救世主(ケンシロウ)の来ない村のように廃れていけよ」



 また膝をつくオヤジ。 諦めろ、時代の流れってやつだ。



「……ぅぅ、うちのおもちゃ屋もここまでか……」




 ――― “おもちゃ屋” ?




「……確認だが、そのおもちゃ屋はゲーム機、ソフト等は置いてるのかね?」


「そりゃ、あるけど……」




 やっぱり、このまま見捨てるなんて僕には出来ないやっ。




「会長さん」


「な、なんだい急に? さっきまでおっさんて……」

「人々が触れ合い、優しさが溢れる商店街。 僕、無くしたくない」


「そ、それじゃ……!」


「……篤人くん?」



 バカだな、なにを二人共そんなに驚いているんだい?



「明日香ちゃん」

「明日香()()()?」



 僕は、明日香ちゃんの両肩に手を置いた。



「あっ……」



 頬を染める明日香ちゃん。 なんだ、表情が無いなんて気のせいだったねっ!



「僕達なら出来る。 この商店街を、救おう」


「………篤人くん」


「ほ、本当かいっ?!」



 やれやれ。 会長さん、ゲーマー()として当然の事ですよ。



「やろう、明日香ちゃん!」


「私は……篤人くんがやるなら……」


「ありがとう! 君は素晴らしい少年だっ!」



 やだなぁ、照れるやっ。

 僕は、歩み寄ってきた会長さんに向き直り、



「協力させて下さい、会長さん」

「ああ、ああっ……!」


「会長さんのお店の商品全て50パーオフにしてくれるならねっ」




「―――は?」




 やだな、タダでやる訳ないじゃないかぁ。



「ご、50っパー?」

「はい、永久にっ」


「そ、そりゃ君いくらなんでも……」

「じゃなきゃやらねぇ……」

「――ひぃぃっ!?」



 おいおい、そんな怯えんなよ、まるで俺が悪人みてぇじゃねぇか。



「かぁいちょおぉぉ、何も同じやつ何個も買って転売なんかしねぇって。 俺も鬼じゃねぇ、あくまで一商品一点限りだ。 潰そうとしてんじゃねぇんだ、救おうとしてんだぜぇ?」


「き、君は本当に学生さんか?!」


「心外だなぁ、正真正銘ピカピカの一年生だって」

「そりゃ小学生に言うんだよっ?!」



 ランドセル背負ってなきゃ言えねぇなんてだーれが決めたんだよぉ。 俺の心のランドセルにゃ今夢いっぱいだぜ?



「せ、せめて20パーなら……」

「んな薄い条件(果汁)じゃ飲めねーんだよ40パー」


「さ、30パー! これが限界だって!」

「39パー」

「1%の優しさしかないのかいっ?!」



 優しさは無果汁なんだよぉ。


 まぁ、しかしこれじゃラチがあかねーわな。



「35パーだ、これ以下なら話は白紙に戻す。 よーく考えて天秤にかけるんだな、会長さんよ」


「くっ……! わ、わかった……それで手を打とう」


「よぉしいいコだ、きっとこの道にまた人が溢れるだろうよ」



 正直そんなポスターぐらいで変わるとは思えねぇけどな、そこは俺には関係ないし。


 会長との交渉が終わり、傍観していた明日香が呆れた顔で口を開く。



「もぉ篤人くんたら、人が良いんだから」

「君もちょっとおかしいよ!? 君らグルなのっ?!」



 私なら38%は取ってたって顔だな、流石明日香だ、敵わねぇな。



「んー……じゃあ、私には?」


「ええっ?! き、君たちゃどこまで要求してくるんだ?!」



 明日香、程々にな。 会長がガリガリになっちまう。



「だって、私が本来メインなんでしょ?」


「そ、そりゃそうだが……。 あんまり無茶は言わないでおくれよ?」



 冷や汗をかいて、怯えた口調で話す会長。 可哀想。



「そうね、じゃあ温泉旅行に行きたい。 泊まりで」


「温泉旅行……まぁ、それくらいなら」



 ほぉ、俺に言ってた割に甘い条件じゃねぇか。

 冷血女だと思っていたが、明日香も人の子か。



「よし、それじゃ決まった、二人共頼むよ!」


「「はーい」」



 それから、会長に撮影の内容等を説明され、俺達は商店街を後にした。


 大分時間を食っちまったが、それなりの成果はあったな。 新作ゲームも本体も35%オフは余りに魅力だぜ。



「楽しみね、篤人くん」


「そーか? 撮影なんてめんどくせーだろ。 報酬が報酬だからやるだけだって」



 なんだ明日香の奴、やっぱり女はモデルっつーのに憧れるんかね?



「撮影? 何言ってるの?」


「あ? 違うのか?」


「楽しみなのは、()()の温泉旅行」





 ――――はい?





「……か、家族で……行くんじゃねーのか?」


「そうね、将来は家族かしら」




 冗談じゃ……なさそう………だな……。



 ……これ、夢かしら…………。




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